暴君は時には下僕に成り下がる

ruki

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みかんの中でもこのみかんが好きでよく食べた。下手したら食事代わりに食べてたこともある。特に今週はあまり食欲がなくてずっとみかんばかり食べてた。

オレはもぐもぐと咀嚼するとごくりと飲んだ。するとまたひと房差し出される。それをまたぱくんと食べるともぐもぐごくん。そしてまたひと房・・・。まるで雛鳥のさし餌のようにみかんが差し出される。そして最後のひと房・・・。

「和真さんも食べませんか?おいしいですよ」

そう言ってオレは和真さんの指ごとぱくんと食べた。みかんはとりあえず左の頬に押しやり、咥えた指をゆっくり舐める。
咄嗟に引っ込めようとした手を両手で包み、指を噛まないように浅く咥えてみかんだけを噛んで食べた。

口の中からみかんを消すと、オレは再び指を深く咥えて舌を這わせる。
この長くてキレイな指がオレの身体を撫で、オレの中に入ってくるのだ。

昨日もこの指にオレは・・・。

昨夜の痴態を思い出し、下肢に熱が集まる。
わざと音を立てて指を吸うと口から離し、オレは伸び上がって和真さんにキスをしようとした。なのに、和真さんは身体を後ろに引いてオレをかわした。

オレはバランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。それを和真さんが受け止めてくれる。

また避けられた・・・。

「もう・・・いいです」

嗚咽が混ざった声でそれだけ絞り出すと、オレは震える足に何とか力を込めて寝室へ入った。
後ろからオレを呼ぶ声が聞こえたけど、オレは構わずドアを閉める。そしてベッドに潜り込むと涙が溢れてきた。

やっぱり和真さんはオレのこと、もう冷めちゃったんだ。だからオレになんて欲情しないんだ。
今日目が覚めてから一度も和真さんはそういう意味で触れてくれなかった。先週も先々週もずっと隙あらばしようとしてた人が・・・。

やっぱり逃げたから許せないんだ。

かっこいい和真さんはきっと、今まで周りの女性から言い寄られては来てもわざわざ自分から行くことは無かったはずだ。なのに、オレは男の上に逃げたんだ。何を追う必要がある?

今までこらえていた涙が一気に出て喉が渇いた。確かさっきの水がまだサイドテーブルにあるはずだと思って布団から顔を出すと、暗闇の中で急にスマホが光った。

見ると着信だ。

オレは緑の受話器マークをタップするとスマホを耳に当てた、と同時に耳に入ってくる大音量の声。

綾兄あやにい!今まで何してたのっ!』

キーンとするくらいの音量に思わずスマホを離すと、向こうで声が聞こえる。

『ママっ。綾兄出たよ』

バタバタバタと何だか忙しなく動いている様子。

香里奈かりな?」

オレは四つ年下の妹の名を呼ぶ。すると今度はマシンガンの様に早口で一気にまくし立てられた。

 
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