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第二章 男を誘う
17 再会
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若いベータ男性の丈とオメガの爽は、それなりに盛り上がった。互いに性を意識したような会話をしていたとこから、丈なら誘えるのではないだろうかと爽には思えてきた。
初対面で誘っているのをみかげにばれないように、丈の手をカウンターの下で握った。その反応は悪くない。丈は少し顔を赤らめたが、手を外されることがなかった。
「丈さん……俺、この後まだ時間があるんですが」
丈が赤い顔で応える。
「え、あ、俺もあるけど、じゃあ、もう一杯飲む? おごるよ」
「いえ、そうじゃなくて……二人きりになれる場所に、ってえええ!」
丈の後ろには、もう会うと思っていなかった男、ワンナイトの相手だった隆二が立っていた。
黒いパンツとシャツというラフな格好ながらも、モデルさながらのスタイルの良さが、彼の美しさを引き立たせている。スーツ姿ではなく、ふらっと立ち寄ったような恰好だった。このバーはスーツ姿の男が多い中、この姿は目立つというより、男前すぎる見目の良さの方が目立っているように見えた。
突然の隆二の登場、そしてまた現れたことに爽が驚いていると、隆二は丈に話しだす。
「丈君、その子は僕の連れなんだ。悪いけど下で結んでいる手を離してくれない?」
「えええ、隆二さん? 何してるんすか、え、爽君は隆二さんの連れ? わぁ、みかげさん酷いわぁぁ」
丈も爽同様驚く。なぜ隆二に見えていたのかわからないが、繋いでいる手のことを指摘され、丈が素早く離した。丈も隆二を知っているようだった。ここは思いのほか客同士が繋がっているのかもしれない。ここではやはり男を漁ることは無理だと、爽は再確認する。
「丈さん、その人と知り合い?」
「こら、爽。もう僕の名前忘れたの? あんなに熱い夜を過ごしたのに」
丈に聞いたのに、隆二が答える。そのあとに丈が焦った声をだす。
「うわっ、二人はもうそんな関係性?」
「そうだよ。とにかく、丈君ごめんね。今日は僕がおごるからね、恋人のわがままに付き合ってくれてありがとう」
「ぇ……」
――今、俺のことを恋人と言わなかったか?
丈は「じゃあ」と言って、愛想よく席を立って去っていった。そして爽は戸惑う。一度寝ただけの相手を恋人と呼ぶ隆二が、少しだけ恐ろしかった。
「俺、隆二と恋人になったつもりないけど?」
「処女を僕にくれたのに?」
「ねぇ、あからさまにそういう話、やめてよ」
「ごめん、でも爽がいけないんだよ。黙って帰ったりするから」
「それは、悪かったよ」
隆二はそう言いながら、隣に座る気配がない。これ以上ここに出入りするわけにはいかないと思い、爽は財布をカバンから出そうとすると隆二に手を掴まれた。
「え?」
爽の手首を握ったまま、隆二は向こうにいるみかげに声をかける。
「みかげさん! 爽、連れて帰るね、お代置いとく!」
「あ、隆二さんお迎え? じゃあまたね」
「え、お迎えって……」
みかげが手を振る。隆二はテーブルに一万円札を一枚置いて、爽の手を引きバーを出た。あまりの速さと隆二の手の強さに驚いた爽は、抵抗するのを忘れてしまった。
「ど、どこ行くの?」
「二人きりになれる場所」
「どうして?」
「爽と一緒にいたいから」
いつの間にか掴まれた手は、爽の腕から指さきへと移動し、恋人繋ぎのような形になっていた。外の世界は、夜の街頭以上にビルのネオンが眩しい。周りは陽気な大人や、学生、夜の街を楽しむ人たちで賑わっている。そんな中、男が二人で手を繋いで歩くことは大して目立たない。
こうやって隣を歩いていると、普通に恋人同士なように見えなくもない。そんなことを考えて数分、隆二に連れられて歩いていくと、そこは隆二と初めてを交わしたホテルだった。
