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「お金がない!」

ソフィーはテーブルの上に置いた全財産を見て、深いため息をつき、嘆いた。
全財産と言っても、安宿に泊まることも出来ない、はした金である。

だが、ソフィーにとっては、正真正銘、それが全財産だった。
換金できるものは何もなく、冒険者の命とも言うべき武器も防具も、とうに売り払ってしまった。

「このままじゃ、明日は野宿だ。どうしよう……」

ソフィーは金髪碧眼で、わりと見た目は可愛らしい少女だ。

結婚という逃げ道を考えたこともあったが、冒険者として成功するという夢をあきらめきれず、ずるずると日々を過ごしてしまった。

頼みの綱だった金策も失敗し、頼れる人もいない。路頭に迷いたくなければ、見ず知らずの男たちに体を売るしかなかったが、そんな度胸もなかった。

「お腹減った……昨日から、何も食べてない……」

爪に火を灯すような生活。ソフィーは冒険者の中でも最底辺の生活をしていた。

そんな崖っぷちにいたソフィーを、絶望の底に突き落とす情報が次々に飛び込んできた。

それは同じギルドに所属している女冒険者たちの結婚報告である。
彼女たちは冒険者として金を稼ぎ、名を上げ、結婚相手を見つけて、引退していった。

「同い年なのに、ここまで差がつくなんて……これも私のスキルが使えないからよ!」

生活費すら稼げないソフィーにとって、生活を立て直すことが最優先であり、結婚なんて夢のまた夢であった。

父や母のような魔法使いに憧れて冒険者になったが、ソフィーは魔法が使えず、弱い低級の魔物を召還し、使役することしか出来なかった。

しかもソフィーは、踏んだら潰れそうな弱いゴブリンしか召還できず、強化しても使い物にならなかった。

冒険者に頼んで、戦闘に参加させてもらい、経験値を積ませても進化せず、戦力にはならなかった。

仕方なく、召還したゴブリンを森に放ち、「お金になるようなものを拾ってきて」という指示を出し、その帰りを待つしかなかった。

たくさんのゴブリンを放っても、野良のゴブリンと間違われて冒険者に倒されてしまうため、ソフィーのところに戻ってくるゴブリンはごくわずかだった。

「……生きているだけでお金がかかるなんて、死ねってこと?」

お金が全てではないと言うけれども、お金があれば大抵のことが出来る。

その夜、ゴブリンが一匹だけソフィーの部屋に戻ってきた。

「何か売れる物あった!?」

しかし、ゴブリンが持ち帰った薬草は期待外れだった。

ソフィーは売り物にならないボロボロの薬草を持ち帰ったゴブリンに「頭悪いわね! 進化ぐらいしなさいよ!」と叫び、泣きながら寝た。
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