元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
245 / 273
第十六部:領主になること

エウロードの屋敷にて

しおりを挟む
 屋敷の中でゆっくりと話をすることになった。俺のことは後でもいいとして、とりあえずララとロラを紹介しなければならない。
「ここに連れてきたのは俺の情婦で楽士をしているララとロラだ。二人はこの屋敷にいることもあればいないこともある」
「畏まりました。後ほどここにいない者たちにも伝えておきます」
「頼む」
 ここでララとロラの二人を俺の寝室で休ませることにした。やっぱり初めて空を飛ぶというのは精神的に疲れるようだ。俺の寝室にしたのもすぐに抱くためじゃない。今のところ俺の部屋しか決まっていないからだ。フラフラしている二人を無理やり抱くほど俺は性格が悪いわけじゃない。

 まずは使用人の把握か。
「エルネストにはここで働く期限などはあるのか?」
「いえ、特には。旦那様が新しく執事ブティエをお雇いになれば、そこで終わりということになっております。また王都に戻って財務省で働くことになっております」
「ああ、財務省か」
「はい。税のことなどもありますので」
 現ラヴァル公爵領、元ルニエ子爵領。領地はそれなりに広い。広いということは町も村も数が多い。そうなると税を集めるのもそれなりに大変な作業になるということだ。役人を派遣して農地の広さを調べ、一定の基準を超えないように指導する。以前はそうだった。そのあたりは少し変えようと思う。そして変えるとなれば忙しくなるはずだ。
「ちなみに他の町ではなくここに来た理由は何かあるのか?」
「私はこのエウロードの生まれでございます。かつて実家は商売をしておりましたので、この町にはある程度詳しい自信がございます。どうやらそれで選ばれたようです。他の町の代官代理も、できる限りその地域で生まれ育った者が選ばれたようです」
「そうか。それなら今後は俺に雇われてくれ。家令スチュワードを任せたい。俺には領地経営の知識は全くない。金勘定が得意なら全面的に任せる」
「ありがとうございます。全身全霊を持ってお仕えいたします」
 ダヴィドは領地経営については未経験らしい。基本的には主人の側に仕える従者だったそうだ。王宮では使用人のまとめ役の一人として働いていた。

「ちなみに使用人は何人残っているんだ?」
「私も含めて総勢で一八人になります。これは御者や馬番、門番なども含めてでございます」
「一八人か。それでは足りないな?」
「下働きはおりますので、どうにか屋敷は維持できております。ですが今後旦那様にお客様がある場合など、こちらでの社交で困ることが多くなるかと思われます。御者がおりませんし、そして奥様方のお世話をする侍女は一人もおりません」
 エルネストの下に荷運びが二人、馬番が二人(夫婦)、門番が五人、メイド長が一人、メイドが七人。これで全部。
「料理人や菓子職人パティシエなどの厨房関係の者がおりません」
 子爵と一緒にクロだと見なされた上級使用人がゴッソリといなくなったんだろう。残ったのはシロの下級使用人ばかり。
「先に雇っておくことも考えましたが、旦那様の伝手もあるかと思い、一人も新しく雇っておりません」
「そうだな。一応心当たりはある」
 料理人はオーブリーかジスランのどちらか、あるいはキッチンメイドのロズリーヌを連れてきてもいいか。かなり腕を上げたと聞いた。下働きではもったいないとオーブリーが言っていた。菓子職人パティシエはジョアキムか、職を変えたセザールか。セザールもなかなかのものだ。
 連れてくるんじゃなくてこっちで雇うのもありだけどな。でも王都で使用人を余らせるのもなあ。年の半分以上は領地の方にいる。それにメイド一人あたり月に中銀貨二枚、日本円ならザックリと一〇〇万円くらいだ。執事や料理長などの上級使用人になるとその二倍から三倍。そして住み込みだからメイドは衣食住、上級使用人も職住には金がかからない。全部こちら持ち。
 メイドに比べて執事が安く思えるかもしれないけど、これはというやつで、に価値があるからだ。だから給料そのものはそこまで高くはない。でも何々家の料理長だったという肩書きは次の仕事を探す時に有効だし、独立して店を開くときには宣伝になる。「パリの三つ星レストランで修業した」ってのと同じだ。
 それ以外にも働きぶりを褒めて何かを与えることがある。
 上級使用人たちは俺の服を作る時に一緒に採寸して仕立てさせた。デザイン的には貴族服と違って大人しいけど、質としては最高級品になる。
 女性の使用人たちも同じで、やっぱり妻たちのドレスを作るのに合わせて大人しめのデザインで作らせる。その他にもアクセサリーを妻たちから与えさせる。
 男性か女性化に関係なく、給料だけではなく褒め言葉と一緒に物を与えることで、きちんと働きぶりを見て評価していることを伝えるわけだ。そうすれば真面目に働く。鼻にトウガラシを詰められるのは……評価が下がるな、一応は。
 王都の方には男女合わせて下働きだけで五〇人以上いる。さらにダヴィドたち上級使用人もいるから、人件費だけで年に中金貨が何枚も飛んでいく。日本円で一億は軽く超える。まさかあの屋敷を処分するわけにもいかないだろう。空き家にすることもできないし、不在の間はダヴィドに任せることになる。使用人はある程度こっちに連れてくる方がいいだろうな。
「王都にあるルニエ子爵の屋敷の方で残った使用人はいないのか?」
 もちろん王都にも屋敷がある。そこまで大きくないはずだけど、管理する使用人はいるはずだ。社交前だったとはいえ、誰もいないってことはないだろう。
「そちらの方は……」
「やっぱり問題ありか?」
「はい。領地で領民から金を巻き上げていたわけですので……」
「ああ、王都で派手に使っていたわけか。それなら全員クロだったんだな?」
「詳しくは聞いておりませんが、おそらくそうでしょう。もし王都のルニエ子爵邸にいた者が訪ねて来た場合は絶対に信用せずに捕縛しろと宰相閣下から厳命されております」
「よっぽどだったんだな」
 それならそちらで残った使用人を雇うのはナシだ。そうなると……異空間を使った移動方法があるわけだから、ある程度は融通するしかないな。王都の屋敷はダヴィドとブランシュ、それと新しく家政婦長になるセリア、領地の方はエルネストとメイド長に任せ、それ以外は二つの屋敷を行ったり来たりして管理させる。社交の時期は王都、それ以外はエウロードの方を優先させる。ある程度は融通しないと無駄だけが増える。一度ダヴィドとエルネストを交えて話し合いをした方がいいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...