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「ありがとうございます、美味しいです」
 にこやかに対応する日晴くんは、父親より大人に見える。
「なかちゃん!美味しいって!」
「良かったねー!」
 いちゃいちゃ夫婦は放置して、私はヨーグルトを食べることにした。
「日晴くん、ごめん。止められなかった」
「いや全然、まさかこんなに歓迎されると思ってなかったから、嬉しかったよ」
 ニコニコと微笑みながら対応する日晴くんは、基本的に人としてちゃんとしてるんだよな。
「そういえば、元要くんは?」
「昨日からロケに行ってるらしくって、今日の夜に帰ってくるみたいだよ」
「忙しいね」
「よくやるよね、うちの男家族は」
 日晴くんは話しながらも、パクパクと玉子焼きやお味噌汁、魚などを食べている。和定食が好きなようだ。
「日晴くんも、舞台俳優とか向いてそうだけどね!」
「パパやめて、引き込まないで」
「僕なんて全然、人前で注目を浴びるのは得意じゃないですし」
「そう?でも演技は上手そうだけどな」
 何を根拠に…
「喜一さんの舞台、拝見したことあるんですけど。喜一さんじゃなくて、そこに今生きている人がいるようにしか見えなくて、驚きました」 
 日晴くん、見たことあるんだ。私は子どもの頃以来、スカウトしてくる人が面倒で見に行ってない。
「えー?!本当?!嬉しいな!!」
 歳の割にキャピキャピとはしゃぐ父親の対応は、正直面倒くさい。
「もういいよ、日晴くん!着くの遅くなるから行こ!」
「あ、うん。美味しい朝食にお招きいただき、ありがとうございました」
「また食べに来てねー!」
「気をつけていってらっしゃい!」
 日晴くんを引っ張って家を出ると、車に乗り込んだ。
「車を出していただき、ありがとうございます」
「いいえー、じゃあ発車しまーす」
「よろしくお願いしまーす」
 持参したリュックには、灯里に言われた通り一泊分の荷物が入ってる。だからちょっと大きいけど、テーマパークに行くわけだし問題ない。
 
「わー…小学校に上がる前にもう一つの方に来たことあるだけだから、こっちは初めて」
 日晴くんが入り口のモニュメントを見上げている。
「そっか、そうだよね。子どもだと遊園地っぽい方が楽しいしねえ」
 こちらは遊園地というよりも大人向けのデザインで、歩いているだけでも楽しめるテーマパークだ。
「私はこっちの方が好き」
「行こうか」
 さりげなく手を引かれて、それだけで顔がにやける。
 そう、こういうことだよ!こういうこと!これが恋人同士でしょ?!
「どこに行きたいの?」
「パパのせいでお腹が空かないから、とりあえず散歩」
「散歩でいいの?アトラクションは?」
「日晴くんが乗りたいなら乗る」
 不思議そうな顔で頷き、お店を指さした。
「買い物しよう」
 確かに、早い時間の方が混んでないし選びやすい。

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