悪役令嬢だからってここまでする ⁉︎

sora

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10.

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「酔っているのか?珍しいな」

お前でも酔うんだな、と親近感が湧く。
隊の皆は酒が強く酒豪だ。
私はあまり強くないし、すぐに顔に出る。
「食堂は盛り上がっているだろう?私は今からアンヌの容態を見ようと思ってな」
「お嬢様」
思いつめた様な声。
バロットには似合わない。
「どうし」
最後まで言えなかった。長身のバロットが壁に手を付き屈みながら、私の口を塞いだからだ。酒臭い。顔を顰めるも、バロットは唇で覆い舌を乱入させ歯列を舐め上げ、私の口内を余す事なく味合う。

絡み酒か?
こいつ、睫毛長いな。
あれか。酔うとしたくなる?
当主の娘相手に?
馬鹿か?

バロットの足が私の太ももの間に割り入り右手で左手首を。左手で右手首を拘束し煽情的な眼差しで私を貪る。

月夜に照らされ、浮かび上がる酷薄な顔。戦場での怜悧な眼差しは今は瞼の奥に隠され舌音だけが耳に響く。ちゃらけた所もあるが、あれは対外用に作っている。本質は父と同じ。私とは相入れない。

「っ」
バロットが唇を離し銀糸が引かれる。
藍色の双眸が射竦められ、眉を顰める。

「いや、顰めたいのはこっちだぞ」
「余裕なあんたをぐずぐずに溶かしてやりたい」

言葉とは裏腹に底冷えのする眼つきで獣の様に笑う。

聞いてないな、こいつ。
こんなに酒の廻りが早い奴か?

バロットは手にした酒瓶を煽り、私の頤を持ち
なっーー‼︎ 

とてつもなく度数の高い酒を私の喉に流し込む。

涙目になり、視界が霞む。頬や胸が急激に熱くなり、足元がふらつく。

これは北国に遠征に行き、哨戒兵が凍え死なん為のものだ。誰だ、どこから出した⁉︎ 批難の声も出ず、苦しく息を吐き出す。

「   」
文句も言いたいが、喉が渇き熱いままだ。
睨むと、涙で薄くぼやけたバロットが可笑しくて堪らないという顔で、また酒を煽り私を抑え注ぐ。

「ごほっごほっごふ」
やめろ、と言いたいのに咳き込むばかりだ。

「お運びしましょう?お嬢様」
慇懃無礼に言われ、抵抗虚しく抱き上げられる。
口元に笑みを湛えて。

こいつ‼︎
なぜ、こういう時に限って廊下に誰も居ないんだーー⁉︎

バロットは優雅に私を運び、部屋に向かう。


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