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16.5 【幕間】
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『あの子は、どこにいったの?』
『あの子は、どこかにいったよ』
それは太陽が月に隠れる日だった。小人たちは風にまぎれるように何かを囁いていた。たくさんの小魚がいる澄んだ小川を覗いたり、葉と葉の隙間を探したりした。
小人たちが川を渡ろうとすると、川の流れはとまり、大魚は小人の気配を感じて飛び跳ねた。小人たちの足跡は小さな波紋となって水面を揺らした。
けれども『あの子』は、見つからない。
『きっと、どこかにいるよ』
『そうだね』
そこで、小人たちは『あの子』が好きそうな小高い丘の上にある大きな木に登って、周囲を見渡そうとした。小人に驚いた木々は風も吹いていないのに枝をザワザワと震わせて、何かの前触れかと礼拝客を驚かせた。
けれども、どんなに目を凝らしても、葉の裏にいる太った毛虫を見つけたぐらいで、『あの子』の姿はなかった。
ほとほと困り果てた小人たちは、森にいる生き物たちに喋りかけた。
『猪さん。あの子は、見なかった?』
『わからないなあ』
『わからないねぇ』
木の実を食べにきた猪の親子に『あの子』が今どこにいるのかと所在を尋ねたが、これといって情報は得られなかった。それでもあきらめずに、森の知り合いに話しかけるも、皆口々に知らないと言う。
もう日没も間近だ。
夜になってしまえば、探すことが出来なくなってしまう。意気消沈した小人たちは、女神様を祀る御神木に集まった。
『あの子は、いなかったよ』
『あの子は、どこにいったんだろう?』
小人たちは仲間を大事にする。
日中は好きな処に行き遊ぶ小人たちも、太陽が西の空に沈み、夜も更けてくると仲間と一緒に仮眠をとることが多い。
だから、誰か居ないと異変として受け止める。探して回ると、木の根っこで眠ってしまっていたりして仮死状態になっている仲間も多かった。御神木の力が衰えてきている近頃では仕方のないことではあるが、1人、また1人と仲間の数が少なくなっていくのは、とても寂しいことだった。
ただし、仲間内でも力に余力がある『あの子』が、そういったことになるには、だいぶ先の話になる。
『あの子は、なにをしにいったの?』
『あの子は、なにをしにいったんだろう』
小人たちは不思議でならなかった。
この御神木がある丘から離れる理由などない。このアイリス国は貧乏ではあったが代々信仰心が篤く、小人たちにとっては貴重な隠れ家でもあった。土地を追われるほど、彼らにとっては怖いものはない。存在を保つことが出来なくなってしまうからだ。
それなのに、『あの子』はまるで風のように、どこかにいってしまう。
人が火を手にする前は、この大地にはあふれるほどたくさんの小人がいた。けれども住処を追われ、もう数えるほどしかないない。
そのためか、小人たちは年々衰えていっていた。
だから力の陰りが見えない『あの子』は、大事な仲間だった。もしもの時は、女神様の御神木を任せることが出来ると期待していた。
けれども、過去に何度も『あの子』は騒動を起こしている。自分たちの手には負えなくなっていると感じ始めていた。
『小鳥さん。あの子を見なかった?』
『つめたい雪の上を歩いているところを見かけたわ』
『イシュラスかな?』
『イシュラスみたいだね』
『そんなところへ何をしにいったのだろう?』
小人たちは危惧していた。
以前も『あの子』はエルファーン国の王子の魂と己の魂を交換するという自然の摂理に反した恐ろしいことをした。王子の失われた時間は戻らない。『あの子』は謝罪した。本来なら謝罪などしても、女神様に断罪されるべきことだった。
けれど『あの子』は小人たちにとって、数十年ぶりに生まれた小人の宝だった。
最後の希望。
最後の子供。
『あの子』は、もうしないと涙ながらに言った。
だから、また仲間の一員として見守ることにした。なにしろ、『あの子』は悪戯好きではあったが、とても仲間想いで、優しい子だったからだ。
みんな、『あの子』が大好きだった。
そうして『あの子』の本意に気がつかなかった小人たちはエルファーン国の王子の魂と『あの子』の魂を戻すことに力を使い果たした。
