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しおりを挟むエルファーンは太陽と海の国である。
私とデルクが居城を構えているのは、伝説上では神々の宴が催されたとされる、古城ヴィヴィトリーだ。
その城は岸壁上にあり、窓の外には透き通った紺碧の海が広がっている。水平線の彼方には、晴れた日にもなると孤島フィゲルを眺めることができた。
また時には、白く大きな海鷲が空を舞っていることもある。海鷲は国鳥として大切に保護されており、庭園にある背の高い木の上で毎年巣作りをするらしい。
巣から転げ落ちた雛鳥をデルクに見せてもらったことがあるが、その鋭い嘴と爪が怖くて近づくことさえできなかった。
「ん…………」
朝日が眩しい。
私は今、浅い眠りの淵にいた。優しいまどろみの中、岸壁にぶつかる波飛沫の音と、海鳥たちの鳴き声が、聞こえた。
甲高い声は雛鳥が親鳥に餌を求める声だろうか。甘えるような鳴き声に、私は心地良い起床を迎えることができた。
「……、……」
大陸南方にあるこの地域は高温多湿で、天候が安定しているため、ガラスの窓は全て開け放している。銀の糸で花柄に刺繍された若草色のカーテンと、柔らかくて目の細かい白色のレースが風に靡いて、揺れる。窓から流れ込んでくる海風を吸い込むと、仄かに磯の香りがした。
私は、その風を胸いっぱいに吸い込んだ。アイリスでは海を見たことが無かったので、その偉大なまでの自然に私は魅せられいた。
おそらくは、ずっと見ていても飽きることはないだろう。海は、その表情を目まぐるしく変えた。
朝日を浴びる海を見たくて、起きたかったけれども、夜遅くまでデルクに体を貪られ、激しい情事に体が悲鳴を上げていた。
とてもではないが起き上がるのが億劫で、もう少しだけベットの中にいたくて、もぞもぞと身動きしていると、キラキラと光る金色の髪が目に入る。
どうやら、まだデルクは寝ているらしい。そのことが以外で、じっとその顔を見ていたが、起きる気配はない。
デルクは、規則正しく胸を上下させていた。
私もデルクも、似たような時間帯に目を覚ます。けれども大抵、デルクのほうが先だ。私が起きるまで、寝顔を見るのが楽しみなのだと言う。
なんて珍しいことだろう。どんなに政務で疲れている時でも、彼は私よりも早起きだった。彼の寝顔なんて見たくても見ることができなかった。
その上、あまりにも私が起きるのが遅いと、デルクは早く起きてと言わんばかりに、何時も口づけたり抱きしめたりするのだ。
時には愛撫がエスカレートして、そのまま挿入されたりする。
さすがにそこまでされると、いくら深い眠りにあっても目を覚ますけれども、デルクのギラギラとした目に弱くて、そのまま流されて朝から行為をしてしまうこともある。
私は彼の温もりが好きだ。どんなに気分が乗らない日でも、最後には何時も気持ち良くて喘いでしまう。うっかり昨夜遅くまでしていた夜の営みが頭に浮かんで、妙に気恥かしくなっていると、デルクの瞼がうっすらと開き、視線がぶつかった。
「おはよう、レティア」
「おはようございます、デルク……」
「今日も……、レティアは素敵だね……」
どこか夢心地な声色で呟くと、彼は私を上に抱き上げると優しく抱擁をした。うっすらと汗ばんだ肌と肌が密着して、その途端に自分が裸だということを意識してしまう。
この体のすべてを、彼は知り尽くしている。それとなく視線を外そうとすると、デルクは私の頬に口づけを落とした。
柔らかな感触に気をとられていたら頭を掴まれ、正面に向けられた。
そしてデルクは、そっと額と額を合わせた。
「……僕は……君のものだ……」
まるで夜の会話の続きのようだ。彼の囁きに、さっと頬が薔薇色に染まるのを自覚した。私は話題を他のことに移そうと、他愛のない雑談をしようとした。けれども、デルクは私の意図はお構いなしに、甘い雰囲気にしたがった。
そのため、よりいっそう気恥かしくなる。彼の言葉を封じたくて、優しく唇に触れるだけの口づけをすると、彼はそれを舌を絡めるような長くて深いものに変えた。
「んッ……ぅ」
私の大好きな瞳が、欲情に濡れている。
疲れているけれども、与えられる快感にゾクゾクとする。体はすぐに快楽に反応を示して、燃え上がる。少しでも快感を得ようと、体の限界も顧みないで、欲張ろうとする。デルクに指を埋められる。けれどもそこはすでにとろとろで、彼は嬉しそうに笑った。
「もう、こんなになっているよ……僕の可愛い、レティア……」
「だ、ダメ……もう侍女が来ちゃう……」
理性を振り絞って、彼の腕を振りほどこうとしても、快楽のあまり力が入らないし、体はくったりと彼の体に密着したままだった。
だから最後の手段として、甘えるように上目遣いで懇願したが、それは逆効果だったらしい。
「そうだね。何時ものような大きな声で喘いでたら、扉の向こうでも聞こえちゃってるかも、ね……?」
「やっ、デルク、ふぁっ……あぁ……!」
昨夜、幾度となく揺さぶられた体は、さほど抵抗なく彼のものを沈め、私は快楽の渦に巻き込まれていった。
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