転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
146 / 532
第2章 幼少期

2.19.2 8歳の夏

しおりを挟む
 鉄鋼の工房復活に向けてもう一つ取り組みをしていた。それがアイテムボックスの入手だ。空間魔法で作られた魔道具で大きな容量の荷物を小さな箱に収納でき、重さも感じなくなる優れものだ。

 昔々に作られた道具だが荷物運びを専門にする業者や、高名な上級貴族しか持っていない。

 侯爵家なら一つぐらいは持っている物だが、クロスロードには無かった。

 それをファールじいちゃんに頼んで王都で開かれるオークションで購入してもらった。

 正直とても高かった。
 だが特別予算でなんとか一つ入手する事ができた。

 現物を見れば、大神官様が貸してくれた魔法書と合わせて自分で作れるようにならないかと考えたが、残念ながらそう簡単に作れる物ではなかった。

 魔法陣をコピーしても元となる空間魔法のレベルが高くなければ作れないようだ。
 だが、魔法書と現物から完全な魔法陣を知ることが出来たのでそのうち作れるようになるだろう。

 このアイテムボックスは、領主専用の運び屋を立ち上げ運用してもらう。
 具体的には隣国シドニアに鉄の買い付けに行ってもらうのだ。

 鉄は重い。
 故に、輸送費がとても高い。
 鉄を運ぶにはそれなりに立派な荷台を持つ馬車が必要になるし、道路も必要になる。
 つまり今の仕組みのままでは一度に運べる鉄が少ないのだ。

 そういうわけで鉄鋼の工房が開くのに合わせて運び屋を作った。

 もちろん売りに行くのにも使える。
 これで鉄の安定供給と販売ルートを確保できた。

 鉄鋼の工房をようやく復活できたが、領内にはそれほど鉄鋼製品を必要とする事業所がない。
 練習期間の暫くは工房の給料は領地で負担することになっているらしい。
 僕が作ってほしい物があれば優先して作ると言われた。

 そういうわけで、以前から試しに作っていた魔道歯ブラシのブラシを作る型を作ってもらった。

 これで、圧縮板の応用でブラシを成型できるようになった。
 今までは削った木にブラシを接着していたが、木くずを使ってブラシと一体で成型できるようになった。
 ラオブルートさんに頼んでおいた改造も上手く行った。
 魔石の部分をボックスに入れて、取り外しができるようにしたのだ。
 ボックスは焼き物で魔石は多少の熱を加えても壊れないので粘土と一緒に焼いて部品のように仕上げたらしい。
 その焼き物にブラシを直接取り付ける。
 焼き物の下に魔法陣を封じ込めたグリップがある。
 つまり、本体、振動部、ブラシと3つの構造に分けたのだ。
 振動部を交換可能にする事で本体の寿命を延ばした。

 これで、量産体制に入り専用の工房ができた。

 完成品は孤児院経由で売りに出している。
 一部でも利益を回すことで領主の補助金頼みから脱却するためだ。

 孤児院では、完成した魔道歯ブラシ本体に色塗りをする。
 水をはじかせる色を塗って乾かし、子供達が決まった色を塗って行く。
 すこし高級感ある魔道歯ブラシが完成する。

 これらの魔道歯ブラシは、ファールじいちゃんに卸す。
 そこから貴族に配るが、さらに高級品は金の装飾や宝石を付けたりしているらしい。
 本体よりも高い宝飾なので流石にクロスロードではそこまでできない。

 ファールじいちゃんの宣伝が上手いのかあっと言う間に王都で受け入れられたらしく、作るだけ売れている。

 ただ、現状は魔道歯ブラシに使う魔法陣を全て僕が作っている。
 いずれはこれも皆が作れるようにならないかなと考えているのだがうまい手が無い。
 残念だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...