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日本人の中年オッサン、異世界でボコられる

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ふっと目を覚ました時には、真っ暗で視界が見えない?

臭っ!どうやら俺の頭に臭くて粗末(そまつ)な麻みたいな粗い網目の袋をすっぽりと被せられ、
両腕は後ろ手に、重い金属の輪っかで拘束され、
これが明らかに現代の手錠のような洗礼された代物では無く、
例えるのなら、昔!映画かドラマで観たような!
中世ヨーロッパの囚人が付けられているような大袈裟な鉄で出来た手錠がされていて、
両足もロープなのか太い縄で縛られていた。

目が覚めたのには、もう一つの要素も有り、

ガタガタと凄い揺れの板張りの床に無造作に寝かされていたから、これって馬車か?
荷馬車、囚人や凶悪犯を輸送する昔の馬車に拘束され、
揺れて木の床に何回も頭を激突されるから、
堪らず目を覚ましたって訳だ。

そんな状況で目が覚めた俺は、突然の状況にパニックになった。

当然だろう?
今まで普通に、では無いが、それなりに生きて来た日本では絶対に味わえない、
昔の中世か!はたまた中東の山奥!
パキスタンとかの高原田舎なのかゲリラなのかに拉致された状況なのだから、
冷静でいられる訳は無い筈だ。

この状況で冷静な人間がいたら、正に映画の中の主人公シュワちゃんとかスタローン!
古いかっ、
今ならトム・クルーズ、あの元プロレスラー俳優のドウェイン・ジョンソン!

あんな身長もでかくて、身長190cm以上、確か196cmだったはず。

で、筋肉が一流のボディービルダー顔負けの筋肉バカなら、
一般人に比べたら、特に俺のような運動なんか大嫌いで、そろそろ本格メタボな、
ぶよぶよな中年オッサンで、
しかも典型的な小柄な東洋人で日本人の彼らからはチビと言われるだろう身長170cmも無い非力なオッサンにとっては、
今の状況は驚異としか感じないだろう?

だから、小説や映画やドラマ等では、騒がず、冷静に、まずは自分のおかれた状況を把握して?
みたいには、急にこんなヤバい状況で目覚めたら、脳が一気にパニ喰って、騒いでしまいますがな。

目が覚めて、急に暴れ出す小男のオッサン!

身長を出来れば170cm越えを目指して、牛乳を思春期に毎日500mlは飲んだのに、
167cmで1ミリも成長せず、反対に

今では中年オヤジの不摂生した食生活でまさかの身長が縮んだ166.5cmになった身体でこの状態を打破することは出来無いのは分かりますが・・・

って!この状態では全く脳が働かないですから、
臭くて暑苦しい麻の汚い袋が被った頭を上下左右に動かすもんだから、
当然!まずは馬車の荷台の横板に頭をぶつけて激痛と火花?ホントに頭を強く打つと、
目の前って、麻袋の前で火花のようなキラキラが目に映り、
俺は今では臭い袋の中に、自分の涎やら、鼻水、涙やらをカッコ悪くもダラダラと垂らしながら、
蠢(うごめ)いたり叫んでいた。

あまりの頭の強打にって、自爆だけど、
徐々に騒ぐ力が衰え始めた頃、
俺の腹に長い棒状の物がそこそこの力で小突いて来た。

そこそこって言うのは、俺がゲロしない程度だ。

「うるせえんだよ!」

え?日本語!日本人!俺は小さな希望を胸に、
声のする方へと、まだくらくらする頭を気力を振り絞り向けた。

粗い麻の無数に開いた小さな穴粒から、少しだけ外の風景が微かに見えた。

そこで見たのは、まるで映画!
中世ヨーロッパの騎士なのか兵士が身に付けているようなシルバーの甲冑をつけた外人!
まさに映画やドラマに出てくる甲冑を着た大柄な外人!
粗野で、ガ体(たい)のデカイ無知そうな白人男性が馬車の揺れを注意しながら、
しかし重量のある身体をのっしのっしと数歩近付き、
これまたシルバーの脛あて甲冑付きぶっとい脚で、
思いっきり俺の頭を蹴り上げ、その物凄い破壊力に、
痛っとか思う0.01秒で秒殺!
意識が飛んでブラックアウトしてしまった。


何度かおぼろげながら、目を覚ましたのだが、
俺の頭もハッキリしないし、それよりも俺の身体が弱っている?
身体が熱く、高熱を出しているのと、頭がぼんやりしていて、
目に見える光景は、まるで映画とかでよくある、主人公達が見る夢や昔の記憶?
のソフトフォーカス画像処理されたぼんやり映像で、
断片的な映像は、石造りの城なのか?

牢獄のような円柱の塔を登る螺旋階段を、
二人の屈強な甲冑兵士に脇に手を入れて支えられ、
一緒におぼつかない足取りで登っていて、次のシーンでは場面が飛んで、石作りの牢獄の中!
室内は暗い?
微かに明るい!
火!
ランプが近くに置いてあり、やはり外人の女?
服装的には修道院の尼さんの格好をした若い女性が、
仰向けに寝ていて、高熱を出して、
凄い汗を掻いている俺の顔や首筋を濡れた手拭で拭きながら、
額にもう一つの濡れた手拭を取り替えては、
看病している感じだった。

そこで、俺は少しでも身体が動けるのであれば、
と、身体を起こそうとしたが、全く身体に力が入らず、
白人の看病する女性に
「無理をしてはいけません!」
みたいな言葉を、やはり日本語で話されたので、妙に安心したのか?
また、意識が飛んで深い眠りに就いた。


どのくらいの間!俺は眠っていたのだろう?

頭はまだぼんやりしているが、意識!目が覚めた。

目が覚めて真っ先に見えたのは薄暗い牢獄?

中世ヨーロッパの古城の牢屋!

古い石で出来た天井が見えた。

外は夜なのか?
しかし、微かに牢屋の小さな窓?と言っても鉄格子付きの窓で、
勿論!ガラス窓では無く、内側に気の観音扉があるだけで、
そこから月明かりの、ような淡い光が差し込んでいた。

俺は無意識に身体をゆっくりと起こし始めた。

なんとか俺の身体は動いた。

あの、数日前?
多分、その位前の俺の身体は高熱と物凄い体のダルさで上半身を起き上がることすら出来ず、
う~う~唸っているのが関の山状態だったから、
あの感覚が今では嘘のように無くなっているのが、正直!嬉しかった。

改めて、映画のセットのような中世ヨーロッパ風の石造りの牢獄を見渡し始めると、
俺の丁度!反対側の壁側にも俺と同じような?

いや、俺よりはちゃんとした木製の簡易ベッドがあり、
ベッドの横に座っている身体が細い人影が見えた。

「起きたのか?」

その言葉は日本語で、しかも若い女性の声だった。

日本女性に比べたら低い声だが・・・

俺は一瞬ビクッとして、俺が寝ていた簡易ベッドの段差の角、
石で出来たベッドの角部分に脹脛をぶつけて

「痛っ!」

と言いながら、冷たい石の床に転げ落ちた。
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