元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第六部:公爵邸披露パーティー

アズナヴール伯爵邸

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「リュシエンヌ、準備はできたか?」
「はい、いつでも問題ございません」
「それなら挨拶に向かうか」
 今日はリュシエンヌの実家に出かける。彼女を妻にしたいという意向を伝えるためだ。それと使用人を借りたいとは手紙で伝えているけど、対面で伝えたいということもある。挨拶は基本だからな。
 馬車に乗り込むとしばらくして動き出す。
 本来なら従者のセザールが同行するはずだけど、今回は屋敷の方でダヴィドの下で動いてもらっている。パーティーが近いからな。
「両親も喜びます。心配をかけましたので」
「微妙な誤解で心配してたんだよな?」
「ふふふ。さすがに正直に話すのは少々恥かしゅうございますので、おやめいただければ……」
「ああ、それはもちろんだ。俺を満足させるでな」
「あまりな御無体はおやめください♪」
 リュシエンヌが顔を赤くする。彼女はこうやって恥ずかしがっているけど、嫌がってるわけじゃない。根はかなりエロくて、嫌がる素振りをして期待をしてるだけだ。腰をモゾモゾと動かすから分かるんだよな。
 最近は【幻覚】を使ってSMルームっぽく仕上げた自分の部屋でいたぶられるのにハマってるけど、俺がハマりそうで怖い。もちろんネタはエロ本からだ。
 今でも書店に出かけては購入してるらしく、新しい本棚が追加されていた。俺は公式な外出でなければ馬車は使わないから、うちの馬車は今ではリュシエンヌ専用に近い。買いにいくのはエロ本ばっかりだけどな。
 彼女が新しい本を買えば、その中に出てきた状況を再現することもやっている。「主人と使用人」とか「盗賊と令嬢」とか「オークと姫騎士」とか誰が広めた? オークに関しては以前リュシエンヌを大泣きさせたことがあったからどうしようかと思ったら、デフォルメされた着ぐるみにしたら大丈夫だった。あの着ぐるみは誰が作ったんだ?
 さらにこの前は「体育教師と体操服の生徒」というエロ本にないプレイをやった。どうやらミレーヌに色々と聞いて覚えたらしいけど、あれは危険だ。小柄なリュシエンヌに体操服を着せたら似合いすぎた。もちろん動画は保存済みだ。
 そうやって保存してるけど、保存するだけでそれを使うことはほとんどない。見せて恥ずかしがらせるくらいだ。俺がそれを見てナニをすることはないからな。それなら直接相手をしてもらう方がいい。

 ◆◆◆

「ラヴァル公爵、よくおいでくださいました」
「どうぞごゆっくりお寛ぎください」
 伯爵と妻のコンスタンスさんが頭を下げる。
「ブノワ殿、コンスタンス殿、今日は世話になる」
 二人に客間に案内されて、そこでゆっくりと話をすることにした。すでに言うべきことは決まっている。男として、相手の両親にはしっかりと伝えなければならない。
 それとなく手紙では伝えているけど、それで済ませるわけにはいかない。
「実はリュシエンヌを来年にも妻にしたいと思う。両親として、それはどうだろうか?」
 持って回った言い方をしても意味はない。ここはそのまま伝えることにした。
「これまで娘がしたいようにさせてきました。家庭教師の件につきましては何やら娘には思うところがあったようです。本人がそうしたいのであれば私には断る理由はございません」
「私も同じです。娘が幸せならそれでかまいません」
「感謝する。それで安心した」
 俺は二人に対して深々と頭を下げる。
 どうやら二人は半引きこもりのリュシエンヌが家庭教師の話を受けたことで、何かあったのではないかと思っていたそうだ。
 リュシエンヌの話が終わるとコンスタンス殿は下がっていった。リュシエンヌも久しぶりに母親と話をするといって付いていった。ここにはブノワ殿と俺だけが残った。
「折り入って一つ頼みがある」
「私どもにできることでしたら」
「実は来週行う屋敷の披露パーティーの際に手を貸してもらえないだろうか」
「それは手紙にありました使用人の話ですね」
「そういうことだ」
 年始の祝賀会が終わり、召喚の儀式が終わり、どの屋敷もゲストを招いて社交を行う日々が続く。そんな時期に使用人を借りるのは難しいこともあるだろう。でもアズナヴール伯爵夫妻がうちに来るなら、その日はこの屋敷に来客はほとんどないだろうと考えてのことだ。ケントさんもそう言っていた。
「問題ありません。当日は私もお邪魔しますので、当日の早朝に向かわせることにします」
「助かる。ギリギリで追加の使用人がやって来たが、それでも十分と言えるかどうか微妙なところで」
「この時期ではそうでしょう。少々タイミングが悪すぎましたね」
「時期が悪かったのか?」
 時期やタイミングってあるのか? いつもいるものじゃないのか?
「公爵様はこちらに来られたばかりなので社交の事情まではお詳しくないので仕方がないと思います」
 ブノワ殿によると、社交シーズンが終わると使用人たちが解雇されることが多くなる。もう少しすると仕事をなくした使用人が口入れ屋、つまり職業斡旋業者に職探しに行くことになる。
 それなりの年齢まで勤め上げて辞める場合もあれば、働きぶりが良くなくてクビになることもある。あるいは社交シーズンの数か月だけの契約で雇われる者もいるそうだ。シーズンが終わって四月に入れば選り取り見取りだと。
「なるほど、そういう事情か。それは仕方がない。その時期になったら雇うとしよう」
「おそらく案内と給仕が足りないのでしょう。当日うちから出しますが、それだけでいけますか?」
「ピトル伯爵にもお願いしている。おそらくそれで大丈夫なはずだ」
「ああ、あの方も召喚された方でしたね」
「色々と助言を頂いた。俺には彼がいたけど、彼には誰もいなかったから大変だっただろう」
 ほぼ一〇〇年ぶりの召喚成功だったらしいから、勇者じゃなくても盛り上がったそうだ。でもケントさん自身は謙虚な性格だから、俺ほど話題にはならなかったらしい。
 俺の場合は勇者だし、何かをすれば日報紙に載るからな。明日の日報紙には俺がここに来たことも書かれるはずだ。
「使用人を借りる謝礼もきちんと払わせていただく」
「いえいえ、お気になさらず」
「そういうわけにもいかないだろう」
 契約はきちんとしなければ揉め事の原因になる。身内になると分かっててもな。
「私も妻も、公爵がリュシエンヌを貰ってくれるというだけで満足なのです。孝行娘ですよ」
 そう言いながら微笑むブノワ殿は俗世に興味がない性格で、朝夕に礼拝堂で祈りを捧げ、その間は王宮で仕事をするという堅実な人生を送っている。
「そうか。それなら今後は義理の親子として、身内として仲良くしてほしい」
 こういう父親がいれば俺の性格がひん曲がることはなかっただろうな。それでもリュシエンヌはああなったか。親子というのは分からないものだな。
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