転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
446 / 532
第5章 シドニア訪問編

5.13.7 グランスラムの情報

しおりを挟む
「ジルベール様、戻りました」
「コハク、体調は大丈夫なの?」
「はい、すっかり。エリン様もこちらにいらしたのですね。丁度良かったです」
「何か御用でも?」
「はい、体調を調べたかったので。そちらにお座りください」
「え、でもお仕事中で」
「あ、じゃあエリンは今日はもう良いよ。後の片付けは私がやっておくから」
「そうですか」
「茶器はここに置いておくから、好きな時に使ってね。じゃあまた明日。ジルベール様。失礼します」
 コレットもやればできる子なんだな。
「どうかされましたか、ジルベール様」
「いや、コレットもやればできる子なんだなって」
「ぷ」
 エイミー、ふいちゃダメでしょ。
「コレット先輩はちゃんとしてましたよ、やればできるって、ジルベール様は昔からご存じだったのですか?」
「いや、ここに来た時にお世話になっただけだけど」
「それなのに、やればできる子ですか?」
「まあ、最初の衝撃が大きかったと言うか、いや、コレットは、ほんとに普通だったの?」
「普通って、どういうことですか?」
 不思議そうな顔で僕を見るエリン。

「いや、例えば後ろ向きに下がると転ぶとか、何でもない所で転ぶとか」
「え……確かに、2回ほど転びそうになってましたけど」
「あ、やっぱり。まあそんな感じ。あとは歩き方がちょっと落ち着きがないなーとかさ」
「歩き方ですか?」
「王宮で働く他の侍女さんとちょっと姿勢が違うって感じない?」
「彼女は少し前まで病気がちであまり運動もできなかったそうですから。多少そういう感じもあるのかもしれませんね」
「へー、そんな過去があったんだ。じゃああまり運動をしてなかったから運動音痴なのかな、たんなるドジっ子かと思ってたよ」
「ドジっ子……」
「まあ、良いじゃない。それよりもコハク、どうなの? 僕が調べた感じでも体調に悪いところは見当たらないけど」
「そうですね。私も同じです。コハク様、精霊を呼べますか?」
「そんな自在に呼び出しなんてしたことありませんけど」
「そうですか。どうしましょう?」
「僕も知らないよ」

「しょうがありませんね。祈りです。教会で祈るときのように精霊に語りかけてみてください」

 エリンが目をつぶり、両手を前に手を合わせて祈る。

 しばらくすると彼女の周りの気配が変わり、少し明るくなったような、柔らかな気配を感じた。
 その時にコハクが声をかけた。
「もうよろしいですよ」
 目をあけ、こちらを見るエリン。
「どうだったのでしょうか?」
「精霊が集まろうとした感じを受けました。続けると精霊を呼び出す時間が短くなるでしょう」
「こんな感じを続ければ良いのですか?」
「そうですね。眠る前に5分から10分ほど祈りを続けて欲しいですね。あとはその時に近くにお菓子を置いておくと効果的です。実体を保てる精霊はお菓子が好きなのです」
「お菓子ですか?」
『そうじゃ』
『今のはイシス?』
『出して欲しいのじゃ』
「イシス、精霊として顕現せよ」
『精霊はお菓子が好きなのじゃ。実体が保てるような精霊がこの近くにいるか疑問はあるが、声かけに応じて来た時に供物が無ければ二度と現れん。供物は必要じゃ。そういうことで、わらわは供物を要求するのじゃ』
「イシスが、お菓子を食べたいだけじゃないの」
「イシス様、少しお待ちください。そちらの茶道具の中にお菓子が合ったはずです」

「ガルダは、欲しがらないのにね」
「ガルダ様は無口ですから自分から欲しがらないだけだと思いますよ」
 コハクがそう答えた。
 ガルダも、精霊体で呼び出しておくべきなのだろうか。
 
『ジルベール、ようやく先日の礼をする気になったのか』
 無口のはずが、呼び出してすぐに文句を言われた。
 今までは、一度呼び出したら、後は自由にさせていたから、屋敷を飛び回り勝手にお菓子を食べていたのかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...