1 / 25
序章
しおりを挟む
太陽と海の国、エルファーンと、1年の大半を雪に閉ざされるイシュラスで、世界は二分されていた。
私の祖国である白薔薇の国、アイリスは中立国だった。それなりに広い領土を持ち、エルファーンの庇護下にあったが、イシュラスと国境を接しており、いつ攻め込まれてもおかしくない状況だった。
だが長きに渡って、イシュラスはアイリスとの開戦に沈黙を守った。領土の大半が不毛の地であるアイリスとの開戦を避けたのは、戦略的に重要で無いからだろうと噂された。
そんな折、私は16歳の誕生日を迎えた。
祝いの席で、私はお母様に、ただならぬ雰囲気で、こう告げられた。
「エルファーン国王であるデルク様が、貴方をぜひに、とのことなのよ」
「私を、ですか……?」
結婚とは家と家との繋がりでもある。王族の子女として生を授かった時点で、自由恋愛が難しいことぐらい、分かっていた。
けれども、世界を二分するほどの大国の妻に、との申し出には正直驚いた。その話を跳ね返すだけの力など、無力な私には叶わない話だった。
こうして、私は不運にもエルファーン国王に見染められ、政略結婚で嫁ぐことになった。仕方なしに嫌々嫁いだのだが、結婚生活は、それなりに順調だった。
まず顔合わせの時に言われたのは、謝罪だった。
「今は、国内外のことで忙しくて、レティア、貴方の顔さえ見に行けないありさまだ。しかし急がねば、他の男に盗られてしまうのではないかと、気が焦ってしまって……申し訳なく思うよ……」
「そっ、そんな、頭を上げてください……!」
デルクはとても私のことを大事に扱ってくれて、まるで壊れやすい宝物であるかのように優しく扱ってくれた。
そうでなくとも忙しい時間を割いて私の相手をしてくれるというのに、微塵もそのようには感じさせなかった。
私がこの国に馴染むように、侍女を何人も付けてくれたり、毎回のように手土産を持参しては、気にかけてもらった。
まだ王妃として日が浅く、同伴できないことは寂しく思ったが、逢う日を心待ちにした。
「白薔薇姫と呼ばれているそうだね。その名に違わぬ、美しさだ。初めて見た日から、夢に見ない日はなかったよ。……君が、僕を愛してくれるまで、待つから……」
そして熱烈な愛の囁きに胸が高鳴った。デルクは、私を愛しているがゆえに、すぐに男女の関係になるのではなく、心の距離を縮めながら歩み寄ってくれた。
彼を愛すべき夫だと認めたくなかった、頑なだった蕾も、徐々に綻び始めていった。
私は、彼の優しさに惹かれていったのだ。けれどもそれは、胸を焦がすような恋愛とは程遠い感情だった。
私の祖国である白薔薇の国、アイリスは中立国だった。それなりに広い領土を持ち、エルファーンの庇護下にあったが、イシュラスと国境を接しており、いつ攻め込まれてもおかしくない状況だった。
だが長きに渡って、イシュラスはアイリスとの開戦に沈黙を守った。領土の大半が不毛の地であるアイリスとの開戦を避けたのは、戦略的に重要で無いからだろうと噂された。
そんな折、私は16歳の誕生日を迎えた。
祝いの席で、私はお母様に、ただならぬ雰囲気で、こう告げられた。
「エルファーン国王であるデルク様が、貴方をぜひに、とのことなのよ」
「私を、ですか……?」
結婚とは家と家との繋がりでもある。王族の子女として生を授かった時点で、自由恋愛が難しいことぐらい、分かっていた。
けれども、世界を二分するほどの大国の妻に、との申し出には正直驚いた。その話を跳ね返すだけの力など、無力な私には叶わない話だった。
こうして、私は不運にもエルファーン国王に見染められ、政略結婚で嫁ぐことになった。仕方なしに嫌々嫁いだのだが、結婚生活は、それなりに順調だった。
まず顔合わせの時に言われたのは、謝罪だった。
「今は、国内外のことで忙しくて、レティア、貴方の顔さえ見に行けないありさまだ。しかし急がねば、他の男に盗られてしまうのではないかと、気が焦ってしまって……申し訳なく思うよ……」
「そっ、そんな、頭を上げてください……!」
デルクはとても私のことを大事に扱ってくれて、まるで壊れやすい宝物であるかのように優しく扱ってくれた。
そうでなくとも忙しい時間を割いて私の相手をしてくれるというのに、微塵もそのようには感じさせなかった。
私がこの国に馴染むように、侍女を何人も付けてくれたり、毎回のように手土産を持参しては、気にかけてもらった。
まだ王妃として日が浅く、同伴できないことは寂しく思ったが、逢う日を心待ちにした。
「白薔薇姫と呼ばれているそうだね。その名に違わぬ、美しさだ。初めて見た日から、夢に見ない日はなかったよ。……君が、僕を愛してくれるまで、待つから……」
そして熱烈な愛の囁きに胸が高鳴った。デルクは、私を愛しているがゆえに、すぐに男女の関係になるのではなく、心の距離を縮めながら歩み寄ってくれた。
彼を愛すべき夫だと認めたくなかった、頑なだった蕾も、徐々に綻び始めていった。
私は、彼の優しさに惹かれていったのだ。けれどもそれは、胸を焦がすような恋愛とは程遠い感情だった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる