悪役令嬢の逆襲! 婚約破棄で覚醒したチート能力で国を乗っ取ります

めがねあざらし

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22、女神の言葉と、予兆の夜

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翌朝。王都に新たな風が吹いた。
王宮広場。
そこに突如として設けられた簡易の壇上で、聖女フェルミナが“新たなる神託”を語ったのだ。

「この地に試練が降り注ぎます。しかし、信仰を捨てぬ者には祝福が訪れるでしょう――女神はそうお告げになられました」

白い衣をまとい、花冠を王妃さながらに頭上に飾ったたフェルミナが、朝日を背にして手を掲げた瞬間、群衆は一斉にひれ伏した。
花を捧げる者、涙を流す者、祈りを口にする者。
まるで“新たな信仰国家”の始まりを告げる儀式のように――。

リリアーヌのもとにも、その速報はすぐに届けられた。

「やってくれたわね……」

書斎でその報告書を読みながら、リリアーヌは声を低くする。
まだ夜明けから数刻しか経っていないというのに、王都の広場にはすでに数百人の信徒が集まり、聖女の“神託”を信じて跪いているという。

「完全に民の動きを読み切ってるわ。これは偶然じゃない」

民の不安、動揺、飢え、恐れ――それを、“神託”という形で受け止めてやれば、人々は簡単に従う。
しかもそれを語るのが、王太子の正妃となる“聖女”であれば、なおさらだ。

「信仰が、ただの精神的支えではなく、政治そのものになりつつある……」

その時、使用人が慌ただしく部屋に入ってきた。

「お嬢様。王宮より、正式な通達が届きました」

リリアーヌは封蝋を受け取り、一読。
その内容に、静かに眉をひそめた。

「……聖女庁、正式に設立」

王宮が、フェルミナを“政治的な権威”として認めた瞬間だった。
形式上は“王太子の支援機関”という名目。だが実質は、フェルミナを通じて宗教的正当性を政治に持ち込む試みだ。

「一度崩れれば、あとは転がるだけ。王太子の求心力も、国王の威厳も……宗教に吸収されていく」

リリアーヌは立ち上がり、窓の外を見た。
朝の空は曇天。だが、空気はぴんと張り詰め、雨の前触れのように重い。

「まだ間に合う。でも、もう時間はないわね」

彼女は机に戻り、ペンを取る。

「フェルミナが“祝福”を語るなら、こちらは“現実”を見せてやるしかない。希望ではなく、結果を」

書き上げたのは、次なる声明。
“信仰に依存しない未来”を掲げる、民衆向けの公文書だ。
小説家であった過去を思えばこんなことリリアーヌにとって容易い。

「信じることと、従うことは違う。神が全てではなく、人がこの国を作っている――そう示すわ」

リリアーヌはペンを置き、椅子から立ち上がる。

「お嬢様」

再び扉が開き、侍女セシリアが一枚の封筒を差し出した。

「これは……?」
「シュトラール神聖王国の使者より、“非公式”に届いた文書です」

受け取った封筒には、封蝋もない。中にあったのは、たった一枚の紙。

《次なる動きは、女神の口を借りて。警戒を》

リリアーヌの瞳が細められた。

(“女神の口”……つまり、フェルミナを通して、さらに強力な“神託”が行われる――?)

そしてそれは、単なる宗教的発言ではない。
ヴェルンハルト王国の政治を“決定”づける、最後の一押しになる可能性がある。

「――そう来るのね」

リリアーヌは息を吸い込み、微笑んだ。

「お兄様を呼んで。準備を整えるわ。次に動くのは――こちらよ」

フェルミナが“神の言葉”を語るなら。
リリアーヌは“人の意志”で対抗する。

理性と秩序、そして意志の力で、物語を書き換えてみせる。
“神の娘”に敗れぬように。
嵐の前の静けさ。
だがその中で、確かに――運命の歯車は、また一つ音を立てて動き始めていた。



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