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08.

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「ルゼリフィア様‼︎ ご無事で‼︎ 」
屋敷に辿り着くと、執事や侍女長、厨房長、庭師、皆に泣かれ迎え入れられる。

「心配をかけた。すまなかった。だが私は無事だ。安心して欲しい 」
自然と笑みが溢れ、大事無い事を伝える。
「無事なものですか‼︎ お嬢様の赤金色の尊い御髪がこんな薄汚れられて! しかも何です、何で血が所々にこびり付いているんですか‼︎ 」
侍女長が泣き崩れ、侍女も涙ぐむ。

「これは返り血だから大丈夫だ」
心配する必要ないと伝えるも、余計に泣き崩れた。なぜだ?

「直ぐに父上に謁見を申し込む」
簡易的に旅装を解き、足早に執務室に進む。

「湯浴みは必須ですわ、お嬢様‼︎ 」
部屋付きの侍女ララも涙ぐんではいるが進路を立ち塞ぎ両手を広げる、が、まだ幼く小柄なので可愛く思えて頭を撫でてやる。

「なっ!あ、ああっ‼︎ お嬢様以外にイケてる殿方なんていませんとも‼︎ 」
赤面し蹲る。

ああ、帰って来たのだな、と思う。
日常的な風景が見えて漸くそう感じられた。思ったより、私も感傷的らしい。あの子をそうとやかく言えんな。又はあの子との感覚共有で変わったか。

「わかった。湯浴みをしてから父上と会うとしよう」

「ああ、お嬢様!尊い‼︎ 」

背後から熱烈に言われるがいつもの事なのでスルーした。

背後を振り向き
「お前達も頑張ってくれ、予想以上に早く帰途につけた。礼を言う。浴場を解放するから埃を流し、食堂では暖かい食事に年代ものの酒を振る舞おう。明日の鍛錬は休みとする!」

立て続けに言うと歓声が響き、兵達は各々で解散した。

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