白薔薇姫は愛に溺れる【完結】

ちゃむにい

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序章

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太陽と海の国、エルファーンと、1年の大半を雪に閉ざされるイシュラスで、世界は二分されていた。

私の祖国である白薔薇の国、アイリスは中立国だった。それなりに広い領土を持ち、エルファーンの庇護下にあったが、イシュラスと国境を接しており、いつ攻め込まれてもおかしくない状況だった。
だが長きに渡って、イシュラスはアイリスとの開戦に沈黙を守った。領土の大半が不毛の地であるアイリスとの開戦を避けたのは、戦略的に重要で無いからだろうと噂された。

そんな折、私は16歳の誕生日を迎えた。

祝いの席で、私はお母様に、ただならぬ雰囲気で、こう告げられた。

「エルファーン国王であるデルク様が、貴方をぜひに、とのことなのよ」

「私を、ですか……?」

結婚とは家と家との繋がりでもある。王族の子女として生を授かった時点で、自由恋愛が難しいことぐらい、分かっていた。
けれども、世界を二分するほどの大国の妻に、との申し出には正直驚いた。その話を跳ね返すだけの力など、無力な私には叶わない話だった。

こうして、私は不運にもエルファーン国王に見染められ、政略結婚で嫁ぐことになった。仕方なしに嫌々嫁いだのだが、結婚生活は、それなりに順調だった。

まず顔合わせの時に言われたのは、謝罪だった。

「今は、国内外のことで忙しくて、レティア、貴方の顔さえ見に行けないありさまだ。しかし急がねば、他の男に盗られてしまうのではないかと、気が焦ってしまって……申し訳なく思うよ……」

「そっ、そんな、頭を上げてください……!」

デルクはとても私のことを大事に扱ってくれて、まるで壊れやすい宝物であるかのように優しく扱ってくれた。
そうでなくとも忙しい時間を割いて私の相手をしてくれるというのに、微塵もそのようには感じさせなかった。

私がこの国に馴染むように、侍女を何人も付けてくれたり、毎回のように手土産を持参しては、気にかけてもらった。
まだ王妃として日が浅く、同伴できないことは寂しく思ったが、逢う日を心待ちにした。

「白薔薇姫と呼ばれているそうだね。その名に違わぬ、美しさだ。初めて見た日から、夢に見ない日はなかったよ。……君が、僕を愛してくれるまで、待つから……」

そして熱烈な愛の囁きに胸が高鳴った。デルクは、私を愛しているがゆえに、すぐに男女の関係になるのではなく、心の距離を縮めながら歩み寄ってくれた。
彼を愛すべき夫だと認めたくなかった、頑なだった蕾も、徐々に綻び始めていった。

私は、彼の優しさに惹かれていったのだ。けれどもそれは、胸を焦がすような恋愛とは程遠い感情だった。



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