マジカルカシマ

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山奥の家へ

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 翌日、駐車場に現れた月曜くんは普通に男の人だった。顔が昨日と変わってないのは今日もメイクをしてるのか生まれつきかわいいのか俺には分からない。

 昨日と違う8人乗りの車で獅堂さんたちが来たのは、月曜くんが増えて犯人か浮草さんを連れて帰ることを考えてだろう。
 運転席に波路くん、助手席に獅堂さん、運転席の後ろに富士さん。助手席側の後部ドアが開くともう3列目に乗れる状態に座席が動かしてあった。

 月曜くんが助手席の窓をノックしようとしたら獅堂さんがさきに窓を下げた。
「どした?」
「話を聞きたいなら前に座るし、まだ信用されてないなら3列目に行くけど?」
 獅堂さんは迷わなかった。
「聞かせてもらえるか?」
 関西っぽいイントネーションで答えるってことはけっこう気を許してるのか。

 それを聞いて俺が車に乗り込んでお兄ちゃんが続く。月曜くんは自分でイスを戻して、富士さんに「どうも来海くるみです」と言って座った。

 富士さんが「富士です」というのに会釈してから俺に振り向く。
「そうだ。月曜のことだからなんも言ってないだろ。兄弟弟子だってことくらいは聞いてる?
 俺は修行時代に色々聞いてたから会えて嬉しいよ良ちゃん。昨日は挨拶もしないでごめんな」
「いえ」
 色々って何を聞いていたんだろう。

 お兄ちゃんが不機嫌そうに俺の肩に腕を回した。
「相変わらずなれなれしいですね」
「フレンドリーって言うんだよ。
 お前は相変わらず他人行儀だな」
「他人でしょう」
「一緒に暮らした兄弟弟子だろ」

 お兄ちゃんは左腕も前から俺の肩に回してきた。
「大丈夫ですよ。ただの共同生活です。僕が一緒に生きていきたいのは良ちゃんだけです」
 俺が反応するより先に胡桃くんが面白そうに笑った。
「全然妬かれてなくね?」

 マズイ流れになりそうだと思ったら獅堂さんの声が車内に響いた。
「おーい、何のためにそこに座ったんや?」
 富士さんも続ける。
「まずは胡桃さんが」
 胡桃くんが富士さんの口から15センチくらいの所で人差し指を立てた。
「いま木の実のつもりで言っただろ。俺は海に来ると書いて来海だ。苗字か名前かは秘密な?」
「あ、ああ、すまない。
 来海さんが作った元々の能力を正確に教えていただけますか?」
「お母さんからりのあちゃんとマジカへ生気の移動、りのあちゃんのお母さんを自分のそばに呼ぶことと家に送ることのできる能力だ。
 あ、転院したのはいいんだけどさ、家って引っ越した?
 気が定着するまでは元の家に行っちゃうかも」

 それでか!

 富士さんは確認済みだった。
「退去したマンションへの不法侵入で訴えられて拘置所にいる。
 昨日会ってみたら容疑を認めつつも手段は憶えてないの一点張り。人形の名前に反応したから2人を呼んで面会したが、それでも話してくれなかった」

 来海くんが助手席のヘッドレストを掴んだ。
「得意の読み取りは?」
「拒絶された。りのあちゃんを責めるつもりはないって言ったけど信じてもらえんかった」
「ああ、医者とか刑事とかは緊張するし信用できないって言ってたな」

 ケーシー着てたのに全く警戒されなかった俺って……。いやいいんだよ。それが俺の目指してる医者の在り方だ。俺はこれでいいんだ。
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