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第六部:公爵邸披露パーティー
勇者の訓練
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王都の一角には練兵場がある。東西南北が軽く五〇〇メートルを超えるもので、ここで軍の兵士たちが日々訓練をしている。どうしてここに来たかというと、魔法の訓練をしようと思ったからだった。
ミレーヌは神としての力は地上ではあまり使えないそうだけど、それでも並みの人間よりは強い。それにもし何かあれば神域に帰ればいい。でもエミリアとリュシエンヌはそういうわけにはいかない。妻を持つということは妻を守らなければならないということでもある。
それでだ、俺にはエミリアとリュシエンヌを守る力はあるはずだ。でもどれだけあるのかが実は俺にもよく分からない。王宮の迎賓館で寝泊まりしてた時、騎士たちと一緒に剣の訓練をした。あの場にいた騎士たちよりは強い。でも魔法は使わなかった。
俺は神域で主な魔法は一通り試して身に付けたけど、それは何の遠慮もいらない神域での話であって、王都で全力を出せばどうなるかまでは分からない。そのことに気づいたのが、庭の片付けをしつつスキルのレベル上げをしてた時だった。だから普通に使えばどうなるかをここで試させてもらおうと思ったんだけど……
「本日は勇者様に我々の訓練をご見学頂くことになった。これは大変名誉なことである。総員けっして手を抜くことなく、各自の訓練メニューを消化するように」
「「「はっ」」」
ちょっと場所を使わせてもらうはずが、いつの間にか閲兵式になった。訓練に来たはずなのに、訓練を見ることになるとは。
◆◆◆
一通り見学させてもらい、俺は弓矢や魔法の訓練で使う場所を使わせてもらうことにした。
俺がやりたいのは魔法の軌道の確認。どうもこの世界の魔法は物理法則の影響をかなり受けるらしい。身体強化なんかそのいい例だ。一時的に二倍の筋力が出せるけど、それは限度以上の力を無理やり出したことになるから体力が普段の四倍減るそうだ。だから必要な瞬間に必要な分だけ使うらしい。重い荷物を持ち上げたりとか。そうしなければあっという間に疲れ果てると。
まずはよく使いそうな魔法の確認をする。向こうには木でできた的がある。直径は三〇センチ。ここからの距離は一〇〇メートル。
まず【火の矢】を放つと細い炎が真っ直ぐに的に向かい……命中したはずだけどショボい。【風の刃】は……命中したかどうかすら分からない。
「この距離で命中できるとは……。さすが勇者様ですね」
双眼鏡を覗いていた魔術師が感心していた。
「普通は当たらないのか?」
「我々なら一〇メートルから二〇メートルくらいの距離なら撃ちますが、それ以上は滅多にありません。そもそも戦闘の際には魔物を狙うのではなく適当に撃ち込んで当たるのを待つ感じになります」
「的が動くからな。まあこの距離なら当たってもあまり効き目がなさそうだ」
的には当たったけど焦げ目すら付かなかった。まあ初級魔法だしレベルが低いからな。それなら当たったら痛そうなやつをやってみるか。
次は【水の玉】は拳くらいの大きさの水の塊が飛んで……ベシャっと落ちた。水風船だな。【石の矢】は三、四〇センチくらいの尖った石が飛んで……
カンッ……ジャーッ……カラカラカラ……
落ちて地面を滑った。
次は【石の玉】。これはやっぱり拳くらいの石の塊が飛んで……
カーン……カンッ、カンッ……
もっと手前に落ちて転がった。
「やはり実体があると届かないな」
「遠くへ飛ばすには上へ向けて撃ちます」
「ああ、そういえばそうだな」
それなら魔力量を増やして四五度くらいでもう一度【石の玉】を放つと……
「「「おーっ」」」
向こうで歓声が上がった。
「的の右端を掠めました」
一〇〇メートル先で一五センチ左か。微調整どころの話じゃないな。
