転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
485 / 532
第6章 新しい命

6.5.3 妹が生まれた

しおりを挟む
 翌日。
「おはようございます。ジルベール様」
「おはよう。侍女長になってもちゃんと僕を起こしに来てくれるんだね」
「大切な仕事ですからね。ではお着換えをして朝食にしましょう」

 食堂に入って周りを見渡す。
「あれ、アメリ母様は。調子が悪いの?」
「アメリ様は、お部屋で済まされるそうです。もうじきお生まれになるかもしれませんから、無理はいけませんので」
「そうなんだ」
「そういえば、エイミー、午後は何か用事がある?」
「特にないよ」
「じゃあ午後は、クリスタの買い物に付き合ってやってよ。店がどこにあるかもわからないだろうし、トシアキには頼みたいことがあるから」
「ふーん、良いよ。じゃあティアマト様はどうします?」
「我は、家で休む。アメリ殿の近くにいた方が良いだろう」
「そっか」

 食事を終えると、すぐに剣の訓練。
 シドニアでステパンが間に入っていた分がクリスタに変わっただけなので特に違和感なく訓練できた。
「どうだった、クリスタ」
「エルドラでもこれほど濃密な訓練はできませんよ。素晴らしい環境です」
 王城に居る時に彼らの訓練を見た限りでは時間は圧倒的に短かったと思うけど、彼はその時と違って息を切らせている。
「そうなの?」
「1年前ならシルビア様以外にも剣帝がいましたから、毎日は言いませんが剣帝と打ち合う時間もありました。ですが普段の訓練は剣王同士、大半の時間はそれ以下の面倒を見る時間に使われます。育てるのも自分の力にはなるのですが、やはり同格以上、できれば格上との打ち合いがなければ自らの技量が上がりません。ですが、剣帝や剣神と打ち合える時間は殆どありませんから」
「そうなんだ、あれ、じゃあ剣神って普段なにしてるの? 僕の印象だとずっと剣を振ってるのかと思ってたんだけど」
「そうですね。剣神様は、シルビア様と打ち合うことがたまにあるぐらいで、大半は1人で訓練をされてます。誰にも見られない洞窟にいる時間が長く、その時は聖獣様と過ごされているのだと思います。あとは領主でもあるので事務処理にもかなり時間を取られています」
「あー、それは解る。僕もそういう時間が割と多い。いままではトシアキが手伝ってくれてたけど、君はどうなの? 書類仕事ができるなら回すけど」
「1日に2時間ほど読み書き計算の勉強は続けています。得意ではありません」
「なるほど、約束だと3年で戻るんだったね。そして剣神を目指すと。ならば書類仕事を手早く片付けられないとまずいね。なるほど。ならば勉強はした方が良さそうだね」
「え、勉強するのですか?」
「エルドラでは、学園のような制度は無いの?」
「エルドラの王都にはありますが、我々が住んでいる所は山奥ですのでそこからは通えません、シルビア様を始め、剣神や剣帝の奥様が時折、勉強を見てくれるぐらいで」
「でもクリスタは剣神の子供なら伯爵家の貴族だろ、学園には行かなくても良かったの?」
「我が家の爵位は、子に引き継がれる物ではないので」
「あ、そうか。特殊な爵位だったか」
「はい」
「まあ良い、僕の部下ならそんなことではだめだ。そうだ、ラルクバッハは自警団の平民向けに読み書きを教えていたはずだ。基礎はそこで良いだろう」
「え、勉強ですか?」
「ああ、サミュエル・フィンレワードと言う今年学園を卒業した侯爵家の者がいるんだ。クロスロードで自警団に入って訓練を受けているが、剣や魔法だけでなくリリアーナお母さまが言うには廃嫡になったわけじゃないから将来、領主経営をするかもしれない。だから特別メニューを用意するって言ってた。君もそっちに合流すると良い、読み書き以外に領主経営に関する仕事も教えてくれるはずだ」
「え、本気ですか?」
「本気本気、勉強ができないと困るぞ。シルビア様が僕のことを信頼して預けたんだ、しっかりと教育するように。期待以上の成果を出さないと」
「ジルベール様もご一緒に受けるのですか? まだ学園にも行かれていないのに、もう領主教育ですか」
「ジルちゃんはすでにラルクバッハの学園で習うところは全部終わってるんだよ。領主の仕事もできるし。今は魔道具とかも研究してる」
 エイミーが、えっへんと自慢げにしている。
 少し驚いた顔をしたクリスタだったが、すぐにエイミーに話す。
「それはすごいですねさすがジルベール様です。それでエイミー様は勉学はどうなのですか?」
「ふっ、残念だけど僕は一応学園卒業したんだよ。読み書き計算は礼儀作法より成績良かったし、将軍の補佐もやってたから、兵糧の計算ぐらいはできる。購入の交渉とか、税金とかがわかんないけどね」
 エイミーも実は最低限の事務処理はできるのか。知らなかった。

「と言うことだ。クリスタ。ちゃんと勉強の時間も入れておこう」
「はい」

「じゃあ、今日の午後はエイミーと街に買い物に行くと良い。エイミー、頼むよ」
「はいはい、じゃあクリスタ行こうかね。タロウ、おいで」
 声をかけると黒い影の中から黒狼が飛び出してきた。
「魔物」
 クリスタが剣を抜こうとした。
「大丈夫だよ。この子はジルちゃんの従魔だから」
「そう、なぜか僕の近くではなくエイミーの近くにいて、エイミーの言うことを聞くけど、僕の従魔だ。たぶん」
 僕の従魔はすべて勝手に動いている。従魔ってほんとなんなんだろう。
「町まで行くでしょ。僕はタロウに乗って行くから、クリスタは馬を借りてね。乗れるよね?」
「ああ、馬には乗れるが、それよりもこんな大型の黒狼を連れて街に行って大丈夫なのか?」
「え、大丈夫じゃない。いつものことだし。街の人も慣れてるよ」
「そうなんだ、すごいところだな、このクロスロードは」
「あ、さっき名前のでたサミュエル達3人にも新人来てるって言ってあるから自警団によってから街に行こうか。じゃあ厩舎はこっちだから、ついてきて」
 エイミーはすでに太郎にまたがり、さっさと走って行った。どうやら厩舎の方へ行ったようだ。それをクリスタが走って追いかけて行った。
 任せても大丈夫か? まあサミュエル達と合流すると言ってたから大丈夫か。
 エイミー、もしかして彼らに押し付ける気なのか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...