上 下
10 / 19

盲目

しおりを挟む

「ところで世良。目はもう光を写していないのか?」

ドキリとした。

ちあきには、目が少し見えなかった時も言っていなかった筈だ。

「なんで?確かに、もう何も見えない…」

盲目に対して恐怖心を抱くべきはずなのに全然落ち着いている。

心做しか鼻や耳が良くなった気がした。

ほんの少しだけ。

「…そうか」

悲しそうな声が耳に響いた。

長かった間が悲しさを物語っていた。

ちあきはどんな顔をしているのだろう。

本当に何も見えない。

これじゃあここから出られてもお母さんとお父さんに迷惑かけてしまう。

「安心してかっこいいのは見えてるから」

何も考えずに出たその言葉。

同時にどさりと言う音が響いた。

焦ったちあきの声が頭にこだました。
しおりを挟む

処理中です...