【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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 倫音さんの怒りの波が少しずつ引いていっているようなので、受け答えは間違っていなかったらしい。
「何で、そういうの言わないの?」
「……ストーカーみたいで、気持ち悪いでしょ」
 そう、本当にやっていることはストーカーと変わらない。違うのは、危害を加える気がないということくらいだ。人に言えたものじゃない。
「初めて会った時に言われたら即行で縁切ってたけど」
「でしょ」
「でも今は違うじゃん!信頼関係ができてるのに、何も言わない方が変じゃん!」
 また怒り出した…というよりは、感情が爆発しているという方が近いかもしれない。気持ちが表情に出やすいのだ。
 少し涙目になって頬が上気し、身を乗り出して訴えている。
「私のこと、好きじゃないの?」
 好きだよ。
「友達のライン、超えてると思わない?」
 初めから、超えてるのは分かってた。
「今から星野のところに行こうかな」
「絶対にダメ!」
 思わず声に出てしまうと、倫音さんが勝ち誇ったように笑った。
「日晴くんさ、それを言っても良いのって、彼氏だけだって知ってる?」
 ただの男友達なら、アドバイス程度にしか言えないだろう。決めるのは本人だから。
 でも、そこを超えて懇願してでも止めていい権利は、パートナーだけだ。
「……倫音さんが、どうしても行きたいなら…」
「違うでしょ!そこは、彼氏になるところでしょ?!」
 そこに踏み込む自信が、俺にはない。
「何が不満なの?!」
「…倫音さんが悪いんじゃなくて、俺が人として成長できてないっていうか…倫音さんを幸せにできるかどうか」
 ああ、言ってしまった。これだから年下で余裕がないと思われる。
 倫音さんが大きなため息をついて、肩を落とした。
「あのさー…日晴くんも私も、まだ未成年じゃん。そこで人間性できてたら、世の中の犯罪なくなってるから。私が嫌な目にあって来た奴ら、ほぼ成人男性だからね?」
 俺の手を両手で包み、ギュッと握る。
「二人で成長すれば良くない?あと、私が幸せになるかどうかは私の問題だから、日晴くんが決めないで」
 正論だった。
「はい…すみませんでした」
「で、どうするの?私のこと好きなんでしょ?星野のところに行かせたくないんでしょ?」
 不遜に笑って俺を見下ろす。
「……彼氏にしてください」
「じゃあ、今ここでキスして」
「えっ」
 何を言うんだこの人は。
「アメリカは路上でブチュブチュしてるんでしょ」
「俺、日本人だしここ日本だよ」
「誰もいないからいいじゃん!今!して!」
 今は絶対に失敗できないから、周りに誰もいないことを確認し、彼女を抱きしめてキスをした。

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