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第6章 新しい命
6.5.5 妹が生まれた
しおりを挟むそうして、朝。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
いつもどおり、侍女長が来ていた。
あれ、エイミーがいない。
「エイミー様は、先に起こして着替えさせました。今は部屋の前でお待ちです」
「そうなんだ」
「今日は、ジルベール様にはお風呂に入り綺麗にしていただきます」
「そうなの?」
「はい、今朝がた、妹君が生まれましたから。お会いになりますよね」
「え、朝方。 まったく気がつかなかったんだけど」
「お屋敷中が大騒ぎでしたが、ジルベール様は多少うるさくても起きないのは相変わらずですね」
あいかわらずなんだ、そういう認識。あれ、なんか今までもそうだったのかな?
「ええ、小さい時から大きな物音がしても一度眠ると起きません。エイミー様が言うには、殺気や敵意を向けられるとすぐに起きるそうですが」
ああ、つまり防音魔法が効いてるから周りが騒がしくても起きないのか。
いつも熟睡してたんだなー。
「それで、お風呂?」
「ええ、殿方が赤子に対面する前には綺麗にするものです」
「へー、そうなんだ。……あ、妹なの?」
「はい」
「じゃあ、急いでお風呂に入るよ」
「そんなにお急ぎにならなくても大丈夫です。妹君は逃げませんし、今、あちらも大変ですから。ゆっくりとお風呂に入り、朝食を食べてからアメリ様の部屋に行けば丁度ぐらいです」
「そう、わかった」
「では、後は別の者に任せますので。わたくしはアメリ様のところに戻ります」
「あ、そう。わかった」
かわりの侍女が来て、お風呂に入れられて、いつもよりもごしごしと強めに洗われ、ピカピカにされた後で、朝食を食べに移動。
「あれ、レイブリング父様に、マリアテレーズ、エイミーも。みんな眠そうだね。大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「ええ、大丈夫ですわ」
「ジルちゃんとニナちゃんの二人だけはしっかりと寝てたんじゃないかな」
エイミーがそう言った。
「あれ、エイミーも起きたのは僕より少し早いだけでしょ」
「いやいや、僕ちゃんと生まれる前に起きてたから、部屋をでた所でちゃんとうぶ声も聞いたし」
「そうなんだ。エレノアも起きたの」
「はい、お兄様。ですがわたくしが起きたのは、生まれた後でお屋敷がだいぶ騒がしくなってからですから、ニナやお兄様とあまりかわりませんよ」
「へー、じゃあマリアは」
「わたくしは3時ぐらいに起きました。少し眠いですね」
「そうなんだ」
「ああ、私とコハク殿とティアマト殿、それに侍女長たちが徹夜だな」
レイブリング父様が答えた。
「そっか。じゃあ生まれたのは朝方と聞きましたけど、寝始めの頃には産気づいてたんだ」
「そうだな。生まれた声は屋敷中に響いたと思うんだが、ジルベールには全く聞こえなかったんだな」
「ニナもわかんなかった」
「しっかりと熟睡していたのだろう。別に悪いことではないよ」
「熟睡は否定しないけど、そっか。昨夜ぐらいは防音の魔法を使わないようにしておけば良かったのか。止めるっていう考えがなかったな。エイミーともそういう話題をしていたのに、なんで気がつかなかったんだろ」
「眠っている時でも無意識に魔法を使えるのかジルベールは」
「はい、コハクは眠りながら防御の魔法が使えますよ」
「ほう、やっぱり聖女はすごいだな。マリアテレーズ様も?」
「いえ、わたくしはまだ。コハク先生に眠りながら防御魔法を使う方法を教えては貰っていますが、眠り始めると割とすぐに消えてしまうようです」
マリアテレーズは、コハクと一緒に王宮でそうやって聖女としての魔法の使い方を教えて貰っているようだ。
「それを繰り返すうちに、いつのまにか使えるようになるよ」
「そうですか」
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