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第2話 ファーストバイトー4
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巨漢が肩を怒らせた。彼女を凝視して、今にも襲いかかろうと身構えている。しかも、その物凄い気迫を纏った容姿からは、恐ろしいほどの闘気が漂っているかのようにも見えた。
……その直後、ただちに奴は走り来た! 猛獣のごとき荒々しさで接近してくる。
対するレディは? 逃げはしない、真っ向勝負だ! 奴に焦点を合わせ、再度バイクを激突させるべく、エンジン音もけたたましく響かせ突き進んだ。
そのため、あっと言う間に二人の距離が縮んでいく。
そして、まさに近々の、ぶつかる直前……
巨漢が、かわした! 一瞬で上空三メートルまで飛び上がり、直下のレディに強力な拳を振るってきたのだ。
ならば、彼女の方も易々とその攻撃を貰う訳にはいかない。強拳をかわすため、バイクから飛んだ。
途端に、空を裂いて奴のパンチが目の前に迫ってくる。それでも、上手く掻い潜れば、驚異的な強風圧が頭を掠めたとしても、すんでの所で避けられたか?
いかにも、拳は当たらず……
が、仕舞った! 足首を掴まれた。直前の危機を回避したのも束の間、足を鷲掴みにされ、そのまま奴の強力を身に受ける。地面に向かって投げつけられたのだ!
とはいえ、彼女も負けてはいない。投げられようとも体を捻り、同時に腕を大きく振り抜いたなら、見事な空中殺法、高速回転のシューターを放っていた!
忽ち円盤は唸りを上げて、奴の顔面にぶち当たった! これには、然しもの巨漢も顔を手で押さえ堪えている様子……。けれど、レディの方も、桁外れの腕力による投げを貰って背中から地表へ叩きつけられた!
「うううっ……」彼女は痛みで悶絶した。それにしても、何というパワーだ。全く受身すら効かず、地面に激突させられた時の衝撃は息さえ詰まらせるほど。そのうえ、体中に高電流が走ったかのような激痛に襲われ、起き上がることも困難か。ただし、まだ戦いは終わっていない。さらなる襲来に備えなければならないのだ。
彼女は痛みに耐えて何とかよろけながらも、奴に対峙しようと立ち上がった。
……するとここで、予想外な光景を目にする。「むっ?」奴のマスクが、砕けているではないか。巨漢の素顔が暴かれている? しかもその顔を見た瞬間、彼女は驚いた。
……大門寺皇虎! 超人は皇虎だったのだ。となれば、バズーカを撃つ方は、龍子ということか?
遂にその素性が知れた! ただそうであっても、皇虎の方は全く気にする素振りもなく、ゆっくりとレディに近づいてくる。ましてやシューターの強打などなかったと言うがごとく。
「やっと捕まえたわ。うるさい蝿を。さて、お顔を拝見してどこの組織かじっくり吐いてもらおうかしら」と奴は口にする。
対してレディの方は、相当なダメージを食らっていた。もう体力だけでは、どう考えても勝てはしない。……こうなれば、今まで躊躇っていたが、最終的に使うしかないようだ。手榴弾型、赤のシューターを!
しかしこの時、腰につけていたシューターのホルダーベルトを探してみるも、まるで見当たらない。……どこへいった? 彼女は急いで周りを見回したところ、奴の近く、数メートル離れた所にホルダーが見えた。さっきの衝突でベルトが切れたみたいだ。今のレディは全くの丸腰になってしまったのだ!
目の前には、疲れを知らぬ獣のごとき皇虎が立ちはだかり、地響きのような足音を立てて迫り来る!
このままレディは素手で戦うのか。相手は強靭な化け物、到底敵うはずも……。されど、彼女は退かない。何故なら、それが――レディMだから。
「とりゃー!」レディが走った。皇虎の顎に飛び蹴りを見舞っていた!
鈍い打撃音がすれど、一ミリたりとも奴は動かない。
さらにレディの右足、膝が額につくまで大きく蹴り上げ、真っ直ぐ皇虎の脳天にかかと蹴り!
衝撃音が鳴った! 効いたか?
