目が覚めたら知らない部屋で背後にいたのは推しでした。

ちあき

頭に浮かんだ言葉。

そうだ。私の推していた人だ。

好きなアニメの最推し。

長い間推していた気がする。

なのにどんなキャラだったのか、どんなアニメだったのか、

名前、設定、ストーリーもセリフも他に居たキャラクターも思い出せない。

何一つも彼について思い出せない。

でも、好きだった事だけは覚えている。

スーツを着ているから営業マンキャラだっただろうか。

…心当たりも、これじゃない感と言うのも浮かばない。

考えているといきなり顎を引かれた。

首に負担がかかる。

「ちあき。」

そうだ。ちあき。彼の名前だ。

あってしまった目。

近くで見る彼の目は翡翠色に輝いて見えた。

吸い込まれるような感覚。

「目。…綺麗だね。」

つい零れた言葉に口を塞ぐ。

ちあき君の顔を見ると歪んで見えた。

そっと目をそらす。

何か気に触ることを言ってしまったのだろうか。

言葉を取り消そうと急いで頭を回していると段々と視界がぐらついてきた。

暗くなる視界にちあき君の焦った顔が見える。