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第2章・富国強兵基礎編
25話 静かなる侵略、織田の三河工作
しおりを挟む1550年10月
信長は那古野城の密室で、滝川一益と前田慶次郎に、三河国を今川から離反させる策謀を語っていた。
「一益、慶次郎。三河の松平家は、今川の支配下に甘んじているが、心底では今川を憎んでおる。特に酒井忠次と石川親子は、亡き広忠公への忠義を忘れていない」
「…殿は彼らに、松平家再興の希望を持たせると?」
滝川一益が信長の真意を問う。
「ああ、武力で今川を滅ぼすのでは無い。松平衆の心を動かし、彼らの手で今川を追い出させる。そこで甲賀出身二人の力が必要となる」
信長の言葉に、滝川一益は頷く。前田慶次郎は、興味深そうに信長を見つめていた。
「慶次郎、忍びの術は身についているか?」
「はっ!最も得意な得物は槍ですが、忍びの基礎は全て会得しております。」
その夜から滝川一益と前田慶次郎は、三河の地に潜入。一益は共闘を承諾した服部半蔵が、既に繋ぎを付けていた、松平家の石川康正・石川数正親子と酒井忠次に接触した。
信長からの書状と、伊豆で取れた潤沢な金を彼らに渡す一益。
「これは織田信長様からの同盟の証に御座います。我が主は、亡き広忠公との約束を忘れてはおりませぬ。どうぞ書状をお読み下さい。」
(織田信長は、今川の圧政から三河を解放するため、松平竹千代を岡崎城主に据える。だが松平家の忠臣たちの助けがなければ、大業は成し得ぬ)
「信長様が…そのようなことを…」
信長からの書状を確認した石川親子と酒井。
熱い思いに心を揺さぶられる。
「主は、三河を再興させたい故に、動いたのです。新たに直臣となった甲賀の望月出雲守・配下の忍び衆を大量に三河国に潜入させ、岡崎城代・山田新右衛門の動向を監視しております」
石川父「そこまでの助力を頂き立ち上がらなければ、三河衆の名が廃る。半蔵!居るか?」
「はい」
音も無く天井から飛び降りてくる服部半蔵。
「岡崎城の監視の目がある故、儂ら三人は表立って動けぬ。服部党で本多・大久保・鳥居・大須賀等に繋ぎを頼む」
「お任せを」
一方、前田慶次郎は甲賀忍者の頭領、望月出雲守と連携を取り、甲賀忍軍と今川家・岡崎城の城代、山田新右衛門の動向を監視する。
ある日の夜
山田城代は100人程の護衛を引き連れ岡崎城下町の料亭で、馴染みの芸者衆と宴に興じていた。
「コイツ馬鹿なのか?駿河湾に織田の戦艦が居座り、三河にも多数の松平家臣が健在なのに、普通城下町で飲むか?」
呆れる前田慶次郎
「100人の護衛で安心してるんだろ。暗殺して下さいと言ってる様なもんだがな(笑)」
滝川一益も苦笑いだ。
望月家忍び
「山田のお気に入りの娘は当家の、くノ一(女忍者)。下男や料理人等に紛れて、20人以上の忍軍が料亭内にいます」
服部半蔵
「石川様、酒井様の一族郎党を筆頭に、間も無く三河衆500名が到着!床下天井にも伊賀者が50人潜んでいる。現場指揮を取ってくる故、外の囲みは任せた。御免!」
小一時間ほどで店を完全包囲した三河衆・甲賀・伊賀者
「そろそろ酒と料理に仕込んだ、遅効性痺れ薬が効いてくる頃合いだ。雪崩込みますぞ、石川殿合図を。」
滝川一益に促され全員で踏み込む。
だが既に潜入していた甲賀忍軍が、座敷にいる今川武将10人に縄を打っていた。
本日のメインディッシュ山田新右衛門城代。唇が痺れて麻痺状態、だらしなくヨダレを垂れ流している。
立ち上がろうと必死だが、身体中が痺れ、それどころでは無いようだ。
その側には、美人芸者が満面の笑みで左手に持つ扇子を開閉していた。
前田慶次郎「望月千代女か…相変わらず手際が良いオナゴだな…」
山田の刀を右手に抜き身で持ち、剣先を山田の背中に添えている。そのまま刺せば心臓がひと突きの位置だ。
「あら慶次!貴方また背が伸びたの?俊敏さだけは失なわない様に、足腰ちゃんと鍛えるんだよ(笑)」
「…ああ鍛練だけは欠かしてない。それより山田城代は今川義元との交渉に使う大事な人質だ。間違っても刺すなよ(笑)」
「ええ~どうしよっかな~??この助平じじい。さっきお尻を触られたし手も握られた。1回だけ心臓刺して良い?」
「…ダメに決まってるだろ…1回じゃなく半分ならいいぞ(笑)」
「半分?じゃあ背中から、ゆ~~~っくり心臓に到達するまで刀を入れようかな(笑)」
「や、やへれふれ」
(や、止めてくれ)
ブルブルブルブル必死に首を横に振る山田城代。
言葉は上手く発生出来ないが、全身痺れていても耳は聞こえる……
二人の恐ろしい会話に汗だくである(笑)
料亭の庭と両隣の部屋で
美味い料理に舌鼓を打っていた、100人の護衛集団。
「かーーー緩みきってるな!護衛が酒かっ喰らって…ザマアねえや(笑)」
服部半蔵も呆れ顔
何故ならまともに立っているのは5人もいない。ほぼ全員、痙攣していた。大酒を飲み騒いでいたのだ。
今川城代、山田新右衛門捕縛!
岡崎城、松平家臣団に占拠される!
この大事件は三河の豪族達に衝撃を与えた。
この裏工作による岡崎城奪取。信長は尾張兵士を1人も失う事なく、松平の本拠地岡崎城から、今川兵士を追い出すことに成功した。
この成功は
信長の天下統一への道が武力だけではなく、謀略と知略によっても切り開かれることを、日ノ本中に証明したのである。
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