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第4話 怒りの救出(5)
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3 戦いの末に
レディの足元には、簡易ベッドが設置されていた。その上で、ほぼ虫の息となった姿の……雅が横たわっていた。
おクウも、その側で寝かされている。
「すぐ、警察病院へ連れて行くからな」そして工藤の忙しない声が聞こえる中、レディはそんな雅をじっと見て、やりきれない思いに耐えていた。
「お前は……」この男のことは、まだよくは知らない。レディにとって多少の縁を持った者だ。ただどこにでもいる、ちょっとやんちゃだが、罪なき若者であった。それを虫けらみたいに命を奪うとは……。心の底から怒りが湧いてきた。レディの拳に自然と力が入った。
そうした有り様に、工藤も浮かない顔で応じていた。とはいえ彼の場合、学生を悼んでいる訳でなく、レディの持つ、シールドの割れたメットに気づいたせいだろう。
「M、あいつに顔を見られちまったな?」と訊いてきた。
「……ああ」
すると次に、彼女が担うべき今後の捜査活動を心配したのか、
「参ったな。もう学園に通うのはご法度か?」とのんびりとした感じで彼は言った。今にも敵が迫っているのに、まるで全て終わったかのような口調だった。
それには、セブンの方が逸早く不審な眼差しを見せた。
「敵がそこまで追って来ていますよ!」と無口な彼女でさえ警告していた。
けれど、何故か工藤は余裕があるみたいで、「そうか」と返すだけだ。
「……そうかって?」なおもセブンは不安そうに訊いた。
が、その時、何台かの擦れ違う対向車を目にする。明らかにサイレンが聞こえてきた。パトカーか? 装甲車も引き連れて数台がトラックの後方へと駆け抜けていた。どうやら応援が来た様子。
「警官を呼んだんですか? 来ないのでは」流石にセブンも納得した表情だ。
「さーて、俺は知らんよ。誰か通報したんじゃねえか。ドンパチやってるってな。……ちいとばかり、おせえけどなあ」とどう見てもとぼける仕草で話す工藤だった。
片や敵車の方では、
「だめです。皇虎さん。警察が来ました」と運転手が即座に言った。
「うぐぐっ、逃げられたかー!」忽ち助手席に座る皇虎が怒った。そのため、思い余って前にあるダッシュボードを物凄い音を立て叩き壊してしまう! 途端に、車はその衝撃で急停車を余儀なくされ、しかもスリップしたタイヤからは白煙がもうもうと立ち昇り、車内ではその驚異的な破壊力を真近で体感した運転手が、慄いた顔を見せて固まるという始末……
それでも、皇虎の憤慨は収まらない。もう近くにまで、パトカーが接近しているというのに。
ただし言うまでなく、奴らは元来た道を逃げ帰るしかなかったのだ。
急いでユーターンをしたなら、山道を走り去っていった。
レディの足元には、簡易ベッドが設置されていた。その上で、ほぼ虫の息となった姿の……雅が横たわっていた。
おクウも、その側で寝かされている。
「すぐ、警察病院へ連れて行くからな」そして工藤の忙しない声が聞こえる中、レディはそんな雅をじっと見て、やりきれない思いに耐えていた。
「お前は……」この男のことは、まだよくは知らない。レディにとって多少の縁を持った者だ。ただどこにでもいる、ちょっとやんちゃだが、罪なき若者であった。それを虫けらみたいに命を奪うとは……。心の底から怒りが湧いてきた。レディの拳に自然と力が入った。
そうした有り様に、工藤も浮かない顔で応じていた。とはいえ彼の場合、学生を悼んでいる訳でなく、レディの持つ、シールドの割れたメットに気づいたせいだろう。
「M、あいつに顔を見られちまったな?」と訊いてきた。
「……ああ」
すると次に、彼女が担うべき今後の捜査活動を心配したのか、
「参ったな。もう学園に通うのはご法度か?」とのんびりとした感じで彼は言った。今にも敵が迫っているのに、まるで全て終わったかのような口調だった。
それには、セブンの方が逸早く不審な眼差しを見せた。
「敵がそこまで追って来ていますよ!」と無口な彼女でさえ警告していた。
けれど、何故か工藤は余裕があるみたいで、「そうか」と返すだけだ。
「……そうかって?」なおもセブンは不安そうに訊いた。
が、その時、何台かの擦れ違う対向車を目にする。明らかにサイレンが聞こえてきた。パトカーか? 装甲車も引き連れて数台がトラックの後方へと駆け抜けていた。どうやら応援が来た様子。
「警官を呼んだんですか? 来ないのでは」流石にセブンも納得した表情だ。
「さーて、俺は知らんよ。誰か通報したんじゃねえか。ドンパチやってるってな。……ちいとばかり、おせえけどなあ」とどう見てもとぼける仕草で話す工藤だった。
片や敵車の方では、
「だめです。皇虎さん。警察が来ました」と運転手が即座に言った。
「うぐぐっ、逃げられたかー!」忽ち助手席に座る皇虎が怒った。そのため、思い余って前にあるダッシュボードを物凄い音を立て叩き壊してしまう! 途端に、車はその衝撃で急停車を余儀なくされ、しかもスリップしたタイヤからは白煙がもうもうと立ち昇り、車内ではその驚異的な破壊力を真近で体感した運転手が、慄いた顔を見せて固まるという始末……
それでも、皇虎の憤慨は収まらない。もう近くにまで、パトカーが接近しているというのに。
ただし言うまでなく、奴らは元来た道を逃げ帰るしかなかったのだ。
急いでユーターンをしたなら、山道を走り去っていった。
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