とある少女の異世界奮闘記+α

輝国 飛鷹

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試練・精霊契約編

第22話《アースクエイク》

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      10


「~~~!!?」
「騒ぐんじゃねぇ!」
  鉄格子を蹴り飛ばす音。黒服の一人は苛立った様子で口を開いた。
「もうお前は売られるんだよ! 分かったら大人しくしてろクソガキ!」
  黒服はその場を立ち去った。
「……………んん、ぅん…………」
  少女は口をガムテープで塞がれ、手足の自由を奪われていたのだ。
  ここは…………どこだ?
  再びあの牢屋と同じ、冷たくて悲しい場所。やっぱり周囲の状況が掴めないくらい、視界が暗い。体は横になって、もう自力で脱出する望みは無に等しかった。

「てめぇはしばらくここにいろ」

  カモメの男は連れてきて早々、少女を再び奈落に突き落とした。だがいつもと違っていたのは、彼が随時焦っていた点である。
 到着してから、ずっと額に汗を浮かばせ、焦燥を露にしていたのだ。あちこちに移動しては、握った携帯端末をチラチラと覗き、舌打ちをしてはそのループ。
  ここまで焦ったようすの彼を、少女自身見たことがなかった。商品ナンバー213とバカにしていたあの男が、何かは知らないが、焦っている。事が上手く運んでいない。
  それだけでも少女は密かに笑っていたのだ。
  ここまで滑稽こっけいなものはないだろう。常に上の位に居座っていた人間が、こんなにもなってしまうことは、下から見れば右往左往している子供のようにしか見えないのだ。
  そうだ。彼は言っていたではないか。自分は単なる“下っ端”だと。
  何度も何度も、その言葉を少女は反芻した。

(ということは、今上の人からの連絡を待ってるのかな?)
(けど、そうなると私の取り引き相手は、カモメ男あいつの上の奴らってことになるよね?)
(そいつらは、いったい何を考えて私を………?)
  いや、理由は分からなくもない。それは自身のに関係しているのだと、少女は推測していた。
  自由を奪われた両手両足を屈指して、何とか体を起こした。
  光は入り口の鉄格子からのみ。それ以外は闇の世界だ。窓等は一切ない、コンクリートの、箱のような部屋だ。
  前言撤回だ、と少女はここに宣言した。
  よく考えれば、少女が簡単に一般の人間(といっても異常者なのは間違いないが)に売られるわけがないのだ。彼女の“正体”を考えれば、大きな“利益”を手放してるのと同じだから。
  ということは…………そこで彼女の想像は、最悪なものへと姿かたちを変える。

  自力で脱出する望みは無に等しい? それでも逃げ出すしかないのだ。なければ、生み出すしかない。その消えた望みを。
(………でも、どうやって立ち上がれば………)
  まずは足の自由が最優先である。何か鋭利な刃物でもあれば、縛ったそのロープを切り離せるのに。
  だが、辺りには何かあるような気配は一切ない。単に闇が全てを包み込んでるだけかもしれないが、奴らがそんな初歩的なミスをするとも、少女は思えなかった。
  しばらく少女は、地を這う形で少しずつ移動し始めたが、そこでチクッとした痛みが広がった。
(な………なに? なんか床からとんがった物が………)
  それに近づき、じーっと見つめて分かった。
  これは飛び出した釘である。
(………これなら、もしかしたら………)
  できるかもしれない。
  少女は足のロープに釘を引っかけた。釘先がロープを貫通し、徐々にその絡みをほぐした。
  足のロープはブチっと切れた。
(やっ………やった………!)
  声にならない歓喜の声をあげ、立ち上がった。ついでにうでのロープも切ろうとした、その時。
「ごらクソガキ!」
「!?」
  黒服に鉄格子から大脱走の過程を目撃されてしまったのだ。
(やばい………逃げなきゃ!)
  だがその範囲はこの箱の中だけ。少女は部屋の角に引っ込んだ。
「てめぇ………今何していた。なぜ足が自由になっている!」
「………!」
  角に黒服を誘きだし、すぐさま次の角へ移動した。
「おいクソガキ、こっちはなぁ………遊んでる暇はねぇんだよ」
  黒服は怒り心頭の声で。
「俺たちはお前の買い手である、の到着をひたすら待ってんだよ。だからてめぇを監視してる場合なんかじゃねぇんだよ。分かるだろ?」
  知ったことではない。襲いかかった黒服を上手く避け、次の角に。
  黒服は、
「なんだよ…………どいつもこいつも勝手なことしやがって。あぁいいぜ………先ずはてめぇからぶっ飛ばす!」
「…………!?」
  速かった。あっという間に距離を詰められた。少女はガシッと首を掴まれ、宙に掴みあげられた。
「~~~~~~~!!!??」
「ははぁ…………これで力を入れたら死んじまうよなぁ? ブチブチに千切ちぎれちまうよなぁ!?」
「ウゥン~~~~ヴゥん~~~~!??」 

