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Y組職業体験編
第60話《黒の守護者(ブラック・ガーディアン)》
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政府中央都市には数々の『最先端』が出揃っている。
ファッションの最先端、科学技術の最先端、流行の最先端、遊具の最先端、教育の最先端────。
全世界から集積した『最先端』を棚の端から端まで並べたような町、それが政府中央都市なのだ。
政府中央都市に住む人間というのは、先ず大前提に『恵まれた人間』というのがある。
要は金を余るほど持ってる資産家の人間やら大手企業の人間。『金』という縛りを無くせば、生まれた頃から天賦の才を引き継ぐ者、絶対的権力を持つ者、政府議員の一族などが挙げられる。
つまり政府中央都市は『選ばれた人間』しか住むことが許されない場所である。
政府中央都市にはまずビル郡と高級マンション、それから公共の一流機関しか目に入らない。それ以外は全てが除外された異空間でもある。
そんな異空間のような中で、住民たちは暮らしている。
魔法の集積地区『B地区』や科学の集積地区『C地区』はまだまだ田舎に過ぎない、と。
そんな愚かな思想を各々が抱えたまま、彼らは暮らしている。
しかし、そんな都会のど真ん中から───さらに端の都会に行くと、風景は一変する。
政府中央都市にも『田舎』というものは存在する。最も、それは中央都市の人間から見た『田舎』であり、B地区やC地区の人間から見れば『都会』である。
そんな『田舎』のさらに端に────アイザック家はその存在を獲得している。
『金』や『権力』も泉から湧き出るくらいに持っているのに、敢えてその素晴らしき地位を遠慮し、こんな『田舎』の地で一族を構えている、何ともおかしな名家である。
地元の人間も恐れおののき、普段から近寄る者はほとんどいない。それどころか、中から人間が出てくる所を目撃した者さえいないという。
人々はアイザック家と関わったことはない。だがその不気味な想像から、ある噂が頻繁に囁かれるようになった────。
あの家には霊が現れる、と────。
4
風が吹き寄せた。
ヒュー、ヒュー、ヒュゥ、と。
意思を持っているのか、その風は少女のスカートの下から入り込み、巻き上げる形で渦を巻いている。
少女はスパッツを穿いていた。だから恥じらいなど感じなかったのかもしれない。少女はスカートが上に巻き上がっても気にも留めなかった。
いや────違う。
少女はそんな事で無防備になっているのではない。それならば隣に立っているツインテールの少女も同様だ。こちらはスパッツなんて穿いていない。完全完璧に下着である。水色のストライプ柄に、それが締め付ける太ももが妖しく覗けるが、やはりこの少女も気にも留めていない。
少女たちは、ある黒い洋館をじっと見つめていた。
巨大な洋館だ。門構えからすでに異彩を放っていて、近寄ることさえできないが、その黒一色の洋館に、少女たちは目を奪われていた。
風が不意に強く吹き付けた。
近くの樹木の葉は全て枯れていて、枯れ葉と落ち葉が同時に風で流されていく。そしてつむじ風に近い渦が生まれては消え、また生まれては消えていった。
今日は天気は晴天のはずだと、刀を腰に携えるスパッツ少女、福本アヤノンは己の情報に再確認を取った。間違いない。今日はB地区も政府中央都市も晴天の青空が広がっていたはずだ。なのに今は───
今は黒く不気味な雲だけが空に浮かんでいた。
時刻はまだ10時手前辺りのはずだ。だが黒い雲のせいで太陽の光は全て遮られ、夜に近い不気味な空間を造り出していた。
少女たちは洋館をやはりじっと見つめる。
風がさらに強く吹き始めた。まるでさっさと前へ進めと促すかのように、今度は追い風が吹き付ける。