「ひょっとして、俺の体、忘れられなかった?」
「ああ、もう爽以外考えられない」
おちょくろうと思って発した言葉に、まさかの本気の回答がきてしまった。そんなにオメガの初めてが良かったのだろうか。爽は、隆二をそっと見上げた。
「これから、スルの?」
「爽が望むなら。でも、僕としては二人のこれからを話したい」
「それは、遠慮しとく。でもいいよ、しよう。俺も隆二が忘れられなかった」
隆二が、というより隆二とした行為が。思いのほか楽しかったし気持ち良かった。発情期で隆二を思い出すくらいには、運命を忘れさせてくれた。
ターゲットを見つけなくても向こうから来てくれたチャンスに、爽は縋りたかった。妊娠するなら隆二ほどの男の子供がいいと思ってしまった。爽にとって高望みだとは思うが、隆二の子供なら安心して愛せる気がした。
「隆二、今夜も俺を抱いて」
「爽……」
隆二は切なさそうな顔をしたが、そのまま爽を部屋まで連れて行った。
「やっぱりこの部屋なんだ」
「ああ、とりあえずすぐ入れるように、ずっと借りっぱなしなんだ」
「意気投合した相手と寝るために?」
「否定はしないけど、そうだね。仕事でこのホテルは使うから、ちょっとした作業の時とか、少し仮眠を取るようにね」
まるで自分の家かのように、コーヒーポットにコーヒー豆をセットすると抽出が始まる。部屋中にいい香りが漂い始めた。
「ねぇ? この部屋で俺とお茶をするために、わざわざ連れてきたの? 今はそんな時間じゃないよ。もう夜なんだしやることは一つじゃないの?」
「そう? 親睦を深めるのに、お茶はいいアイテムだと思うけどな? コーヒーでいい? あっ、紅茶の方がいいかな」
「ううん、コーヒーがいい。なんかすげぇいい香りしてる」
「豆にはこだわってるんだ」
そんな他愛もない話をしていた。爽は、いったい何をしているんだろうかと思うが、こんな時間も悪くなかった。しかし貴重な金曜を無駄にすることになるのは惜しいとも思う。
爽の予想では、隆二は今夜抱かない気がした。
初対面で誘っているのをみかげにばれないように、丈の手をカウンターの下で握った。その反応は悪くない。丈は少し顔を赤らめたが、手を外されることがなかった。
「丈さん……俺、この後まだ時間があるんですが」
丈が赤い顔で応える。
「え、あ、俺もあるけど、じゃあ、もう一杯飲む? おごるよ」
「いえ、そうじゃなくて……二人きりになれる場所に、ってえええ!」
丈の後ろには、もう会うと思っていなかった男、ワンナイトの相手だった隆二が立っていた。
黒いパンツとシャツというラフな格好ながらも、モデルさながらのスタイルの良さが、彼の美しさを引き立たせている。スーツ姿ではなく、ふらっと立ち寄ったような恰好だった。このバーはスーツ姿の男が多い中、この姿は目立つというより、男前すぎる見目の良さの方が目立っているように見えた。
突然の隆二の登場、そしてまた現れたことに爽が驚いていると、隆二は丈に話しだす。
「丈君、その子は僕の連れなんだ。悪いけど下で結んでいる手を離してくれない?」
「えええ、隆二さん? 何してるんすか、え、爽君は隆二さんの連れ? わぁ、みかげさん酷いわぁぁ」
丈も爽同様驚く。なぜ隆二に見えていたのかわからないが、繋いでいる手のことを指摘され、丈が素早く離した。丈も隆二を知っているようだった。ここは思いのほか客同士が繋がっているのかもしれない。ここではやはり男を漁ることは無理だと、爽は再確認する。
「丈さん、その人と知り合い?」
「こら、爽。もう僕の名前忘れたの? あんなに熱い夜を過ごしたのに」
丈に聞いたのに、隆二が答える。そのあとに丈が焦った声をだす。
「うわっ、二人はもうそんな関係性?」
「そうだよ。とにかく、丈君ごめんね。今日は僕がおごるからね、恋人のわがままに付き合ってくれてありがとう」
「ぇ……」
――今、俺のことを恋人と言わなかったか?
