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第一章 春の真ん中、運命の再会
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しおりを挟む「いやそれが、さっき電話をしたら、亜弓は予定が入っていて来られないってさ」
『そうなんだ……』
目に見えて、三池の声のトーンが下がる。亜弓は東京の会社に就職してしまったから、たぶん三池とはほとんど会っていないはずだ。久しぶりに親友と会えるかとぬか喜びさせてしまったか。
三池の心を少しでも引き立たせそうと、俺は先刻の電話での亜弓の様子を話題に乗せる。
「なんか、初ハワイ旅行で日焼け三昧するんだって、妙に張り切ってたよ」
『うふふ。そっかー。あーちゃんは、相変わらず元気そうだね』
「ああ、元気だけがあいつの取り柄だからな」
少し残念そうに笑う三池に、俺は肝心の答えをもらうべく、ごくりと喉を鳴らして口を開いた。
「で、五月五日の日曜日の午後1時からなんだけど、三池、応援に行けるか?」
『あ、うん。もちろん! ぜったい行くよっ』
おお。やった。三池に会える!
それも、二人きりで、サッカー観戦。
亜弓、海外旅行に行ってくれて、ありがとう!
お前でも、たまには役に立つことをするじゃないか。
「じゃあ、当日、俺が車を出すから、どこに迎えにいけばいい? 自宅でも最寄りの駅でも近くのコンビニでも、ご要望があればこの運転手めが馳せ参じますぞ、お嬢様」
おどけて言えば、三池は申し訳なさそうに、でも笑いを隠せない声で『それじゃ、自宅まで来てもらっちゃってもいいかな?』と、かなり嬉しい申し出をしてくれた。
自宅の住所を聞いたら、俺の家から車で1時間ほどの隣りの市だった。俺が勤めている会社から意外と近いことに驚いた。
三池の自宅からサッカースタジアムまでは、40分といったところだ。逆算すると、三池の家には余裕を見てお昼に行けばいいだろう。
そう言ったら、タクシードライバーをさせてしまうかわりに『お昼をごちそうする』という、スペシャル・サービスを申し出てくれた。
なんでも、三池は実家住まいで、その実家は和風レストランをやっているそうで、『ぜひ父の作る和風ハンバーグをごちそうしたい』とのこと。
いきなり、親父さんとのご対面!?
と少しびびった感は否めないが、俺にNOの選択肢はあるはずもない。
そうか、三池の親父さんは和風レストランのシェフなのか。そう言えば、高校の時に三池が俺たちに振舞ってくれたおかずやお菓子はどれもかなり旨かった。親父さん直伝の本格的な味だったわけだと、妙に納得した。
こうして俺は、初恋の人・三池陽花と七年ぶりの再会を果たすことになった。
それも、父親とのご対面付きという、スペシャルイベント付き。
なんとも、楽しいゴールデンウィークになりそうだ。
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