(く………狂ってる…………)
  どうしてこうも私は不幸なの? なんで人間はこうも残酷な生き物なの?
  この黒服に問いただしたかった。口の自由さえあれば…………。
  力が入っていくのが分かる。頸動脈あたりが潰れそうな勢い。
「さぁ死ねよ………さっさと死ねぇぇぇ―――」

「『ナンバー579、スリーピング!』」

「えぇぇぇぇぇぇ――――がぁ…………がぁ  …………」
「!?」
  黒服は突如として眠りについた。首もとにかかる力がスッと抜けて、少女は地に落ちた。
  黒服はその場でバタリと倒れ、変わらず夢の世界へと向かっていった。
  少女が目を丸くしていると、突然何者かが肩に手を添えてきた。ビクッと振り返ると、茶髪の少女が温かみのある口調で言ってきた。
「きみ、大丈夫か?」
「…………………ヒッ」
「ひ?」
「ひゃあぁぁあぁ!」
  少女は泣き出してしまった。
「え、え、え!? なに、俺なんかしたか!?」
「あーあ、アヤノンちゃんが泣かせたのです。これは重罪なのです。ぶっ殺してやるのです」
「冗談きついぜマリナーラ。だからさ、せっせと魔法書開くな。おい閉じろ、変な考え浮かばせてんじゃねえ!」
「あなたが言えた義理じゃないのです。女の子を………しかも小さな、こんな可愛らしい女の子を………!」
「おいキャラ変わりすぎだろ。いったいお前に何があったよ!?」
「やけくそは素晴らしいのです。自分のリミッターが外されるのを感じる………これが本当のわたし!」
「なにそれお前そんなに目立ちたいのか? だったらお前はカモメ男に対決挑んでこいよ」
「アヤノンちゃんは?」
「安心しろ。お前を見捨ててこの子を救出するから」
  アヤノン、と呼ばれた少女はスッと腰を下ろし、少女に寄り添った。
「俺たちはお前を助けに来たんだ。もうじき警察もやって来るだろうから、もう心配はいらないぜ」
「…………どこから侵入したの?」
  少女は尋ねた。
「ん? 真正面から」
「じゃあ………あの黒服たちを倒してここまで?」
「うん。けっこう骨のある奴ばかりだったけどね」
「その際に私がいたからこそ倒せたも同じなのです」
  マリナーラと呼ばれた少女は言う。勝ち誇ったような表情である。
  アヤノンは振り返った。
「たしかにそうだな。お前の『スリーピング』がなかったら負けてたよ」
「ふんっ。精々私に感謝することなのです!」
「そういえば君はあのカモメ男がどこにいるか知ってる?」
  プイと無視し、少年のような眼差しのアヤノンは、少女と向き直った。
「カモメの男………知らない。ここに入れられてから、私ずっと独りだったから」
「そっかぁ…………クソッ、どこに行ったんだ親玉は」
  アヤノンは立ち上がり、苛立った様子で呟いた。
「………あのカモメ男、いないの?」
「はいなのです。黒服は全部ノックアウトにしたのです。けど当の本人が見当たらないのです…………」
「………まさか、逃げたか?」
  マリナーラは首を縦に振った。
「その可能性は否定できないのです。もし私たちの存在をすでに感知していて、真っ先に逃げたとしたら………」
  アヤノンは数分前の記憶を掘り出し、再生する。
  カモメ男が妙にキョロキョロと警戒している様は、やはりこちらの動きに感づいてたのだろうか。
