36 / 73
7日目
銀色のハサミ
しおりを挟む
「さーて、と。じゃ、始めるか…。」
今日は、調教台でも調教用の拘束ベッドの上でもなく、背もたれも何もないただの丸椅子の上に座らされていた。
一体どんな調教を受けるのかと思っていると、ザラキアが、調教用具の中からギラリと銀色に光るハサミを取り出して近づいてくる。明らかに切れ味のよさそうなそれをシャキシャキと鳴らす姿に、さっと怯えが走った。顔色を変えてビクン!と身体を竦ませるシンジが何を考えているのか察したのだろう。彼は肩を竦め、フンと鼻を鳴らす。
「バーカ、性奴隷の身体に傷はつけねぇって言っただろうが。髪だ、その髪。妙に長くて野暮ったく見えらぁ。──このザラキア様は芸術家だからな、晴れの舞台に相応しいようにしてやる。いいか、絶対に動くんじゃねぇぞ。」
「…あ、──は、はい…っ。」
ザラキアは神妙な顔つきで銀色のハサミを構え、あれこれ思案しながらシンジの黒い髪をジョキッ、ジョキッ、と少しずつ切り整えていく。時々、顔の上を払う羽箒が妙にくすぐったい。身なりにあまりこだわりがなく、美容院というものとも縁遠かったシンジにとって、人の手で丁寧に調整されながら髪を切られる、というのは初めてに近い体験だった。
だいぶ長い時間を掛け、時々櫛で整えながらシンジの髪を切り揃えていたザラキアは、やがて出来栄えに満足したのか、満足げに腰を上げる。
「よーし、こんなもんだろ。どうだ、俺様の腕、なかなかじゃねえか?」
手鏡を渡され、その中に映っていた自分の顔に、シンジはただただ溜息を吐くことしかできなかった。中途半端に伸びていた髪は綺麗に梳かれ、目を隠すように伸びた前髪は切り整えられて、額の真ん中で左右に分けるセンターパートのショートにされている。今まで、こんな髪型にしようと考えたことはないし、それどころか、似合う髪型を探そうという発想そのものがなかった。しかし、童顔のシンジの顔立ちにはとてもよく合っている。
「お前は、歳の割に見た目幼いからな。あと、こうして分けた髪は、ヤッてる最中に汗で崩れて乱れ掛かってくるところがポイント高い。ソドムの人間には珍しい、貴重な黒髪をあまり短くしすぎても勿体ないだろ。」
得意げに目を細めて笑うザラキアの芸術家としての腕は確かなようだった。しばらく、信じられないようなものを見る目つきで鏡に見入っていたシンジの全身から切られた髪を羽箒でサッサッと払い落し、手首を掴んでベッドの上に連れて行く。
「──あ…っ…。」
仰向けに、トサリとベッドの上に沈められ、シンジはぱちぱちと瞬きしながら覆い被さってくるザラキアの顔を見上げた。長い藍色の髪を掻き上げながら覆い被さってくるザラキアは、しかしその服を脱ごうとはしない。
「今日は、徹底的に寸止めだ。明日のショーで、より一層淫乱になるように…満足は一切させねえからな。ただ、感じ切れ。」
そして、手にしたままだった、鳥の風切り羽根を束ねて作った羽箒で、ツンと尖り立ったシンジの乳首を片方、こしょこしょと軽く擽ってくる。
「──あ…あぁ、…んっ…!」
たったそれだけの刺激で、全身がビクンと跳ね上がった。そこだけでイけるようになるまで仕込まれた乳首への刺激は、ダイレクトに腰の真ん中を疼かせてくる。ざわ、と牡の器官に血が集まるのを感じた。もっと強い刺激が欲しくて必死で背筋を反らせるのに、羽根でできた箒はただそこを軽やかに擦り付けてくるだけで、もどかしいばかりの快感が神経を磨き立て、感覚を尖らせてくるばかりだ。
『乳首も…前も、もっと触られたい──。もっと強くされたいのに…。』
眉尻を下げ、切なげに腰を振っても、ザラキアがそれ以上の刺激を与えてくることはなかった。硬く立ち上がった乳首の上をぞりぞりと柔らかく擦るだけの羽根の先は、時折左右の位置を入れ替えながら、弄られるだけのシンジの息を熱く上げていく。
