前世で僕を裏切ったはずの恋人が、生まれ変わっても離してくれない

めがねあざらし

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6、屈辱の寝台(後)

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「……っ、な……っ、違……っ、違う……っ!」

抗うように唇を震わせるリアンに、カイオスの手が伸びる。細い腰を掴み、ふたたび引き寄せた。
ぐ、っと押し広げられる感触に、全身がびくりと跳ねる。

強く、深く、侵入してくる熱。
理性が焼き切れそうだった。まるで、リアンの奥を知り尽くすような律動で、何度も、深く押し上げられる。

「……ほら、もう抗えないだろ?」

甘く、冷たい囁きが耳元に落ちる。

背を這う手が、熱とともに震えを煽った。
背中を引き寄せられ、腰を固定される。まるで、逃げ出す術を一切与えないように。

——奥深く、埋め込まれる。

「……いや……っ、やめ……っ!」

リアンの目尻から、涙が零れ落ちた。
しかし、カイオスはその雫を唇で優しく拭い取り、慈しむように微笑む。

「……そんな顔をしても、もう遅い……リアン」

そのまま、腰が深く、強く──押し込まれた。

「っ……‼」

その瞬間、リアンの背中が弾けるように跳ねる。
痛みと熱とがないまぜになった感覚が、脳の奥まで焼き付いて離れない。

どうして。

どうしてこんなにも、身体が感じてしまうのか。

脳が痺れるような感覚に、リアンの喉からか細い悲鳴が漏れる。

「……はは、そんなに感じるのか?」

意地悪く唇を吊り上げ、カイオスはじわじわと揺さぶる。
その律動は容赦なく、奥へと、深層へと、リアンの中心を貫いてくる。

「……っ、や……っ、いや……っ!」

声を振り絞っても、全身の力が抜けていく。
熱い体温に絡めとられ、身体の奥が蕩けそうだった。

「……さっきから、“いや”と言いながら、身体は随分と素直に応えてるな?」
「っ、ちが……っ!」

否定の言葉すら、もう声にならない。
リアンの喉は詰まり、指先は痙攣するようにシーツを掴んだ。

「……そうか?じゃあ、ここを擦ったら……どうなる?」

奥を押し上げられた瞬間、リアンの身体がびくん、と跳ねる。
快感が反射のように全身を駆け巡り、呼吸が荒くなっていく。

——なぜ。
なぜ、この身体は、嫌がっているはずなのに。

涙が、頬をつたう。

どこにも逃げられない。
濃密な体温と、執着のような愛撫に包まれて、リアンは声にならない叫びを喉の奥で噛み殺した。

「ひぁ……っ、や、やだ……っ‼」

けれど、カイオスの動きは止まらない。
さらに深く、熱をねじ込むように──リアンの奥を擦り上げた。

「ひ、ああ、あ、あ、っ」

全身が反応する。
身体のどこにも逃げ場がなく、ただ、熱に支配されていく。

「……ほら、もう限界だろ?」

鎖骨に唇が吸いつく。
そこで重ねられる愛撫と律動とが、リアンの理性をぎりぎりのところまで押し込んだ。

「……っ、や……っ、もう……っ!」

視界が滲み、頭の奥が痺れる。
リアンの喉が詰まり、シーツを握る指先が白くなるほどに強張る。

「……いい子だ」

その一言が落ちた瞬間、カイオスが腰を深く──突き立てた。

「……っ、ぁ、ぁ……‼」

弾けるような快感。
背筋が跳ね、全身が震える。

その奥で、熱が弾ける。
リアンの内側を満たすように広がる熱に、びくりと身体が痙攣した。

「……きらいだ……あなた、なんか……」

涙に濡れた瞳でそう呟いたリアンを、カイオスはゆっくりと微笑んで見下ろす。

「……これでやっと、“本当の”夫婦になれたな?」

初めての交わりは、リアンにとってあまりにも酷なものだった。
けれど、額に落ちた口づけは、やけに優しい。
それが、かえってリアンの胸の奥に冷たい恐怖を渦巻かせた。

甘く絡め取られるような熱。
これまで知らなかった、身体が開かれていく感覚。
快楽と、微かな痛みとがないまぜになって、静かに、深く染み込んでいく。

だが、心は追いつかない。
身体が記憶してしまったことを、どうしても受け入れられなかった。

(……何を、させられたんだ……)

思考はぼんやりと霞んでいた。
震える呼吸を落ち着けようと、リアンは浅く息を吸う。
だが、そのたびに、身体の奥でうずく熱が呼応する。

同性婚──それはこの大陸では、決して一般的なものではない。
貴族や庶民の間で、同性同士が愛人関係になることは珍しくはない。
けれど、王族ともなれば話は別だった。

王族の妃に求められるのは、「子を成す義務」。
妃とは、王統を継ぐ子を産む存在なのだ。

自分も、いずれはどこかの令嬢を妻として迎え、王族として相応しい家庭を築いていく。
そう信じて疑っていなかった。

なのに今——

自分は「妃」として、カイオスの腕の中にいる。
組み敷かれ、身体を貫かれた。
それを拒む余地もなく、ただ受け入れてしまった己の体が、何よりも恐ろしい。

アクアフィナの王族として。
人魚の血を引く特異体質の身体を持つ者として。
男でありながら子を孕めるという運命が、皮肉にも、こうして彼の「妃」としての立場を決定づけている。

(こんなはずじゃなかった……)

身体の芯が、まだ熱を帯びて疼いていた。
忘れようとしても、ついさっきまで彼に貫かれていた感覚が、あまりにも鮮烈に残っている。

……はじまりこそ、リアンの望んだものではなかった。
だが、その行為は一方的なものではなかった。

むしろ、カイオスの手は──ひどく、優しかった。

無理に貫かれたはずなのに。
痛みよりも先に、柔らかく触れられた指の温度や、熱に震えた唇の記憶が蘇る。

(僕は、彼を……憎んでいるはずなのに……)

なのに。
その腕の中で、何も言えずに、ただ身を預けてしまった。

頭が、混乱していた。
どうすればよかったのか、どうすれば拒めたのか。
問いかけは次々に浮かんでは沈み、まとまらない。

思考を組み立てる余裕など、もはや残っていなかった。

身体は、限界だった。

まぶたが重くなり、リアンは静かに目を閉じる。
吐き出された息が、夜の空気に小さく溶けていく。

(……眠い……)

逃げるように。
縋るように。
リアンは、ふっと意識を沈めていった。

そこに眠気以外の何かが混ざっていることに、気づかないふりをしながら——。





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