……否、駄目だ。何の損傷も見受けられない。奴には最大級の強力さえ通じないのだ。
逆に「煩わしい」と言うが早いか、皇虎の凄まじいフックが、レディの腹部に炸裂した! 否応なしに彼女は、強打撃音とともに弾き飛ばされる。
道に倒れ込むレディ。衝撃で体が軋む。どうやっても腕力では勝てそうにない。改めてそう悟らされた彼女は、うつ伏せの状態で苦痛を押し殺した。とはいえ、戦意だけは依然として残っている。顔を上げ奴を睨んだ。……と、その時! ホルダーベルトの影像を目にした。思いも寄らず、上手い具合に倒れた所から手の届く範囲に転がっていたのだ。
よし、これだ! これさえあれば、勝機はまだある。彼女は決意を固め、素早く立ち上がった。そして赤のシューターを取り、渾身の力で投げようと?……
「……うむっ?」
ところがそこへ、突然一対のヘッドライトが勢いよく走り寄ってきた! 荷台がアルミコンテナの大型トラックだ。それがレディと皇虎の間に割って入り、彼女たちを分ける形で止まってしまった!
いきなりの登場か? これにはレディの顔も曇った。……としても、後は成すがままよ。
片や皇虎の方も、この妨害に対して真っ先に声を荒げていた。
「どこから? 何をしてる、早くどきなさい!」と。
奴にしてみても、トラックに遮られ、その目にレディの姿が全く映らなくなったからだろう。
間もなく、皇虎の声に応えるようにトラックは即刻走り去る。白い排気ガスだけを残して……
どうにか邪魔物をやり過ごしたか。この、一時の障害に遭っては、無論のこと皇虎を慌てさせた。二人の戦いに水を差された格好となっただけに怒りも湧いてきたが、奴はそれも一興と捉えた。
そして気を取り直し、さらなる戦いに挑むため急いでレディのいた場所へ駆け寄る。辺りはまだ白い煙が漂っているうえに、暗夜のせいもあって状況が分かり辛い。皇虎は用心深く目を凝らしレディを捜した。不意の攻撃を警戒しつつ。
同様に、離れて見ていた龍子も近づいてきた。一刻でも早く姿を捉えようと、奴らは四つの目で周りを見回した。
……が、何故か懸命に捜せども、皇虎たちの目前には影すら映らない。
いつの間にか忽然と、彼女は消えていたのだ!
……その直後、ただちに奴は走り来た! 猛獣のごとき荒々しさで接近してくる。
対するレディは? 逃げはしない、真っ向勝負だ! 奴に焦点を合わせ、再度バイクを激突させるべく、エンジン音もけたたましく響かせ突き進んだ。
そのため、あっと言う間に二人の距離が縮んでいく。
そして、まさに近々の、ぶつかる直前……
巨漢が、かわした! 一瞬で上空三メートルまで飛び上がり、直下のレディに強力な拳を振るってきたのだ。
ならば、彼女の方も易々とその攻撃を貰う訳にはいかない。強拳をかわすため、バイクから飛んだ。
途端に、空を裂いて奴のパンチが目の前に迫ってくる。それでも、上手く掻い潜れば、驚異的な強風圧が頭を掠めたとしても、すんでの所で避けられたか?
いかにも、拳は当たらず……
が、仕舞った! 足首を掴まれた。直前の危機を回避したのも束の間、足を鷲掴みにされ、そのまま奴の強力を身に受ける。地面に向かって投げつけられたのだ!
とはいえ、彼女も負けてはいない。投げられようとも体を捻り、同時に腕を大きく振り抜いたなら、見事な空中殺法、高速回転のシューターを放っていた!
忽ち円盤は唸りを上げて、奴の顔面にぶち当たった! これには、然しもの巨漢も顔を手で押さえ堪えている様子……。けれど、レディの方も、桁外れの腕力による投げを貰って背中から地表へ叩きつけられた!
「うううっ……」彼女は痛みで悶絶した。それにしても、何というパワーだ。全く受身すら効かず、地面に激突させられた時の衝撃は息さえ詰まらせるほど。そのうえ、体中に高電流が走ったかのような激痛に襲われ、起き上がることも困難か。ただし、まだ戦いは終わっていない。さらなる襲来に備えなければならないのだ。
彼女は痛みに耐えて何とかよろけながらも、奴に対峙しようと立ち上がった。
……するとここで、予想外な光景を目にする。「むっ?」奴のマスクが、砕けているではないか。巨漢の素顔が暴かれている? しかもその顔を見た瞬間、彼女は驚いた。
……大門寺皇虎! 超人は皇虎だったのだ。となれば、バズーカを撃つ方は、龍子ということか?
