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おだぬいくるみ
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マジ子ちゃんがせわしなく体の向きを変える。
「りのあ!
どこ? どこ?」
マジ子ちゃんは両手を目に当てた。
「りのあぁ、どこにいるの~?」
言い終わるかどうかというタイミングでマジ子ちゃんは消えた。ほぼ同時にそのドアが拳で4回叩かれて、ドアノブを持って開けようとしてるみたいにドアが小刻みに動く。
お兄ちゃんは冷静に俺のシャツを肩に戻した。
「月曜くんです」
「ええ!?」
お兄ちゃんが鍵を開けたのか、ドアが急に開いて「おあ!」って男の声。
入ってきた人は今までに見たことがない人だった。すごい。絶対男だって分かるのに美少女顔。フリフリのメイド服がメチャクチャ似合ってるのに不思議と男らしさを感じる。でも美少女なんだよ。なんだこの人。しかもお兄ちゃんと兄弟弟子ってことはこれで30前後なんだよな?
月曜くんは勢いよく入ってきた姿勢のまま怒鳴った。
「直接飛べれば間に合ったのに、なんで玄関までは許すなんて中途半端なことすんだよ!」
メイドさんは部屋を見回した。
「ってか防音の結界までしてんだ?」
「いつもはしてません」
「うちの子と戦うため?」
「いえ、その少し前から」
「なんで?」
「良ちゃんと」
「わああ!」
俺が慌ててお兄ちゃんの正面に立って口を押さえると、後ろから冷めた声がした。
「それはお邪魔しました」
体を動かしてるような声に振り向くと、靴を脱いで踵の部分に指を掛けて片手で持っていた。
「で、鹿島りのあはどこにいる?」
俺には意外だった言葉にお兄ちゃんは驚かず、予想通りみたいな言い方。
「把握してないんですか」
「いちいちその後どうなったかなんて把握してない。依頼主から相談があればアフターケアはするけどな。
今回は特別だ。契約相手がいなくなって暴走してるなら俺が責任取らないとだろ」
契約相手がいなくなった? って俺が思ったのが伝わったみたいに、お兄ちゃんが教えてくれる。
「あの人形は鹿島りのあを契約相手として作られたんです。名前が変わったことで宿主を見失い今は本来とは違う動きをしているということです。
たいていの日本人は生まれた時に真名を付けられ、日常で使っているのは1番強い通り名のようなもの。真名で契約したならともかく戸籍名での契約ならそれが変われば契約も適用されなくなります」
そういえば臍の緒の箱に長々と漢字が書かれた紙が入ってたな。お祖母ちゃんにこれは真名だから誰にも知られちゃダメって言われて、そもそも俺も憶えてない。
月曜くんは両手を腰に当てた。
「名前が変わったのか。親の再婚とか?
でもなんで俺のところへ帰って来ないで暴走したんだ?
しかも人間の方さえ探せなかった」
お兄ちゃんは月曜くんを敵と見てはいないみたいで、あっさり教えた。
「元夫さんから逃げるために色々しているせいでしょう。
それと人形は機能に疑問のあるマントと仮面をつけていました」
月曜くんは思い当たる物がないみたいな表情。
「マントと仮面?」
「黒い無地のマントです。無機質なような、何かの効果があるような」
機能に疑問のあるマントって耳を守れてないって意味だと思ってた。
月曜くんは考えが漏れてるみたいに呟いた。
「俺はそんなのつけてない……。
それで操られてる?」
「かもしれません」
月曜くんは小さく息を吐いた。
「で?
火曜はなんでりのあちゃんに関わってんだ?」
「僕の良ちゃんが巻き込まれているんです。
明日獅堂くんたちと君を倒しに行く予定でした」
「んげ、獅子吠!?
っていうかどこに?
いやまず獅子吠止めないと!」
月曜くんは、俺にはひとり言に見える会話を初めた。誰もいない場所に向かって誤解だとか俺も被害者だとか言っていた。あと獅堂さんからの呼び掛けに答えなかったのを面倒だったからとはっきり言いつつも謝っていた。
「りのあ!
