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第3話 仲間の危機-1
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1 性(さが)
「何やってんだ!」工藤の怒りの声が車内に響いた。
ちょうどレディのバイクが、自動運転走行で戻ってきていた。トラックの後部に近づき、車が走っているにも拘らず、荷台の開け放された扉から道路に垂らした補助台を踏み上がり収容されているところだった。
その側には、機捜隊のメンバー、四人の姿も見えた。
このトラックというのは、トレーラー部が所謂、動く作戦室。武器は勿論のこと、通信機材も完備されて外部の情報を得る、彼らの拠点であった。機捜隊員とは別に、トラクター(けん引車)で専任の運転手が車を走らせていた。
「どうして勝手に北条を襲撃した?」なおも工藤が責める。
「さっさと、終わらせたかったんだよ。北条を捕まえて締め上げれば全て解決したさ」と答えるレディ。
「まったくお前という奴は、無茶苦茶だな。それがどんなに危険なことか……」
「あんたが邪魔さえしなければ、上手くいってたわ。俺のこの手で、あいつらなんか簡単に仕留めていたさ」
「バカ言え、あの状況でお前の方が有利だと……本当に懲りないね。いつもいつも馬車馬みたいに突き進む性質には。でもな、これだけは覚えて置いてくれ。潜入しているのは、お前だけじゃないてことをな! お前の軽率な行動で、北条はさらに警戒を強めたはずだ。捜査するのも危険で難しくなったぞ!」
「…………」その言葉を聞いては、レディの方も返す言葉が出ない。
そこにおクウが、「まあ良いじゃございませんの。Mの暴走は今に始まった訳ではないですし、それにいずれ一戦を交えるべき相手だったのですから」と助け舟を出してきた。
だが、工藤の方は「へへ、甘いね、おクウちゃん。甘過ぎて涙が出るぜ」と言った後、今度はセブンの方を向いて「なあ、そうだよな。お前はどう思う?」と訊いた。
「…………」セブンは無口な娘、ただ微笑むだけだ。
それを見た工藤は、「まあ、お前は何も言わねえが、その面を見れば、許すと仰っていますかね。……ほんとに、しょうがねえなあ」二人の態度に、これ以上レディを責めるのは諦めたようだ。それでも、ぼやくことだけは止めず「……確かに今までの事件でも、勝手に一人で薬の取引現場や組事務所に乗り込んでは、あっという間に全員を半殺しの目にあわせたわな。それで勇猛な戦士としてのレディMの名は、いつしか裏社会で有名になっちまった。幸いにもメットを被っていたお陰で面は割れていないが、危なっかしくて見ていられないぞ。もし正体がばれちまったらどうなるか分かってるのか? まったく……」厳しく言うのも、彼なりにレディたちを心配してのことだろう。
次に工藤は、彼女たちのことより、出くわした相手のことを話し始めた。
「しかし、あの姉妹は何者だ。こちらの調査でもマークはしていた学園の生徒だが、どう見ても『HY9』の効果が現れている。それも昨日や今日の変化とも思えない。もしかしたら、奴らはウィルス適応者なのかもしれないな」
「ウィルス……適応者?」おクウが口を挟む。
「ああ、研究者の話だと、何百人か何千人かの中にウィルスの副作用が出ない人間がいるらしい。つまり、大多数の化け物になって死んだ立石正樹のような人間に紛れて、ウィルスゲノムに順応した超人も、生まれる可能性があると言うんだ」
「それが皇虎か?」レディも訊いた。
「そうとしか考えられないな」
「では、他にも超人になる人がいるんですね」
「……たぶんな。どうやら少し見えてきたな。よーし、後はおクウが調べてくれ」と工藤は、おクウに言うとともに、レディに向かって「そしてM、お前は暫く捜査は禁止だ。武器も没収する!」
そう告げたのであった。
「何やってんだ!」工藤の怒りの声が車内に響いた。
ちょうどレディのバイクが、自動運転走行で戻ってきていた。トラックの後部に近づき、車が走っているにも拘らず、荷台の開け放された扉から道路に垂らした補助台を踏み上がり収容されているところだった。
その側には、機捜隊のメンバー、四人の姿も見えた。
このトラックというのは、トレーラー部が所謂、動く作戦室。武器は勿論のこと、通信機材も完備されて外部の情報を得る、彼らの拠点であった。機捜隊員とは別に、トラクター(けん引車)で専任の運転手が車を走らせていた。
「どうして勝手に北条を襲撃した?」なおも工藤が責める。
「さっさと、終わらせたかったんだよ。北条を捕まえて締め上げれば全て解決したさ」と答えるレディ。
「まったくお前という奴は、無茶苦茶だな。それがどんなに危険なことか……」
「あんたが邪魔さえしなければ、上手くいってたわ。俺のこの手で、あいつらなんか簡単に仕留めていたさ」
「バカ言え、あの状況でお前の方が有利だと……本当に懲りないね。いつもいつも馬車馬みたいに突き進む性質には。でもな、これだけは覚えて置いてくれ。潜入しているのは、お前だけじゃないてことをな! お前の軽率な行動で、北条はさらに警戒を強めたはずだ。捜査するのも危険で難しくなったぞ!」
「…………」その言葉を聞いては、レディの方も返す言葉が出ない。
そこにおクウが、「まあ良いじゃございませんの。Mの暴走は今に始まった訳ではないですし、それにいずれ一戦を交えるべき相手だったのですから」と助け舟を出してきた。
だが、工藤の方は「へへ、甘いね、おクウちゃん。甘過ぎて涙が出るぜ」と言った後、今度はセブンの方を向いて「なあ、そうだよな。お前はどう思う?」と訊いた。
「…………」セブンは無口な娘、ただ微笑むだけだ。
それを見た工藤は、「まあ、お前は何も言わねえが、その面を見れば、許すと仰っていますかね。……ほんとに、しょうがねえなあ」二人の態度に、これ以上レディを責めるのは諦めたようだ。それでも、ぼやくことだけは止めず「……確かに今までの事件でも、勝手に一人で薬の取引現場や組事務所に乗り込んでは、あっという間に全員を半殺しの目にあわせたわな。それで勇猛な戦士としてのレディMの名は、いつしか裏社会で有名になっちまった。幸いにもメットを被っていたお陰で面は割れていないが、危なっかしくて見ていられないぞ。もし正体がばれちまったらどうなるか分かってるのか? まったく……」厳しく言うのも、彼なりにレディたちを心配してのことだろう。
次に工藤は、彼女たちのことより、出くわした相手のことを話し始めた。
「しかし、あの姉妹は何者だ。こちらの調査でもマークはしていた学園の生徒だが、どう見ても『HY9』の効果が現れている。それも昨日や今日の変化とも思えない。もしかしたら、奴らはウィルス適応者なのかもしれないな」
「ウィルス……適応者?」おクウが口を挟む。
「ああ、研究者の話だと、何百人か何千人かの中にウィルスの副作用が出ない人間がいるらしい。つまり、大多数の化け物になって死んだ立石正樹のような人間に紛れて、ウィルスゲノムに順応した超人も、生まれる可能性があると言うんだ」
「それが皇虎か?」レディも訊いた。
「そうとしか考えられないな」
「では、他にも超人になる人がいるんですね」
「……たぶんな。どうやら少し見えてきたな。よーし、後はおクウが調べてくれ」と工藤は、おクウに言うとともに、レディに向かって「そしてM、お前は暫く捜査は禁止だ。武器も没収する!」
そう告げたのであった。
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