次は角度を少し下げて、もう少し魔力を多めに込めて放つと……
「「「うおーーー‼」」」
当たったな。
「真ん中に命中しました」
「よし、一〇〇メートルならこの角度でいけるか」
やっぱり適性があると飲み込みが早いんだな。何となくなんだけど、じっと見るとどれくらいの角度で撃てばどう飛ぶかというのが何となく分かるというか見えるというか。
レベルが上がれば感覚だけでも当たるのかもしれないけど、今はきっちり狙わないと当たらない。
結局それからもう少し距離を取って、二〇〇メートル、三〇〇メートルと、距離を離しつつ的に当てる訓練をした。さすがに百発百中とはいかなかった。でも魔力の込め方次第で距離は伸ばせそうだ。どうやら魔法は融通が利きそうだな。
もう少し遠くまで飛ばす練習と思ったけど、練兵場の外に飛び出したら危ないから四五〇メートルくらいまでしか試さなかった。でも十分だろう。
とりあえず分かったことは、土や石、水、氷、などの実態がある魔法は重力の影響を受ける。火や風、雷は影響されないけど、風の影響を受ける。一番影響が少ないのが一瞬で的に当たる雷だけど、これって雨の屋外で使っていいのか? 感電したくないぞ。
◆◆◆
「訓練を拝見させていただき、非常に為になりました」
側にいた魔術師がそう言った。
「そうか? 俺は魔力量と距離と角度を確認していただけなんだが」
「いえ、一つ一つ確認しながらというのを我々はなかなか行えません。得意な属性と不得意な属性がありますし、魔力量に限度がありますので」
ああ、そうか。俺は魔力量と回復力はおそらく誰よりも上だろう。
「俺は使える魔法は多いけどレベルが低いから、ここをたまに訓練に使わせてほしい。データが必要なら提供しよう」
「感謝します」
ここにいた魔術師たちに話を聞くと、レベルによって魔法にどう違いが出るかはその魔法次第だそうだ。
例えばさっきの【石の玉】なんかは玉が大きくなったり硬くなったりするらしい。魔力量を増やせば初速が上がるそうだ。それならレベルが低くても使う魔力量を増やせば威力は上がる。でもレベルが低いってことはそもそも魔力量が少ないってことでもあるから、なかなかそんな比較はできないそうだ。
俺の場合は魔力量と回復力がずば抜けているのにレベルが低いっていう、実験向きなステータスなんだそうだ。それでもしばらくすればレベルが上がるだろうし、もし可能ならその前に何回かデータ取りの協力してほしいということだった。
俺としては協力するのは吝かじゃない。また状況が落ち着いたらここで実験してみよう。積極的に敵と戦いたいわけじゃないから、こういうのは嫌いじゃない。
ミレーヌは神としての力は地上ではあまり使えないそうだけど、それでも並みの人間よりは強い。それにもし何かあれば神域に帰ればいい。でもエミリアとリュシエンヌはそういうわけにはいかない。妻を持つということは妻を守らなければならないということでもある。
それでだ、俺にはエミリアとリュシエンヌを守る力はあるはずだ。でもどれだけあるのかが実は俺にもよく分からない。王宮の迎賓館で寝泊まりしてた時、騎士たちと一緒に剣の訓練をした。あの場にいた騎士たちよりは強い。でも魔法は使わなかった。
俺は神域で主な魔法は一通り試して身に付けたけど、それは何の遠慮もいらない神域での話であって、王都で全力を出せばどうなるかまでは分からない。そのことに気づいたのが、庭の片付けをしつつスキルのレベル上げをしてた時だった。だから普通に使えばどうなるかをここで試させてもらおうと思ったんだけど……
「本日は勇者様に我々の訓練をご見学頂くことになった。これは大変名誉なことである。総員けっして手を抜くことなく、各自の訓練メニューを消化するように」
「「「はっ」」」
ちょっと場所を使わせてもらうはずが、いつの間にか閲兵式になった。訓練に来たはずなのに、訓練を見ることになるとは。
◆◆◆
一通り見学させてもらい、俺は弓矢や魔法の訓練で使う場所を使わせてもらうことにした。