今日は、調教台でも調教用の拘束ベッドの上でもなく、背もたれも何もないただの丸椅子の上に座らされていた。
一体どんな調教を受けるのかと思っていると、ザラキアが、調教用具の中からギラリと銀色に光るハサミを取り出して近づいてくる。明らかに切れ味のよさそうなそれをシャキシャキと鳴らす姿に、さっと怯えが走った。顔色を変えてビクン!と身体を竦ませるシンジが何を考えているのか察したのだろう。彼は肩を竦め、フンと鼻を鳴らす。
「バーカ、性奴隷の身体に傷はつけねぇって言っただろうが。髪だ、その髪。妙に長くて野暮ったく見えらぁ。──このザラキア様は芸術家だからな、晴れの舞台に相応しいようにしてやる。いいか、絶対に動くんじゃねぇぞ。」
「…あ、──は、はい…っ。」
ザラキアは神妙な顔つきで銀色のハサミを構え、あれこれ思案しながらシンジの黒い髪をジョキッ、ジョキッ、と少しずつ切り整えていく。時々、顔の上を払う羽箒が妙にくすぐったい。身なりにあまりこだわりがなく、美容院というものとも縁遠かったシンジにとって、人の手で丁寧に調整されながら髪を切られる、というのは初めてに近い体験だった。
だいぶ長い時間を掛け、時々櫛で整えながらシンジの髪を切り揃えていたザラキアは、やがて出来栄えに満足したのか、満足げに腰を上げる。
「よーし、こんなもんだろ。どうだ、俺様の腕、なかなかじゃねえか?」
手鏡を渡され、その中に映っていた自分の顔に、シンジはただただ溜息を吐くことしかできなかった。中途半端に伸びていた髪は綺麗に梳かれ、目を隠すように伸びた前髪は切り整えられて、額の真ん中で左右に分けるセンターパートのショートにされている。今まで、こんな髪型にしようと考えたことはないし、それどころか、似合う髪型を探そうという発想そのものがなかった。しかし、童顔のシンジの顔立ちにはとてもよく合っている。
「お前は、歳の割に見た目幼いからな。あと、こうして分けた髪は、ヤッてる最中に汗で崩れて乱れ掛かってくるところがポイント高い。ソドムの人間には珍しい、貴重な黒髪をあまり短くしすぎても勿体ないだろ。」
得意げに目を細めて笑うザラキアの芸術家としての腕は確かなようだった。しばらく、信じられないようなものを見る目つきで鏡に見入っていたシンジの全身から切られた髪を羽箒でサッサッと払い落し、手首を掴んでベッドの上に連れて行く。
「──あ…っ…。」
仰向けに、トサリとベッドの上に沈められ、シンジはぱちぱちと瞬きしながら覆い被さってくるザラキアの顔を見上げた。長い藍色の髪を掻き上げながら覆い被さってくるザラキアは、しかしその服を脱ごうとはしない。
「今日は、徹底的に寸止めだ。明日のショーで、より一層淫乱になるように…満足は一切させねえからな。ただ、感じ切れ。」
そして、手にしたままだった、鳥の風切り羽根を束ねて作った羽箒で、ツンと尖り立ったシンジの乳首を片方、こしょこしょと軽く擽ってくる。
「──あ…あぁ、…んっ…!」
たったそれだけの刺激で、全身がビクンと跳ね上がった。そこだけでイけるようになるまで仕込まれた乳首への刺激は、ダイレクトに腰の真ん中を疼かせてくる。ざわ、と牡の器官に血が集まるのを感じた。もっと強い刺激が欲しくて必死で背筋を反らせるのに、羽根でできた箒はただそこを軽やかに擦り付けてくるだけで、もどかしいばかりの快感が神経を磨き立て、感覚を尖らせてくるばかりだ。
『乳首も…前も、もっと触られたい──。もっと強くされたいのに…。』
眉尻を下げ、切なげに腰を振っても、ザラキアがそれ以上の刺激を与えてくることはなかった。硬く立ち上がった乳首の上をぞりぞりと柔らかく擦るだけの羽根の先は、時折左右の位置を入れ替えながら、弄られるだけのシンジの息を熱く上げていく。
60
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる