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第3章 竜の襲撃
3.9.3 10歳の春
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6月、ファールじいちゃんから家の料理人に王都で日本食を作ってほしいと依頼があった。
ゴルゴさんと、お手伝い兼その後の関係発展を狙ってミレーユさんを王都に送り込んだ。彼らは5日後に帰宅する予定だ。
お仕事は3日で終わるが残りは王都での買い出しという名のデートだ。
帰ってきたゴルゴさんが言うには、料理を振る舞ったのが王城で、それも王家だったそうだ。
まず、最初に到着したらメリルディーナ家に向かったそうだ。そこで作るのかと思ったら、家に修業に来ていた料理人を加えて馬車に乗って着いた先が王城。
「娘が王妃の一人なのだから孫に食べさせたいと言えば当たり前だろ」
メリルディーナ様からはそう言われたそうだ。
なんの不思議があるのか解らないとい言う顔だったらしい。なるほど。確かに。
ゴルゴさんは、予め言ってあると行かなかったかも知れない。ファールじいちゃんの家にはゴルゴさんに食事の作り方を教わった料理人がいるのだから、絶対に行かないといけないわけではなかったのだ。
ファールじいちゃんは相手の特性を理解した対応を取る策士ぶりが健在だ。家の料理長になったゴルゴさんの性格をきっちりと把握しているのだから不思議だ。
王城の料理長は人望もありすごく親切な人だったらしい。緊張のあまり包丁を握ったらぶるぶる震えていたゴルゴさんを支え、一緒に野菜を切ってくれたことで緊張が和らぎ料理ができるようになったそうだ。もちろんミレーユさんも協力して緊張をほぐしてくれたらしいけど。
そして、王城の料理人たちも手伝ってくれなんとか予定通りの物が作れたんだとか。
王城の料理長から、残るかと聞かれたそうだが、とんでもないと急いで退出したそうだ。
王様に出す料理を作るなんて恐れ多くて、もう行きたくないって言ってた。
「あれ、ゴルゴさん、雇うときに将来は王城で働くような料理人になりたいって言ってませんでしたか?」
「王様の料理を作りたかったわけじゃなくて、王城で働く文官や騎士向けの料理人を目指していただけです。王城で働く料理人は料理人の中のエリートですよ。
さらに王様の家族向けの料理人は頂点ですよ。
私にはおそれおおいです。緊張で死んじゃいます。まだ若いのに」
「まだ、若いのに死なれるのは困るね。
そんなことになるとメリーナ様に怒られそうだし。
まあ、暫くはこの家に残ってください。
そしてもっとおいしい日本料理に挑戦しましょう」
「了解です」
ゴルゴさんは、笑顔で元気に答えてくれた。
さて、本番はこの後だ。
ゴルゴさんから王都でのミレーユさんとの進展具合を聞きだす。その後にミレーユさんからもゴルゴさんとのデートのことを聞きだした。
結論から言うと、ふたりとも仕事馬鹿だった。
ゴルゴさんは料理の食材を探し、おいしい料理を求め色々な店で試食をしていた。
ミレーユさんは雑貨やなどに入り、新しい工芸品のアイデアを探していた。
ふたりで一緒にいたのは、夕食ぐらい。それも特別な話は一切無かったそうだ。
これはだめだ。進展なしどころか破局に向けて一直線だよ。
しょうがないので、ふたりを主役にした慰労会を計画。
トシアキが気の利いたプレゼントを探してきてゴルゴさんに渡しておく。
そうして開いた食事会だったが、残念だがあまり盛り上がらなかった。
トシアキとバーニィに、子爵家の年頃の女性を呼んだのだが。ゴルゴさんは料理以外のことが殆どしゃべれない。ミレーユさんも売り上げに貢献しようと子爵家の令嬢にアクセサリーの話をしていたらしい。
最悪のバーニィは若い女性を前にするとしゃべらない。
結局、トシアキだけが頑張って盛り上げるというとても疲れた食事会だったそうだ。
そんな二人だったが、どうやら要らぬおせっかいだったようだ。
食事会の次に日、なんと婚約したとゴルゴさんから報告があった。
「えー。なんで、あれで良かったの。どうして。
昨日の夕食の時点では何も話をしてなかったよね」
「そうだよ、あんなに頑張ったのに僕は看護婦のリッコちゃんから振られたんだ。
僕の立場はどうなるの」
バーニィは真剣に空に向かってバカヤローと叫んでいた。
「バーニィは話なんかしてなかったでしょう。
妄想の中で話し上手になっても無駄なんですよ無駄。
それにしても私の徒労が報われて良かったです。
とてもきつい時間でしたから、もう2度とやりませんよ」
結局、言葉よりも心。ふたりは違うことをやっていてもお互いがお互いを見て悩んでいる時や、困っている時にはちゃんと助け合っていた。
彼らは毎日、充実した日々を過ごしている。だから口数が少なくても短い時間で濃密な時を過ごしていたのだろう。
ふたりっきりになれば甘い言葉をささやき、ちゃんと愛をはぐくんでいたらしい。
皆が応援してくれたのを後押しにしてついにその日の夜に思い切って告白したそうだ。
イヤー、やるねゴルゴさん。ここぞで決めてくるとは男だよ男。
バーニィのヘタレ具合に比べると、いや比べちゃダメか。
ゴルゴさんと、お手伝い兼その後の関係発展を狙ってミレーユさんを王都に送り込んだ。彼らは5日後に帰宅する予定だ。
お仕事は3日で終わるが残りは王都での買い出しという名のデートだ。
帰ってきたゴルゴさんが言うには、料理を振る舞ったのが王城で、それも王家だったそうだ。
まず、最初に到着したらメリルディーナ家に向かったそうだ。そこで作るのかと思ったら、家に修業に来ていた料理人を加えて馬車に乗って着いた先が王城。
「娘が王妃の一人なのだから孫に食べさせたいと言えば当たり前だろ」
メリルディーナ様からはそう言われたそうだ。
なんの不思議があるのか解らないとい言う顔だったらしい。なるほど。確かに。
ゴルゴさんは、予め言ってあると行かなかったかも知れない。ファールじいちゃんの家にはゴルゴさんに食事の作り方を教わった料理人がいるのだから、絶対に行かないといけないわけではなかったのだ。
ファールじいちゃんは相手の特性を理解した対応を取る策士ぶりが健在だ。家の料理長になったゴルゴさんの性格をきっちりと把握しているのだから不思議だ。
王城の料理長は人望もありすごく親切な人だったらしい。緊張のあまり包丁を握ったらぶるぶる震えていたゴルゴさんを支え、一緒に野菜を切ってくれたことで緊張が和らぎ料理ができるようになったそうだ。もちろんミレーユさんも協力して緊張をほぐしてくれたらしいけど。
そして、王城の料理人たちも手伝ってくれなんとか予定通りの物が作れたんだとか。
王城の料理長から、残るかと聞かれたそうだが、とんでもないと急いで退出したそうだ。
王様に出す料理を作るなんて恐れ多くて、もう行きたくないって言ってた。
「あれ、ゴルゴさん、雇うときに将来は王城で働くような料理人になりたいって言ってませんでしたか?」
「王様の料理を作りたかったわけじゃなくて、王城で働く文官や騎士向けの料理人を目指していただけです。王城で働く料理人は料理人の中のエリートですよ。
さらに王様の家族向けの料理人は頂点ですよ。
私にはおそれおおいです。緊張で死んじゃいます。まだ若いのに」
「まだ、若いのに死なれるのは困るね。
そんなことになるとメリーナ様に怒られそうだし。
まあ、暫くはこの家に残ってください。
そしてもっとおいしい日本料理に挑戦しましょう」
「了解です」
ゴルゴさんは、笑顔で元気に答えてくれた。
さて、本番はこの後だ。
ゴルゴさんから王都でのミレーユさんとの進展具合を聞きだす。その後にミレーユさんからもゴルゴさんとのデートのことを聞きだした。
結論から言うと、ふたりとも仕事馬鹿だった。
ゴルゴさんは料理の食材を探し、おいしい料理を求め色々な店で試食をしていた。
ミレーユさんは雑貨やなどに入り、新しい工芸品のアイデアを探していた。
ふたりで一緒にいたのは、夕食ぐらい。それも特別な話は一切無かったそうだ。
これはだめだ。進展なしどころか破局に向けて一直線だよ。
しょうがないので、ふたりを主役にした慰労会を計画。
トシアキが気の利いたプレゼントを探してきてゴルゴさんに渡しておく。
そうして開いた食事会だったが、残念だがあまり盛り上がらなかった。
トシアキとバーニィに、子爵家の年頃の女性を呼んだのだが。ゴルゴさんは料理以外のことが殆どしゃべれない。ミレーユさんも売り上げに貢献しようと子爵家の令嬢にアクセサリーの話をしていたらしい。
最悪のバーニィは若い女性を前にするとしゃべらない。
結局、トシアキだけが頑張って盛り上げるというとても疲れた食事会だったそうだ。
そんな二人だったが、どうやら要らぬおせっかいだったようだ。
食事会の次に日、なんと婚約したとゴルゴさんから報告があった。
「えー。なんで、あれで良かったの。どうして。
昨日の夕食の時点では何も話をしてなかったよね」
「そうだよ、あんなに頑張ったのに僕は看護婦のリッコちゃんから振られたんだ。
僕の立場はどうなるの」
バーニィは真剣に空に向かってバカヤローと叫んでいた。
「バーニィは話なんかしてなかったでしょう。
妄想の中で話し上手になっても無駄なんですよ無駄。
それにしても私の徒労が報われて良かったです。
とてもきつい時間でしたから、もう2度とやりませんよ」
結局、言葉よりも心。ふたりは違うことをやっていてもお互いがお互いを見て悩んでいる時や、困っている時にはちゃんと助け合っていた。
彼らは毎日、充実した日々を過ごしている。だから口数が少なくても短い時間で濃密な時を過ごしていたのだろう。
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皆が応援してくれたのを後押しにしてついにその日の夜に思い切って告白したそうだ。
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