上 下
19 / 19

取り残された

しおりを挟む

「ママっママッ」

いくら泣き叫んでも届かない。

「嫌だッ嫌だよッなんでパパもママも僕を置いてくのッ」

「浩ちゃん…世良は…」

 「じーちゃんもばーちゃんもばぁばも嫌い!!!」

きっとみんな嘘吐きなんだ。

ママとパパは僕を置いてったりしないッ寝てるだけだ。

「浩くん。こっちにおいで。お姉さんと」

「嫌だ!!看護師のお姉さんよりママがいい!」

「浩!!」

ばーちゃんが怒った。

「ッはい」

「世良さんは亡くなったの。」

「ッ」

「ちょっと美恵子さん…」

「だから、お見送りする時は泣かないで笑顔で見送ろ。」

ママが居なくなっちゃうのに笑顔で…

「それじゃあママがいなくなるのをみんな喜んでる見たいじゃん!!!」

ヨダレか涙か分からない。

病院の先生は困った顔をしている。

別に困らせたいわけじゃないもん

いい子にしてないとママもパパも困るからそんなことしたい訳ないもんッ

カシャッ…

いきなり個室のドアが開いた。

作業服を着ている男の人。

「すみませんでした。私のせいで」

お酒の匂いが広がった。

ニマニマと笑う男の人。

「何しに来たんですか?」

ばぁばが怒ってる。

看護師さんにうでをひかれた。

それで何となくわかった。

この人だ。

「人殺しッッ」

「僕のママとパパを返せッッ返してッッ」

「なんでッなんで笑ってるんだよッ」

「臭いよおじさんッ」

看護師さんにそのまま個室から出された。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...