元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第六部:公爵邸披露パーティー

追加の使用人たち

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「「「よろしくお願いいたします」」」
「こちらこそよろしく頼む」
 ルブラン侯爵経由で追加の使用人がやって来た。全部で二五人。男性が九人で女性が一六人。メイドが増えたのが大助かりだ。それでも公爵家としてはまだ少ない。いや、普通の屋敷なら問題ないのかもしれないけど、ここは広すぎる。
 でもこれでようやく夜番を二人にできる。俺が夜に何かを頼むことはないけど、だからといって夜番が居眠りしていいわけじゃない。夜中に一人で何時間も起きてるのは辛かっただろう。
 男性は従者のセザール、ブーランジェパン職人のエタン、パティシエ菓子職人のジョアキム、執事助手のパトリス。そして門衛は年齢順にルイ、イザーク、アル、エンゾ、ジュスタンの五人。門衛は大助かりだ。
 女性の方はメイド長のセリア、キッチンメイドのデボラ、ロズリーヌ、ヨランド、スティルルームメイドのデジレ、キトリー、ブーランジェパン焼き助手のエーヴ、楽士のララとロラの双子。そして追加のメイドがオルタンス、イザベル、ジョゼフィーヌ、カタリーナ、レオノール、マリエット、ナディアの七人。順番にHIJKLMN。やっぱり狙ったな。
 目の前に並んだ顔を見ると、何となく見たことのあるような顔が多い。ていうかほぼ全員か? デジレとキトリーってエミリアの護衛をしていた二人だよなあ。横にいるエミリアが唖然とした顔をしている。
「シュウジ様、これはどういうことですか?」
「ん? 半分は院長のドッキリだろう」
「……そういうことですか」
 ドッキリというのがこっちで通用するかどうかは分からないけど、エミリアには通じたようだ。そう思っていたら代表のセザールが俺に手紙を差し出した。
「これがルブラン侯爵からの手紙になります」
 開けて中を見る。ああ、やっぱりな。
「見たことのある顔ばかりだと思ったら、やっぱりか」
「はい。そちらにいるメイド以外は王宮で旦那様のお世話をさせて頂いた者ばかりです。メイド九人はこれまではシスターでしたが、こちらでメイドとして使っていただいても問題ないということです」
「非常に助かる。助かるけど……デジレ、そっちの七人を選んだのはマリー=テレーズ殿か?」
「よくお分かりですね」
「まあな。おそらくルブラン侯爵に話を聞いて、面白がって選んだんだろうな」
「はい、そのようです」
 前からいるメイド七人組はABCDEFGだからな。それにしても、よくKがいたな。この国の全部がフランスっぽいわけじゃないけど、Kで始まる名前って珍しいからな。
「カタリーナはカロシュ王国の家系か?」
 カロシュ王国ってのはドイツとチェコっぽい国だ。
「はい、そうです。祖父母の時代に引っ越したと聞いています。Kで始まる名前は私だけでしたので、抽選なしで選ばれました」
「抽選?」
「はい。希望者が多かったので、頭文字がHIJKLMNのシスターのみ集められ、それぞれ抽選がありました」
「その様子が目に浮かぶようだな」
 シスターが三五〇人くらいいるとして、そのうち希望者がどれくらいいたかは分からないけど、頭文字ごとならせいぜい数人ずつか? ちなみにオルタンスはHortense、キトリーはQuitterieという綴りだ。俺の家名のコワレはQuoirezになる。
「アリーヌは自分の名前で募集がないと知って泣き崩れました」
「心が痛むけど、俺が選んだんじゃないからな」
 もしかしたら俺がHIJKLMNを集めたように思われたかもしれない。そんなことはもちろんないけど、うちのメイドにすると言われてHIJKLMNだけが集められたらそう受け取られてもおかしくない。
「次回は名前での募集はやめてほしいとみんなが院長にお願いしましたので、おそらくOPQRSTUにはならないと思います。あ、Qはキトリーさんが来ていますね」
「私は名前で選ばれたのではないですけどね」
 キトリーが苦笑した。
「では男性はダヴィド、女性はシュザンヌの指示に従ってくれ。シュザンヌ、ハウスメイドは前からいた七人と合わせ、あらためて仕事の振り分けてもいいし、それともみんなで持ち回りで担当させてもいいし、そのあたりはお前に任せる」
「畏まりました」
「セリアはシュザンヌのサポートを頼む」
「はい」

 ◆◆◆

「ジョアキムにはパーティーのためのデザートを頼みたい。いずれ商会で販売する予定のものを出そうと思う」
「重責ですがしっかり務めさせていただきます」
 デセールじゃなくてデザートなんだよなあ。パティシエ菓子職人ブーランジェパン職人もいるのに。ちなみにデザートには焼き菓子だけじゃなくてコーヒーや紅茶も含まれる。
 この前セリーヌとドミニクに試食してもらったフィナンシエ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラはどれも好評だった。他の使用人たちにも食べてもらったけど、女性ならまず好きだろうということになった。でもマドレーヌについては似たものがあるそうだ。焼き菓子の多くは小麦粉と砂糖とバターと卵を使うからな。
 この国ではデザートとして口にするのは甘いお菓子とコーヒーか紅茶ということになる。クッキーが定番だけど、パイやタルトもある。
 そんな状況で他に何かあるかと考えて販売しようと思ったのがフィナンシエ、ラング・ド・シャ、カステラ、バウムクーヘンあたりだ。他にも何かいいのを思いつけば売ってもいい。
 生菓子は保存の関係で流通しない。貴族が屋敷で食べることはあるそうだ。ティラミスあたりはケントさんが好きそうだ。できたら試食してもらおうか。
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