45 / 48
第2章・富国強兵基礎編
44 大晦日の那古野城、父と息子 語り合う
まさかの生母・土田御前が実の息子を刺した件は、口止めも間に合わず、あっという間に織田家中へ広がった。
しかも刺された信長が煙と共に、その場から忽然と消え去ったと言うのだ!
「神隠しなのか…?三郎は六年前、突如鎌倉殿から御告げがあったと言うていたが……よもや鎌倉殿が避難させた?…いかんな…儂も動揺している…落ち着くのだ!」
当主・信秀は1年間の反省点を話し合う、大事な年末の納会を中止してまで、事態の収拾に当たり混乱を静めていた。
◆□◆
1550年12月31日 那古野城
12月24日の末森城の惨劇から1週間。行方不明となっていた織田信長が、濃姫と共に姿を表した。
事件の翌日25日。第六天魔王ハウスへ信長に収容された濃姫。信長の失踪は鎌倉殿による神隠しであると…明智光秀と3人口裏合わせをした。
「心配御無用です。殿は源頼朝公、すなわち鎌倉殿に守護されているお方!大晦日に元気な姿で帰って来ますので、皆は心一つにして御励みなされ。」
濃姫の言葉どおり、以前にも増して元気な姿で戻って来たのだ。
平手政秀「若!!わか~~~」
「泣くな爺!お主は遠江国主、駿河の政も行う、この儂の、織田信長の筆頭家老であるぞ!でんと構えておれ!」
「はっ!ははあ~~つっ!痛い」
まだ足の骨折が響いているようだw
「権六(柴田勝家)、末森城の様子は?」
「御前様は奥の居室にて外出禁止!幽閉されております。大殿からの沙汰は、信長様の行方が判明するまで保留との事にて」
「うむ無難な線だ。父上には昨夜、文を認め甲賀衆に届けさせておる。そろそろ御見えになるだろう。」
「はい、先ほど先触れの方が見えられました。後30分もすれば御到着かと存じます。」
「そうか夕餉には早いが一献差し上げたい。爺と二人同席しろ」
「はっ!!」
◆□◆
信長の父 織田信秀は護衛以外に二人の武将を伴い、那古野城に到着。
信長、平手、柴田を合わせ計六人で、那古野城内に建築した大浴場の湯船に浸かる。
「ふぅ~~これは最高だな。大量のお湯に体を浸けると、疲れが取れていく…極楽だ…」
信秀は広々とした湯船で両足を伸ばし、リラックスムード全開。
刺された左腕を包帯で巻いた信長は、湯船の上に左腕を出し、半身浴スタイルで濡れない様にしていた。
新品の畳を敷いた掘り炬燵の部屋で、那古野織田家の得意料理と極上の酒に舌鼓を打つ。
森(三左衛門)可成(27歳)
「このビールなるもの喉越しが癖になります。」
佐久間(右衛門)信盛(22歳)
「噂の澄んだ酒…真冬なのに冷酒…某もうこれ以外の酒は飲めませぬ…」
「鰻重のタレも良いが、酒の肴は白焼きと言うたか?塩でも美味いし山葵醤油が極上だ」
父・信秀も満足そうだ。
その後も腕利きの料理人達が、多種多様な料理(信長レシピ)で織田家当主をもてなした。
◆□◆
この時代では想像もつかない、特上な料理と酒で満足した信秀達であったが、場所を評定の間へ移し今日の本題へ入る。
「まずは信長、森 可成と佐久間信盛である。両名とも今後、織田家を背負っていく才覚を持っておる。遠江・駿河で家臣として存分に使ってくれ」
「父上。織田家の貴重な管理能力に優れた人材を…助かります」
改めて公式な挨拶をお互いに交わし、信秀から人払いの命が出て親子二人きりとなった。
「…あれ以来一言も発せぬ…儂も二度顔を出したが、生きてるか死んでるか分からぬ表情であった…本来であれば斬首か磔であるが、当事者である三郎の意見が聞きたくてな。」
「親父殿、これ以上家族が家族を殺めるのは止めるべきです。世間の噂も2ヶ月もすれば落ち着く。春になれば周辺諸国の動きも見られ、母上の事件どころでは無くなるでしょう。」
「良いのか…お前の心臓を狙ったんだぞ…」
「ですが母親です…この世に1人しか居ません。それに某が信行の首を落としたのは相違無い事。ここで母上を処刑すれば新たな恨みが生まれるだけ…連鎖はここで断ち切りたく。」
「三郎………あい分かった。幽閉場所も新たに用意しよう、絶対に鉢合わせにはならん。」
「はい。宜しくお願いします。」
「うむ。それと話は変わるが、将軍家の事だ。」
「はい。今川家は足利一門でしたね。」
「ああ、年明け何だかんだと文が来るであろうな。尾張守護は斯波家で幕府の三管領の一つ…」
「確か遠江も今川に横領されていたのでしたな。どうでしょう?その辺をつついて上手く傀儡政権にしては?」
「ほお、何か上手い策がありそうだな…信長(笑)」
「まともな武力だけで戦うのは手っ取り早いですが、どうしても負傷者が多く出ます。搦手を使い犠牲者が減れば、労働力を減らさずに済むので(笑)」
「良かろう任せる。都から何やら言うてきたら直ぐに報せよう。」
「はっ!!大晦日ですぞ親父殿、飲み直しましょう。今宵は森等と一緒に泊まって下さい。」
「ははは16歳なのに酒豪だな三郎。では言葉に甘えるか」
父と息子
織田仁誠が戦国の世に来て、初めての二人酒でした。
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~
遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。
パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。
アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
国虎の楽隠居への野望・十七ヶ国版
カバタ山
ファンタジー
信長以前の戦国時代の畿内。
そこでは「両細川の乱」と呼ばれる、細川京兆家を巡る同族の血で血を洗う争いが続いていた。
勝者は細川 氏綱か? それとも三好 長慶か?
いや、本当の勝者は陸の孤島とも言われる土佐国安芸の地に生を受けた現代からの転生者であった。
史実通りならば土佐の出来人、長宗我部 元親に踏み台とされる武将「安芸 国虎」。
運命に立ち向かわんと足掻いた結果、土佐は勿論西日本を席巻する勢力へと成り上がる。
もう一人の転生者、安田 親信がその偉業を裏から支えていた。
明日にも楽隠居をしたいと借金返済のために商いに精を出す安芸 国虎と、安芸 国虎に天下を取らせたいと暗躍する安田 親信。
結果、多くの人を巻き込み、人生を狂わせ、後へは引けない所へ引き摺られていく。
この話はそんな奇妙なコメディである。
設定はガバガバです。間違って書いている箇所もあるかも知れません。
特に序盤は有名武将は登場しません。
不定期更新。合間に書く作品なので更新は遅いです。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。