もはや『あの子』を探す力さえ残されていなかった。できるのは、『あの子』が『人間』に迷惑をかけずに、戻ってきますようにと女神様に祈ることだけだった。
『あの子は、どこかにいったよ』
それは太陽が月に隠れる日だった。小人たちは風にまぎれるように何かを囁いていた。たくさんの小魚がいる澄んだ小川を覗いたり、葉と葉の隙間を探したりした。
小人たちが川を渡ろうとすると、川の流れはとまり、大魚は小人の気配を感じて飛び跳ねた。小人たちの足跡は小さな波紋となって水面を揺らした。
けれども『あの子』は、見つからない。
『きっと、どこかにいるよ』
『そうだね』
そこで、小人たちは『あの子』が好きそうな小高い丘の上にある大きな木に登って、周囲を見渡そうとした。小人に驚いた木々は風も吹いていないのに枝をザワザワと震わせて、何かの前触れかと礼拝客を驚かせた。
けれども、どんなに目を凝らしても、葉の裏にいる太った毛虫を見つけたぐらいで、『あの子』の姿はなかった。
ほとほと困り果てた小人たちは、森にいる生き物たちに喋りかけた。
『猪さん。あの子は、見なかった?』
『わからないなあ』
『わからないねぇ』
木の実を食べにきた猪の親子に『あの子』が今どこにいるのかと所在を尋ねたが、これといって情報は得られなかった。それでもあきらめずに、森の知り合いに話しかけるも、皆口々に知らないと言う。
もう日没も間近だ。
夜になってしまえば、探すことが出来なくなってしまう。意気消沈した小人たちは、女神様を祀る御神木に集まった。
『あの子は、いなかったよ』
『あの子は、どこにいったんだろう?』
小人たちは仲間を大事にする。
日中は好きな処に行き遊ぶ小人たちも、太陽が西の空に沈み、夜も更けてくると仲間と一緒に仮眠をとることが多い。
だから、誰か居ないと異変として受け止める。探して回ると、木の根っこで眠ってしまっていたりして仮死状態になっている仲間も多かった。御神木の力が衰えてきている近頃では仕方のないことではあるが、1人、また1人と仲間の数が少なくなっていくのは、とても寂しいことだった。
ただし、仲間内でも力に余力がある『あの子』が、そういったことになるには、だいぶ先の話になる。
『あの子は、なにをしにいったの?』
『あの子は、なにをしにいったんだろう』
小人たちは不思議でならなかった。
この御神木がある丘から離れる理由などない。このアイリス国は貧乏ではあったが代々信仰心が篤く、小人たちにとっては貴重な隠れ家でもあった。土地を追われるほど、彼らにとっては怖いものはない。存在を保つことが出来なくなってしまうからだ。
それなのに、『あの子』はまるで風のように、どこかにいってしまう。
人が火を手にする前は、この大地にはあふれるほどたくさんの小人がいた。けれども住処を追われ、もう数えるほどしかないない。
そのためか、小人たちは年々衰えていっていた。
だから力の陰りが見えない『あの子』は、大事な仲間だった。もしもの時は、女神様の御神木を任せることが出来ると期待していた。
けれども、過去に何度も『あの子』は騒動を起こしている。自分たちの手には負えなくなっていると感じ始めていた。
『小鳥さん。あの子を見なかった?』
『つめたい雪の上を歩いているところを見かけたわ』
『イシュラスかな?』
『イシュラスみたいだね』
『そんなところへ何をしにいったのだろう?』
小人たちは危惧していた。
以前も『あの子』はエルファーン国の王子の魂と己の魂を交換するという自然の摂理に反した恐ろしいことをした。王子の失われた時間は戻らない。『あの子』は謝罪した。本来なら謝罪などしても、女神様に断罪されるべきことだった。
けれど『あの子』は小人たちにとって、数十年ぶりに生まれた小人の宝だった。
最後の希望。
最後の子供。
『あの子』は、もうしないと涙ながらに言った。
だから、また仲間の一員として見守ることにした。なにしろ、『あの子』は悪戯好きではあったが、とても仲間想いで、優しい子だったからだ。
みんな、『あの子』が大好きだった。
そうして『あの子』の本意に気がつかなかった小人たちはエルファーン国の王子の魂と『あの子』の魂を戻すことに力を使い果たした。
もはや『あの子』を探す力さえ残されていなかった。できるのは、『あの子』が『人間』に迷惑をかけずに、戻ってきますようにと女神様に祈ることだけだった。
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