「………………………」
福本アヤノンは回れ右をし、無表情のまま反対方向に足を進めた───
「え、ちょっと、福本さん!?」
何と空気が読めないお嬢様だろうか。セリアはアヤノンの肩を掴んで離さない。
「ど、どこに行こうとしてますの。もう目的地は目の前ですわよ~…………!」
引っ張る力に対抗して、アヤノンはとてつもない勢いで振り払おうとする。
「セリア」
アヤノンがようやく口を開いた。
「知ってるか? 地面にいるあの小さな蟻たちって、実は飛べる奴もいるんだぜ」
「な、なんの話ですの!? そうじゃなくて、アイザック家に───」
「知ってるか? イチゴって実は野菜なんだぜ」
「それは知ってますわ! いやだから、アイザッ───」
「知ってるか? 実は俺もう紹介するネタがないんだ」
「知ったことじゃありませんわぁぁぁ!!」
力が不釣り合いになり、アヤノンとセリアは転倒した。
それでもセリアはすぐに黒い洋館を指差した。相変わらず不気味なオーラを放っていた。
「福本さん、私たちは職業体験に来たのですよ! そして目の前にアイザック家はもうありますの! なのに何故反対方向に進もうとしてますの!?」
アヤノンは仰向けになり、全てやり遂げた戦士のような顔つきで。
「俺は、もう………ダメだ………。セリア、後の事は、全て、任せ、た………」
「いや何なんですのいきなり!? なに1人だけ現実から逃げようとしてますの!」
「俺が死んだときは………俺の墓に、来週号の少年『バカちん』を置いておいてくれ………」
「ちょっとぉ!? 注文突きつけられたのですけどぉ!?」
「あ、あとそれから、ポテチ薄塩味とコーラ一本安いやつも頼む………」
「『バカちん』ダラダラしながら読みたいだけじゃないですのぉ!」
セリアは叫びに叫んで立ち上がった。
「福本さんのお気持ちも分かります! 確かにあの暁婦警から話を聞いた後であると、わたくしも少々体が震えますわ…………」
「いやそれ以前に雰囲気が不気味すぎて近寄れねーよ」
アヤノンは体を起こすと、真っ直ぐに黒い洋館を見つめ直した。
「あーもう誰だよ、あんな家を職業体験先として許可したやつ。絶対適当に決めてるよこれ」
「確か………すべての決定権は校長先生がお持ちのはずですわ」
「あー、あのハゲた人ね。マジでぶっ殺してぇ…………」
もう忘れさられたような存在のくせに───と歯軋りを立てていると、
「ほら、福本さん!」
セリアが元気よくアヤノンの手を引っ張り、無理に立たせた。
「確かにあの洋館は気味が悪いし、わたくしもあの校長先生をぶっとばしたいという願望がありますが───」
「一応お前も思ってたのな、そういうこと」
「ですが、私たちは職業体験に来てます。これは授業の一環なのですわよ?」
「うぅ………仕方ないなぁ………それは否定しようがないもんなぁ………」
あれだけ黒一色で、今にもカラスの軍勢が飛び出てもおかしくないような屋敷でも、正式な体験先ではある。そう、学校が決めてるのだから仕方ない。担任のクロ先生に言ったら、『早めに選択しなかった君が悪い。自業自得だ』と突き返されるだろう。
風がまた吹き始めた。今度はゆったりとしていたが、胸の内に生まれる雑音めいた感情が消え去ることはなかった。
「……………………………………………。やっぱ行かないとダメ?」
「ダメですわ。さあ、行きましょう福本さん」
「分かった分かった。分かったから袖を無理に引っ張るなって!」
結局、福本アヤノンは歩みを黒い洋館先に向ける以外道はなかったのだった。
門を潜ると、洋館を間近で見ることが出来た。
黒い洋館は新品でピカピカだと言えば嘘になる。植物のツルが窓や壁にクルクル巻き付いていると思えば、亀裂が入った壁さえ目撃できる。
正直、裕福そうなご家庭には見えない。