「………、元凶は叩けずじまいになっちまったな。これじゃあ、また新たな人身売買の犠牲者が出てきちまう」
  指名手配犯がいる限り、人身売買の被害が絶えることはないだろう。かつてない悔しさに、雰囲気が緊張状態に入る。
「あ、あの……………」
  そこへ、少女は小さく分け入った。
「その………どこの誰か知らないけど………助けれてくれて、その………ありがとうなの」
  その笑顔に、二人の表情が和らいだ。緊張した雰囲気もすぐに消え去る。
「気にすんなよ。俺たち変人二人が、事件に首を突っ込んできただけさ。それよりもまぁ………無事でよかった」
  アヤノンの笑顔とは裏腹に、不服気味な人物が一人いた。
「あのアヤノンちゃん? なんで私も含めて“変人”なのですか? うん?」
「もうちょっとで警察来るだろうけど、どうしようか。もう外にでるか?」
「ちょっ…………無視はひどいのです」
「うん、外にでるの。もうこんな暗いところはいやなの」
「二人して無視なのですか!? ひどい、ひどすぎるのです。あんまりなのです!」
「おい騒がしいぜマリナーラ。なんでそんなにお前はエキサイトなんだ」
「別に興奮してないのです。ただ悲しいだけなのです!」
「落ち着けよ。この子も怖がってるだろ」
  少女はアヤノンの背後に回り込み、涙目でマリナーラを見据えた。
「怖い…………この人変なの」
「変人じゃないのです!」
「わわっ………怒ったの。怖いの!」
「よしよし、大丈夫だから。この口調のおかしなオバサンは害なんてこれっぽっちもないから」
「全然フォローになってないのです! なんなのですか『害』って、『オバサン』って!?」
  それは強風を仙人が軽く受け流すようにスルーされた。少女は立ち上がる。
「はやく外にでるの。私、思い出したの」
「なにを?」
  アヤノンが問いただし、マリナーラが背後から魔法による襲撃を企む中。

  それは起こった。

  急に建物が揺れ動き、地鳴りが響き渡り始める。パキンッとガラスが砕ける音がする。
「わっ!?じ、 地震か!?」
「い、いやぁぁぁぁ!」
  少女は叫び、腰を抜かして倒れこんだ。
「ア、アヤノンちゃん。ここはひとまず逃げるのです!」
「あ、ああ!」
  アヤノンは少女を担ぎ上げ、部屋を後にした。
  するとどうだろうか。
  今にも崩れそうな音を立てて、部屋の天井が落ちてきたではないか。
  牢屋を出たと同時に、崩壊の波が姿を現す。
「なっ……………!? あぶねー…………」
「これは本格的にマズイのです………!」
  そこから滑り込むように階段を下った。
  ちなみにもといた所は三階であるから、降りた先は二階である。
  しかし、三人が一階に降りる前に、地震という自然災害は、静かに去っていった。

  グラグラ―――と、平衡感覚が傾いた。まだそれが尾を引いている。
「…………助かったのですよ………ね?」
「…………うん、そりゃあ―――あ!?」
  そこで待っていたのは―――二次災害。
  建物の天井が少しばかり崩壊し、鉄骨が降ってきたのだ。
「あぶなっ――――」
  あっという間に鉄骨が、少女たちのもとへ―――
  アヤノンは目をつむった。
 

  





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