ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第七章 決断

168、別れ 5 ※

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「えっ、ここは? 先輩?」

 目が覚めたら全く違う場所に来ていた。そこは長期の休みに入るといつも愛し合っていたベッド、先輩のマンションだった。俺が先輩を無意識に呼んだからか? すぐに来てくれた。

「良太おはよう。気を失って、起きそうになかったからそのままマンションに移動したんだ。学園にも岩峰にも連絡したから心配しないで、一日早いけど今日から休みに入るよ。週明けまで一緒に過ごそう」
「嬉しい! でも、どうして?」

 ベッドから起き上がると少しめまいがして、ふらついたら先輩が支えてくれた。

「良太の調子がおかしいって聞いていたんだ。このままじゃ体壊すかもしれないって。だから学園にも言って休みを取らせた。俺と離れて良太は辛くなってしまったんだね、可愛そうって思うのと同時に少し嬉しいんだ」
「迷惑かけてごめんなさい」
「違うよ。俺なしじゃ生きられないって体全体で表現されて、俺はどうしたらいいんだろう。良太には健康でいて欲しいけど、俺と離れてこんなにクマを作って痩せるなんて、喜んじゃいけないけど、良太の全てで俺を愛してるって、そう言われているみたいで嬉しいんだ」
「愛しています! すごくっ」

 俺は先輩にギュってくっついて、今の自分がブサイクだってわかっているけど、すぐに顔に近づけてキスをした。

「良太が積極的で嬉しいよ。でもまずは体重戻そう? たくさん食べて、よく寝て、元気にならなくちゃ」
「やだ。もっとしたい。先輩とずっとくっついていたい」
「ふふ、まるで発情期みたいに甘えたさんだね。ご飯食べたらしようね」
「わかりました、ご飯食べたら抱いてください」

 先輩はそのままキッチンへと行った。ゆっくり支度しておいでって言って俺を一人ベッドに残したまま。そうでもしないとすぐに抱き潰してしまいそうだとか、ブツブツ言っていたがご飯を作りにいってくれた。

 俺はどうしたというんだろう。

 これ、勇吾さん怒っているんじゃないかな? 先輩はなんて言ったんだろう。本当なら明日、勇吾さんの家にいって彼のものになるはずだったのに。この週末また先輩と過ごすことになった。

 不思議だ。

 明け方までの不安な気持ちが何もない。とりあえず、週明けまでは俺は先輩と過ごせる。それだけで気持ちが上がった。今の俺にはもう勇吾さんへの罪悪感さえ何も出てこない。ただただつがいと過ごせる数日を想い、喜んでいた。

 俺は服を着て、キッチンへ行くとそこでは先輩が用意してくれたご飯が並んでいた。

「良太、さあこっちに座って。相変わらず温めるだけのものだけど栄養は満点だから!」
「はい! いい匂い、久しぶりにお腹が空きました」
「それは良かった。俺も良太と一緒にご飯が食べられるのが嬉しい。たった数日でも寂しかったよ」

 先輩もおんなじ気持ちでいてくれたんだ。そんなリップサービスかもしれない言葉にさえ歓喜した。そして一緒に美味しいご飯を食べる。食事が美味しいと感じるのは久しぶりだった。

「良太、俺と数日離れて暮らしただけでそんなに不安だった? 卒業したら結婚する約束もしているのに」

 俺はご飯を頬張りながら、美味しさに嬉しくて笑顔で先輩を見た。かわいいって言って、口の端についたソースをペロリって舐められた。

「ん! 恥ずかしい。あの、相原君達から聞いたんですよね? すいません、僕も何であんなになったのかよくわからなくって、でもこうやって一緒に過ごしていたら不安は吹っ飛びました」
「そう? でも俺は不安だよ。寝れなくてご飯も食べなくなるなんて。卒業待たずに一緒に暮らそう、学園まで毎朝俺が送れば問題ないし、良太の負担考えたら学園の近くに一年だけ住んでもいいし」