アイザック家は財界の5本指に入るほどの大物だと聞いていたが、これでは前回の『ラグナロク教事件』で訪れたマルコフ家の方がよっぽど豪華である。
「なあセリア、ホントにこの家で合ってるのか?」
実は間違いなのではと切に願うアヤノン。
「私も何度も確認いたしましたけど…………間違いありませんわ。だってここに、ほら」
洋館の古臭そうな扉───玄関であろう───の柱に、きっちりと。
『名家 アイザック家』
「いや自分たちで言うか名家とかそういうの…………」
「自己意識が高い方々であれば珍しくもありませんわ。私が幼い頃にも、『あの名監督、ヤーグ=ピーナッツバーグ監督が訪れて絶賛しそうな名家、シャチピー家』というのがありましたわ」
「なげーよどんだけ強調したいんだよ、あとシャチピー家ってなに? 『柿ピー』の親戚?」
「なんですの、その『かきぴー』とは?」
「え────」
どうやらこの世界には『柿ピー』はないらしい。
「あー、気にしないでくれ、うんうん」
「……………?」
「そ、それより早く行こうぜ! 名家アイザック家の方々を待たせちゃ悪いし!」
そこでピタっと───別にかつての敵が使っていた『時間操作』ではないが、二人の動きが急に止まった。
「……………………」
「……………………」
さて、チャイムだろうがノックだろうが別に構わないが、
「…………セリア、いいぜ。お前先に行って」
「いえいえ。福本さんにお任せしますわ」
どちらがその扉を開けるか、その道を切り開くか、その一点に尽きる。
「いやほらレディーファーストってよく言うじゃんか。お前いいよ先でほらほら」
「福本さんも立派な『レディー』ですわよ。さあ福本さん、かつてのような勇ましい勇姿を見せてくださいまし」
「俺見た目は『レディー』でも中身は『ジェントルマン』だから。これ以上にない紳士だから」
さらっと真実を語っているが、まさかそれが事実なのだとセリアに分かるわけもなく。
「何をおっしゃいますの。顔立ちは女性、胸もある、髪は茶髪でロング、白の下着の上にスパッツを穿いている。これだけの要素がありながら自分は女性ではない、と?」
「おいちょっとまて、なんでお前俺の下着の色知ってんの?」
「ある…………特殊な闇ルートで」
「俺の下着情報ってどんな扱い受けてんの!? 薬物と同レベルじゃねーかっ!」
己の下着事情を思い知りながら、アヤノンは諦めてため息をついた。
「あーもう分かったよ、やればいいんだろやれば」
「そうそう、それでいいですわ」
「…………で、なんでお前は俺から遠ざかるわけ?」
振り返ると、セリアはアヤノンから3歩ほど後ろに下がっていた。
「罠とかあってもおかしくありませんもの。下がるのは当然ですわ」
「卑怯だぞてめぇ! それは納得いかん、お前も俺と同じ運命を辿ってもらおうかっ!」
アヤノンはセリアの肩を無理やりつかみ、玄関口に引きずり込もうとする。だがセリアが反抗し、すぐに取っ組み合いが始まった。
「いや、いやぁぁ! だって怖いんですもの! 福本さん男勝りなんですから多分大丈夫ですわ、自信を持って!」
「そんな自信いらんわ! いやよく言うじゃんか、一人ならダメでも、二人なら乗り越えられるって~!」
「残念ながらこれは二人でも無理ですわ、不可能ですわ! 誰かが犠牲にならなければならないのです! 理解してくださいまし!!」
「ならお前が犠牲になりやがれ! 俺はポテチ片手で見物してやるから!」
ギャーギャー人の家の前で騒いでいたからだろう。
その時だった。
黒い洋館の近くに立っていた赤いランプが点灯し、点滅し、騒々しいサイレンを鳴らした。
サイレンは警察のパトカーに近い音だった。それを聞き付けたのか、黒い洋館の背後から無数の黒装備の集団が蟻のように出現する。ドタドタと、真っ黒な防弾チョッキに真っ黒なヘルメットを被った人間が慌ただしくやって来て、アヤノンとセリアを取り囲み、何の躊躇もなく武装した銃の銃口を一斉に向けてきた。