遂にその素性が知れた! ただそうであっても、皇虎の方は全く気にする素振りもなく、ゆっくりとレディに近づいてくる。ましてやシューターの強打などなかったと言うがごとく。
「やっと捕まえたわ。うるさい蝿を。さて、お顔を拝見してどこの組織かじっくり吐いてもらおうかしら」と奴は口にする。
対してレディの方は、相当なダメージを食らっていた。もう体力だけでは、どう考えても勝てはしない。……こうなれば、今まで躊躇っていたが、最終的に使うしかないようだ。手榴弾型、赤のシューターを!
しかしこの時、腰につけていたシューターのホルダーベルトを探してみるも、まるで見当たらない。……どこへいった? 彼女は急いで周りを見回したところ、奴の近く、数メートル離れた所にホルダーが見えた。さっきの衝突でベルトが切れたみたいだ。今のレディは全くの丸腰になってしまったのだ!
目の前には、疲れを知らぬ獣のごとき皇虎が立ちはだかり、地響きのような足音を立てて迫り来る!
このままレディは素手で戦うのか。相手は強靭な化け物、到底敵うはずも……。されど、彼女は退かない。何故なら、それが――レディMだから。
「とりゃー!」レディが走った。皇虎の顎に飛び蹴りを見舞っていた!
鈍い打撃音がすれど、一ミリたりとも奴は動かない。
さらにレディの右足、膝が額につくまで大きく蹴り上げ、真っ直ぐ皇虎の脳天にかかと蹴り!
衝撃音が鳴った! 効いたか?
……否、駄目だ。何の損傷も見受けられない。奴には最大級の強力さえ通じないのだ。
逆に「煩わしい」と言うが早いか、皇虎の凄まじいフックが、レディの腹部に炸裂した! 否応なしに彼女は、強打撃音とともに弾き飛ばされる。
道に倒れ込むレディ。衝撃で体が軋む。どうやっても腕力では勝てそうにない。改めてそう悟らされた彼女は、うつ伏せの状態で苦痛を押し殺した。とはいえ、戦意だけは依然として残っている。顔を上げ奴を睨んだ。……と、その時! ホルダーベルトの影像を目にした。思いも寄らず、上手い具合に倒れた所から手の届く範囲に転がっていたのだ。
よし、これだ! これさえあれば、勝機はまだある。彼女は決意を固め、素早く立ち上がった。そして赤のシューターを取り、渾身の力で投げようと?……
「……うむっ?」
ところがそこへ、突然一対のヘッドライトが勢いよく走り寄ってきた! 荷台がアルミコンテナの大型トラックだ。それがレディと皇虎の間に割って入り、彼女たちを分ける形で止まってしまった!
いきなりの登場か? これにはレディの顔も曇った。……としても、後は成すがままよ。
片や皇虎の方も、この妨害に対して真っ先に声を荒げていた。
「どこから? 何をしてる、早くどきなさい!」と。
奴にしてみても、トラックに遮られ、その目にレディの姿が全く映らなくなったからだろう。
間もなく、皇虎の声に応えるようにトラックは即刻走り去る。白い排気ガスだけを残して……
どうにか邪魔物をやり過ごしたか。この、一時の障害に遭っては、無論のこと皇虎を慌てさせた。二人の戦いに水を差された格好となっただけに怒りも湧いてきたが、奴はそれも一興と捉えた。
そして気を取り直し、さらなる戦いに挑むため急いでレディのいた場所へ駆け寄る。辺りはまだ白い煙が漂っているうえに、暗夜のせいもあって状況が分かり辛い。皇虎は用心深く目を凝らしレディを捜した。不意の攻撃を警戒しつつ。
同様に、離れて見ていた龍子も近づいてきた。一刻でも早く姿を捉えようと、奴らは四つの目で周りを見回した。
……が、何故か懸命に捜せども、皇虎たちの目前には影すら映らない。
いつの間にか忽然と、彼女は消えていたのだ!
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