どこ? どこ?」
マジ子ちゃんは両手を目に当てた。
「りのあぁ、どこにいるの~?」
言い終わるかどうかというタイミングでマジ子ちゃんは消えた。ほぼ同時にそのドアが拳で4回叩かれて、ドアノブを持って開けようとしてるみたいにドアが小刻みに動く。
お兄ちゃんは冷静に俺のシャツを肩に戻した。
「月曜くんです」
「ええ!?」
お兄ちゃんが鍵を開けたのか、ドアが急に開いて「おあ!」って男の声。
入ってきた人は今までに見たことがない人だった。すごい。絶対男だって分かるのに美少女顔。フリフリのメイド服がメチャクチャ似合ってるのに不思議と男らしさを感じる。でも美少女なんだよ。なんだこの人。しかもお兄ちゃんと兄弟弟子ってことはこれで30前後なんだよな?
月曜くんは勢いよく入ってきた姿勢のまま怒鳴った。
「直接飛べれば間に合ったのに、なんで玄関までは許すなんて中途半端なことすんだよ!」
メイドさんは部屋を見回した。
「ってか防音の結界までしてんだ?」
「いつもはしてません」
「うちの子と戦うため?」
「いえ、その少し前から」
「なんで?」
「良ちゃんと」
「わああ!」
俺が慌ててお兄ちゃんの正面に立って口を押さえると、後ろから冷めた声がした。
「それはお邪魔しました」
体を動かしてるような声に振り向くと、靴を脱いで踵の部分に指を掛けて片手で持っていた。
「で、鹿島りのあはどこにいる?」
俺には意外だった言葉にお兄ちゃんは驚かず、予想通りみたいな言い方。
「把握してないんですか」
「いちいちその後どうなったかなんて把握してない。依頼主から相談があればアフターケアはするけどな。
今回は特別だ。契約相手がいなくなって暴走してるなら俺が責任取らないとだろ」
契約相手がいなくなった? って俺が思ったのが伝わったみたいに、お兄ちゃんが教えてくれる。
「あの人形は鹿島りのあを契約相手として作られたんです。名前が変わったことで宿主を見失い今は本来とは違う動きをしているということです。
たいていの日本人は生まれた時に真名を付けられ、日常で使っているのは1番強い通り名のようなもの。真名で契約したならともかく戸籍名での契約ならそれが変われば契約も適用されなくなります」
そういえば臍の緒の箱に長々と漢字が書かれた紙が入ってたな。お祖母ちゃんにこれは真名だから誰にも知られちゃダメって言われて、そもそも俺も憶えてない。
月曜くんは両手を腰に当てた。
「名前が変わったのか。親の再婚とか?
でもなんで俺のところへ帰って来ないで暴走したんだ?
しかも人間の方さえ探せなかった」
お兄ちゃんは月曜くんを敵と見てはいないみたいで、あっさり教えた。
「元夫さんから逃げるために色々しているせいでしょう。
それと人形は機能に疑問のあるマントと仮面をつけていました」
月曜くんは思い当たる物がないみたいな表情。
「マントと仮面?」
「黒い無地のマントです。無機質なような、何かの効果があるような」
機能に疑問のあるマントって耳を守れてないって意味だと思ってた。
月曜くんは考えが漏れてるみたいに呟いた。
「俺はそんなのつけてない……。
それで操られてる?」
「かもしれません」
月曜くんは小さく息を吐いた。
「で?
火曜はなんでりのあちゃんに関わってんだ?」
「僕の良ちゃんが巻き込まれているんです。
明日獅堂くんたちと君を倒しに行く予定でした」
「んげ、獅子吠!?
っていうかどこに?
いやまず獅子吠止めないと!」
月曜くんは、俺にはひとり言に見える会話を初めた。誰もいない場所に向かって誤解だとか俺も被害者だとか言っていた。あと獅堂さんからの呼び掛けに答えなかったのを面倒だったからとはっきり言いつつも謝っていた。
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