「──────ん?」
あまりにも唐突な出来事に、アヤノンの頭が停止する。
見開くだけの目に映っているのは、真っ黒な重装備の人々が、敵意ある視線をヘルメット越しに向けていて、さらに視線だけでなく銃口まで向けていてるという光景。ジリジリと迫ってくる『黒い人間たち』は、相変わらず銃口を向けて、
「貴様たち何者だ! 何故この領地に無断で入ってきている!?」
その内の一人が叫んだ。
「…………はい? いや、俺たちは───」
「貴様ら、さては侵入者か! ここがアイザック家と知って入ってくる馬鹿はそんな人間しかいない!」
「まってくださいまし! 私たちはラサール魔法学校の───」
「言い訳は聞かん! 取り押さえろ!!」
銃口が下げられた代わりに、アヤノンたちは重装備の人間たちに背中に腕を回され、手錠をかけられ、地面に平伏された。
「ぐっ……………ま、待ってくれ! 俺たちは侵入者とか、そんなやつじゃない!」
「侵入者は皆そう言う。そんな王道回避文句が通用すると思うなっ!」
今度は別の『黒い人間』が叫び倒す。するとカチャン、と不吉な音がした。嫌な予感がする。
弾を充填する音だった。そして充填完了の銃がアヤノンたちに改めて向けられる。
標準は───恐らく頭部一直線である。
「!? い、いやいやいやいやマジで違うから! 俺たちあれだよ? 職業体験にきたラサール魔法がっ───」
「職業体験だぁ? 確かにその話は聞いているが、貴様ら、何故その事を知っている! アイザック家に関する情報は全て極秘のはずだ!」
「だ・か・ら! 私たちがその魔法学校のせ───」
「なるほど…………貴様らは相当腕の立つ暗躍組織の人間なのだな! でなければ、その情報を知ってるはずがない!」
「福本さんダメですわ! この人たち、全然私たちの話に耳も傾けないどころか、弁解する暇さえ与えてくれませんわ!」
「クッソ…………何なんだよコイツら…………!?」
アヤノンは押さえつけられた頭を上げて、例のランプに目を配った。
赤いランプは未だに点灯し、点滅している。しかしサイレン音だけは消えていた。
そういえば、このランプが起動したのと同時に『黒い人間』たちがやって来たのだ。
赤いランプは警察のパトカーと似た形状をしていた。そこでアヤノンの頭に、ある考えが浮かぶ。
もし、これが何らかの警報の役割を担っているとしたら?
もし、この『黒い人間』たちはアイザック家専門の警備隊のような役割を担っているとしたら?
(つまりコイツらはアイザック家の警備隊なのか…………)
『黒い人間』は誇り高き声で正体を明かす。
「我々はアイザック家に仕える警備隊、『黒の守護者』である! その誇り高き精神のもと、侵入者である貴様らを、今ここで刑に処す!」
要は、今からお前らを殺すからこれはその為に銃を向けてるんだよーと、そう彼らは言いたいのである。
あまりにも無茶苦茶な精神だ、とアヤノンは思った。
アヤノンは銃口の中に詰められている銃弾を想像する。
それが引き金を引いたと同時に回転し、空を斬りながら己の頭蓋骨を貫通する未来なんてたまったものではない。想像したくもない。
アヤノンは手を動かそうとした。だが手錠が彼女の手の自由を奪っていた。
少女は舌打ちした。もし、その手が自由であれば───
(もし手が自由になれば、あれを使えるかもしれないのに………………)
『あれ』とは、彼女が有する謎の術式、『破滅払い』のことである。
前に起きた『ラグナロク教事件』において、教団の中心人物、グレー=ルイスを追い詰めた術式である。
アヤノンはその『破滅払い』の存在については全くの無知である。マリナーラ曰く、上級魔法にも載っていないらしいから、アヤノンが知ってるわけがなかった。
だが、アヤノンはそれを知っている。