 嬉しいし、そうしたい。でもこの数日おかしかった俺は先輩に抱いてもらったことで、目的をはっきりと思い出した。

「……ごめんなさい。僕のせいでそんなことを考えさせてしまって、でも大丈夫です。次の週はもう大丈夫だと思います。初めてのことで戸惑っただけだから、それに離れているのが辛かったから先輩に抱かれるの、いつも以上に嬉しかったです……」

 俺のただのわがままな感情のせいで、せっかくうまく終わらせられたのに、このまま終われなくなってしまったらそれこそ大問題だ。

「ふふ、それは俺も同じだけどね、そのスパイスも度がすぎると毒にしかならないから。少し様子見てダメそうならすぐに良太を連れ出すね?」
「先輩、もうおなかいっぱい。いっしょにお風呂入りたいです、それで飽きるまで抱いて欲しい……」

 俺はとっさにこの二年間で得たスキル、控えめに甘えるという行動に移した。通じるとは思わないが、これで数日の猶予はできたはずだ。

「飽きることはないから、それじゃ止め時がわからないな」

 そう言って笑った。そしてお風呂に一緒に入って、浴槽の中ゆっくりとキスをした。

 味わうようになんども、向かい合わせになって、お互いの欲望が高まっているが、決してそこには触れずひたすら抱き合ってキスだけした。何度か先輩が俺のち上がったものを扱こうとしたが、ダメと言って制した。

「良太、そろそろ触りたいしもっと気持ちいいことしたいな」
「んんっ、僕、キスだけでもすごく気持ちいいのに、先輩は僕のキスじゃダメ? んんんっ、あっ、まだ触っちゃダメ、するならベッドに連れてってください」

 先輩がゴクリと喉を鳴らした。

「なんてエロいんだ、手加減できないよ?」
「ぁんっ、しないで、いっぱい抱いて」

 お互いにまだお湯で濡れている体だけど、バスタオルをひとつ持って、先輩が俺を抱きかかえて、水の足跡がつくのも構わずに寝室へと向かいベッドに下ろした。

 ささっと体を拭いてくれたが、それも一瞬ですぐさま胸を舐められた。

「ひゃん!」
「ふふ、もうこんなに尖ってきた。かわいいな、俺ばかりが限界じゃなかったみたいだね、お風呂で余裕そうに唇を貪ってくるから少し焦ったよ」

「今日は丁寧にキスをしたかったから、抱いてもらっちゃったら、気持ちよくなりすぎてキスもゆっくり味わえないと思って、焦らしてごめんなさい、もう我慢しないで先輩が好きなように扱ってください」
「良太! 愛している」

 そこから流れるように後ろを溶かされて、そしてずっと前立線を攻め立てたと思ったら、勢いよく先輩の硬くて熱いものが遠慮なく貫いてきた。そして小刻みに揺らされて、俺はあっけなく欲望の世界へと足を踏み入れた。

 最初こそ、大きさにヒュっと息を吸ってしまったが、慣れ親しんだそれはひたすら気持ちよかった。

「あっ、あっ、あぁあっ、きもちいい……」

 激しいようで、それでいて穏やかに気持ちよくさせてくれる。そんな優しさが伝わってきた。俺は抱かれながら涙が出ていたらしい。

「良太、泣いているの?」
「えっ、あん、気持ちよくて、先輩、愛してる、先輩が僕の中にいるんだって思ったら涙が、すごく嬉しい」

 それを聞いた先輩は、そのまま俺がするキスとは全く違う、むさぼるようなまるで発情期に入ったような激しいキスで言葉を塞いだ、でも息継ぎの間に愛しているって何度も言ってくれた。

 俺はその日、何度も果てた。

 そして濃厚な三日間が過ぎ、週明けの朝には先輩に送られて学園に戻った。

「良太、無理はしないで。お前が呼べばすぐに迎えにくるから、愛してるよ」
「先輩、好きです。本当に好きっ、こんなにいっぱい、先輩で満たしてくれて、ありがとうございました」

 俺のありがとうは、今までの想いを込めたつもりだった。とにかく好きという言葉を最後の最後まで伝えた。最後に言える、俺の本音の感謝の言葉を。そしてキスをしてまた週末会うという約束をして、お別れした。

 しかしそれが守られることはなかった。

 その日のうちに勇吾さんが迎えにきて、俺は学園を去ったから。
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