丈は「じゃあ」と言って、愛想よく席を立って去っていった。そして爽は戸惑う。一度寝ただけの相手を恋人と呼ぶ隆二が、少しだけ恐ろしかった。
「俺、隆二と恋人になったつもりないけど?」
「処女を僕にくれたのに?」
「ねぇ、あからさまにそういう話、やめてよ」
「ごめん、でも爽がいけないんだよ。黙って帰ったりするから」
「それは、悪かったよ」
隆二はそう言いながら、隣に座る気配がない。これ以上ここに出入りするわけにはいかないと思い、爽は財布をカバンから出そうとすると隆二に手を掴まれた。
「え?」
爽の手首を握ったまま、隆二は向こうにいるみかげに声をかける。
「みかげさん! 爽、連れて帰るね、お代置いとく!」
「あ、隆二さんお迎え? じゃあまたね」
「え、お迎えって……」
みかげが手を振る。隆二はテーブルに一万円札を一枚置いて、爽の手を引きバーを出た。あまりの速さと隆二の手の強さに驚いた爽は、抵抗するのを忘れてしまった。
「ど、どこ行くの?」
「二人きりになれる場所」
「どうして?」
「爽と一緒にいたいから」
いつの間にか掴まれた手は、爽の腕から指さきへと移動し、恋人繋ぎのような形になっていた。外の世界は、夜の街頭以上にビルのネオンが眩しい。周りは陽気な大人や、学生、夜の街を楽しむ人たちで賑わっている。そんな中、男が二人で手を繋いで歩くことは大して目立たない。
こうやって隣を歩いていると、普通に恋人同士なように見えなくもない。そんなことを考えて数分、隆二に連れられて歩いていくと、そこは隆二と初めてを交わしたホテルだった。
「ひょっとして、俺の体、忘れられなかった?」
「ああ、もう爽以外考えられない」
おちょくろうと思って発した言葉に、まさかの本気の回答がきてしまった。そんなにオメガの初めてが良かったのだろうか。爽は、隆二をそっと見上げた。
「これから、スルの?」
「爽が望むなら。でも、僕としては二人のこれからを話したい」
「それは、遠慮しとく。でもいいよ、しよう。俺も隆二が忘れられなかった」
隆二が、というより隆二とした行為が。思いのほか楽しかったし気持ち良かった。発情期で隆二を思い出すくらいには、運命を忘れさせてくれた。
ターゲットを見つけなくても向こうから来てくれたチャンスに、爽は縋りたかった。妊娠するなら隆二ほどの男の子供がいいと思ってしまった。爽にとって高望みだとは思うが、隆二の子供なら安心して愛せる気がした。
「隆二、今夜も俺を抱いて」
「爽……」
隆二は切なさそうな顔をしたが、そのまま爽を部屋まで連れて行った。
「やっぱりこの部屋なんだ」
「ああ、とりあえずすぐ入れるように、ずっと借りっぱなしなんだ」
「意気投合した相手と寝るために?」
「否定はしないけど、そうだね。仕事でこのホテルは使うから、ちょっとした作業の時とか、少し仮眠を取るようにね」
まるで自分の家かのように、コーヒーポットにコーヒー豆をセットすると抽出が始まる。部屋中にいい香りが漂い始めた。
「ねぇ? この部屋で俺とお茶をするために、わざわざ連れてきたの? 今はそんな時間じゃないよ。もう夜なんだしやることは一つじゃないの?」
「そう? 親睦を深めるのに、お茶はいいアイテムだと思うけどな? コーヒーでいい? あっ、紅茶の方がいいかな」
「ううん、コーヒーがいい。なんかすげぇいい香りしてる」
「豆にはこだわってるんだ」
そんな他愛もない話をしていた。爽は、いったい何をしているんだろうかと思うが、こんな時間も悪くなかった。しかし貴重な金曜を無駄にすることになるのは惜しいとも思う。
爽の予想では、隆二は今夜抱かない気がした。
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