俺がやりたいのは魔法の軌道の確認。どうもこの世界の魔法は物理法則の影響をかなり受けるらしい。身体強化なんかそのいい例だ。一時的に二倍の筋力が出せるけど、それは限度以上の力を無理やり出したことになるから体力が普段の四倍減るそうだ。だから必要な瞬間に必要な分だけ使うらしい。重い荷物を持ち上げたりとか。そうしなければあっという間に疲れ果てると。
まずはよく使いそうな魔法の確認をする。向こうには木でできた的がある。直径は三〇センチ。ここからの距離は一〇〇メートル。
まず【火の矢】を放つと細い炎が真っ直ぐに的に向かい……命中したはずだけどショボい。【風の刃】は……命中したかどうかすら分からない。
「この距離で命中できるとは……。さすが勇者様ですね」
双眼鏡を覗いていた魔術師が感心していた。
「普通は当たらないのか?」
「我々なら一〇メートルから二〇メートルくらいの距離なら撃ちますが、それ以上は滅多にありません。そもそも戦闘の際には魔物を狙うのではなく適当に撃ち込んで当たるのを待つ感じになります」
「的が動くからな。まあこの距離なら当たってもあまり効き目がなさそうだ」
的には当たったけど焦げ目すら付かなかった。まあ初級魔法だしレベルが低いからな。それなら当たったら痛そうなやつをやってみるか。
次は【水の玉】は拳くらいの大きさの水の塊が飛んで……ベシャっと落ちた。水風船だな。【石の矢】は三、四〇センチくらいの尖った石が飛んで……
カンッ……ジャーッ……カラカラカラ……
落ちて地面を滑った。
次は【石の玉】。これはやっぱり拳くらいの石の塊が飛んで……
カーン……カンッ、カンッ……
もっと手前に落ちて転がった。
「やはり実体があると届かないな」
「遠くへ飛ばすには上へ向けて撃ちます」
「ああ、そういえばそうだな」
それなら魔力量を増やして四五度くらいでもう一度【石の玉】を放つと……
「「「おーっ」」」
向こうで歓声が上がった。
「的の右端を掠めました」
一〇〇メートル先で一五センチ左か。微調整どころの話じゃないな。
次は角度を少し下げて、もう少し魔力を多めに込めて放つと……
「「「うおーーー‼」」」
当たったな。
「真ん中に命中しました」
「よし、一〇〇メートルならこの角度でいけるか」
やっぱり適性があると飲み込みが早いんだな。何となくなんだけど、じっと見るとどれくらいの角度で撃てばどう飛ぶかというのが何となく分かるというか見えるというか。
レベルが上がれば感覚だけでも当たるのかもしれないけど、今はきっちり狙わないと当たらない。
結局それからもう少し距離を取って、二〇〇メートル、三〇〇メートルと、距離を離しつつ的に当てる訓練をした。さすがに百発百中とはいかなかった。でも魔力の込め方次第で距離は伸ばせそうだ。どうやら魔法は融通が利きそうだな。
もう少し遠くまで飛ばす練習と思ったけど、練兵場の外に飛び出したら危ないから四五〇メートルくらいまでしか試さなかった。でも十分だろう。
とりあえず分かったことは、土や石、水、氷、などの実態がある魔法は重力の影響を受ける。火や風、雷は影響されないけど、風の影響を受ける。一番影響が少ないのが一瞬で的に当たる雷だけど、これって雨の屋外で使っていいのか? 感電したくないぞ。
◆◆◆
「訓練を拝見させていただき、非常に為になりました」
側にいた魔術師がそう言った。
「そうか? 俺は魔力量と距離と角度を確認していただけなんだが」
「いえ、一つ一つ確認しながらというのを我々はなかなか行えません。得意な属性と不得意な属性がありますし、魔力量に限度がありますので」
ああ、そうか。俺は魔力量と回復力はおそらく誰よりも上だろう。
「俺は使える魔法は多いけどレベルが低いから、ここをたまに訓練に使わせてほしい。データが必要なら提供しよう」
「感謝します」
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