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1話
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会場の外にあるカップリング専用の部屋。ここではカップリング後のお互いの信頼関係を育む場として使われている。しかし、新と青年は部屋の端と端に座りお互い話そうとしない。
沈黙が続く。青年はカップル成立した景品として貰ったYES・NO枕をむぎゅむぎゅと握っている。
どよーんとした空気。新は青年に目を向けた。
(全然匂いしなかったけど、この子もオメガってことだよな)
オメガといえば、アルファを誘う甘いフェロモンがする。運命のオメガのフェロモンは、一度匂いを嗅いだだけでアルファの理性を壊し、ラット状態にさせるほどの威力があるらしい。新は、バレない様にすんすんと匂いを嗅ぐが、柔軟剤のいい匂いはするがオメガ特有の甘い匂いなんて全くしない。
相性100%とか胡散臭いことを言われたが、AIの誤作動なんじゃないかと思った。それに、どうせ番になるなら、こんな身長の高いムスッとした無愛想な男よりも、可憐で花が咲く様に笑う可愛らしいオメガがいい。
新は心の中でため息を吐いた。
新の視線に気付いた青年は、目を軽く細めムスッとした顔で睨みつけた。
「なに?」
「いや…これからどうするのかなーって思って……」
「どうもしない」
「ですよね~」
気まずい空気の中、どうしたものかと小さくため息を吐く。運命の番を探していたが、まさかそれがこんな青年で、しかもかなり嫌われている。自分のしでかしたことではあるが、まさか彼が運命のオメガだとは思わなかった。知っていたらもっと優しくしたのに、と新は少しばかり自分の行動を後悔した。
「ちょっとだけ聞いてもいい?」
「なに?」
「君、オメガなんだよね?」
「そうだけど」
「なんでオメガなのにフェロモンの匂いしないの?」
そう聞くと青年はさらにムスッとした。
「なんで言わないといけないんだよ。そういうところがデリカシーがないって言ってんの」
「一応、番になるわけだし……」
新はハハハ…と愛想笑いをする。これ以上、嫌われてはいけない。そう思い、精一杯の作り笑顔を見せる。
「ならないよ」
「え?」
「俺、一生誰とも番になる気なんてないから」
予想外の返答に新は無理矢理上げていた口角をぴくつかせた。
青年は立ち上がると、YES・NO枕を新に手渡した。
「他の人と使ってよ。じゃあ、俺はバイトに戻るから」
バタンっと音を当ててドアが閉まった。
青年が出て行ったドアを見つめながら、数回ぱちぱちと瞬きをする。
今、青年はなんと言った? 番う気がない?
運命の番と出会ったらお互い惹かれあって恋愛するって本に書いてあったハズなのに、一方的にフラれてしまった。
どうして? なぜ? WHY?
今まで必死に運命のオメガを探してきたというのに、こんな結末には納得がいかない。
新は八つ当たりするように軽く枕を殴った。
沈黙が続く。青年はカップル成立した景品として貰ったYES・NO枕をむぎゅむぎゅと握っている。
どよーんとした空気。新は青年に目を向けた。
(全然匂いしなかったけど、この子もオメガってことだよな)
オメガといえば、アルファを誘う甘いフェロモンがする。運命のオメガのフェロモンは、一度匂いを嗅いだだけでアルファの理性を壊し、ラット状態にさせるほどの威力があるらしい。新は、バレない様にすんすんと匂いを嗅ぐが、柔軟剤のいい匂いはするがオメガ特有の甘い匂いなんて全くしない。
相性100%とか胡散臭いことを言われたが、AIの誤作動なんじゃないかと思った。それに、どうせ番になるなら、こんな身長の高いムスッとした無愛想な男よりも、可憐で花が咲く様に笑う可愛らしいオメガがいい。
新は心の中でため息を吐いた。
新の視線に気付いた青年は、目を軽く細めムスッとした顔で睨みつけた。
「なに?」
「いや…これからどうするのかなーって思って……」
「どうもしない」
「ですよね~」
気まずい空気の中、どうしたものかと小さくため息を吐く。運命の番を探していたが、まさかそれがこんな青年で、しかもかなり嫌われている。自分のしでかしたことではあるが、まさか彼が運命のオメガだとは思わなかった。知っていたらもっと優しくしたのに、と新は少しばかり自分の行動を後悔した。
「ちょっとだけ聞いてもいい?」
「なに?」
「君、オメガなんだよね?」
「そうだけど」
「なんでオメガなのにフェロモンの匂いしないの?」
そう聞くと青年はさらにムスッとした。
「なんで言わないといけないんだよ。そういうところがデリカシーがないって言ってんの」
「一応、番になるわけだし……」
新はハハハ…と愛想笑いをする。これ以上、嫌われてはいけない。そう思い、精一杯の作り笑顔を見せる。
「ならないよ」
「え?」
「俺、一生誰とも番になる気なんてないから」
予想外の返答に新は無理矢理上げていた口角をぴくつかせた。
青年は立ち上がると、YES・NO枕を新に手渡した。
「他の人と使ってよ。じゃあ、俺はバイトに戻るから」
バタンっと音を当ててドアが閉まった。
青年が出て行ったドアを見つめながら、数回ぱちぱちと瞬きをする。
今、青年はなんと言った? 番う気がない?
運命の番と出会ったらお互い惹かれあって恋愛するって本に書いてあったハズなのに、一方的にフラれてしまった。
どうして? なぜ? WHY?
今まで必死に運命のオメガを探してきたというのに、こんな結末には納得がいかない。
新は八つ当たりするように軽く枕を殴った。
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