気づいたら、ある時その知識の断片が少しずつ浮き上がっていたのだ。
その内の1つに───『微分魔法式』というものがある。
これは迫ってくる物体を1つの二次曲線のグラフと捉え(2次関数のグラフの方が分かりやすい)、そのグラフを微分し、まるで物体を二次曲線のような軌道で反らさせるという、守備型の術式である。
これさえ使えば、今から降ってくるであろう弾丸も防げるかもしれない。
だが今アヤノンの手は、自由が効かなくなっている。
術式は書かなければ発動しない。魔法書も、該当ページを開かなければ魔法は使えない。
つまり、今の少女たちには弾丸から身を防ぐ手立てが皆無だった。
(…………不味いな、いや結構マジなレベルで)
『黒の守護者』は少女二人に銃口を全員で向けている。
そこには何の迷いもなく、何の躊躇もなく。ただ侵入者を排除しようとする『ロボット』のように見えた。
『黒の守護者』の一人が叫んだ。
「これより二人の侵入者を排除する! 総員、射撃よう──────」
その時。叫んでた人物の体が何者かによって、地面に叩きつけられた。
誰もが気の抜けた顔でその様子を見ていた。当然だ。いきなり1人がとてつもない勢いで体を地にひれ伏したのだから。
ようやく頭に衝撃が走り去ると、警備隊たちの畏怖した視線がある一点に集中した。アヤノンたちも釣られてそれを見据える。
メイド服を着た女性がそこには立っていた。赤一色に染められた髪をあちこちで綱のようにゴムで留め、右目には禍々しい形をした眼帯をしている。
メイドの女はひれ伏した隊員の丁度真上に乗っていた。メイドの女は平然とした顔つきで、
「何をしているのですか、黒の守護者」
「「ハ、ハルトマンメイド長…………!?」」
警備隊たちは口を揃えてそう言った。『ハルトマン』というのはこのメイド服の女性の名前らしい。
ハルトマンは相変わらず平然として、
「あなた方はいつからか弱い少女たちに暴行を加える組織のなったのですか。アイザック家はそのような命令は下していないはずですが」
ハルトマンの声は無感情で冷徹である。
1人の警備員が答えた。
「こ、この二人は侵入者であります! 警報ランプが鳴ったので、急ぎ拘束し、速やかに処分を───」
その警備員は回答の途中で顔面にハルトマンの足蹴りを打ち込まれた。そのあまりの威力に、後に頭部だけが地面に突き刺さり、可哀想な警備員は体をピクピクさせながら気を失った。
黒の守護者は一斉に蒼白顔と化した。何か言えば死ぬぞ、といった空気が無意識に漂う。
足蹴りから体勢を立て直したハルトマンは、やはり平然として、
「そこの方々の制服を見なさい。それはラサール魔法学校の指定の夏服です。つまりその方々は職業体験に来た生徒さんたちです」
警備隊の目線が一気に少女たちへと集まる。
「その方々を早く解放しなさい。侵入者ではない、むしろ来客である方々に対して失礼です」
黒の守護者はすぐに手錠を外すと、逃げ出すようにしてその場を去っていった。
残ったのは、アヤノンとセリア、それからハルトマンという名のメイドだけである。
アヤノンとセリアが魂を抜かれたように尻餅をついていると、ハルトマンが腰辺りで手を組み、二人に対して頭を下げた。
「大変申し訳ございませんでした。生徒であるお二人様に対して、我がアイザック家の警備隊が失礼な真似をいたしました」
ハルトマンはそれでも平然だったが、お辞儀の時間は長く感じた。
ハルトマンが頭を上げると、アヤノンは糸が切れたように唐突に尋ねた。
「あ、あの……………あなたは一体……………?」
「ああ、そういえばまだ初対面でしたね」
メイド服の女、ハルトマンは改まった顔で告げた。
「私はアイザック家のメイド長のハルトマン・アリーナです。ようこそ、アイザック家へ」
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