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本編
37【ポチ視点】やはり主は見通していた。
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ヤンという人物について調べてこいという命令を受けたときは衝撃を受けた。なぜなら殿下がこのように動くのは初めてだからである。
王子らしくないと言ったら無礼だが、もちろん良い意味でらしくない。腹違いの兄といえど地位のない平民に等しい者など普通は処分が妥当だろうに、こうして側においてくださる上、好きにさせてくれている。
だからこそ人の弱みを握るなんて無縁のような方が、険しい顔で仕事を渡してきたからこんな表情もするのだと、そう素直に思った。
もちろん任務は完璧にこなすつもりだ。
一応名のある冒険者として活動しているので、私くらいの力を持つ同族がいても、尾行は特に止められはしない。
ヤンという人物は学園から馬車で帰宅すると、屋敷に帰っていった。次の日はまた馬車に乗り通うのを繰り返している。
見ている限りでは特に怪しい点はないし、屋敷の窓から出入りはしてないか見張りもしてみるが、全くそんな気配はない。
変装して聞き込みをしても「変なやつではあるが気さくさでイイヤツ」とのことで何故殿下が裏を調べる必要があるのかいまいち分からなかった。
初心に返って、私は出入りの許可を得ているので王家が保有する資料館で戸籍を調べてみることに。
隣国からやってきているとのことだが、留学の形となると籍情報は登録しないといけないので、なければおかしい。
殿下から頂いた資料には「ヤン・レオグ」と本名が書いてある。
「過去16年の留学生の来国情報の資料はあるか?」
「少々お待ちください。」
ここを管理している司書に持って来させ、該当する名前を探してみることに………
「………ない?」
「ヤン・レオグ」なんて名前がどこにもないのだ。幅を広げて改名してる可能性も考慮し、探したのだがこれまた見つからない上に、入学記録さえないのだ。………まさか殿下は何かしらの手段でこれに気がついて!?
やはり王の器だと思った。お見通しなのだ。
「…早くお伝えしなければ。」
冷や汗を感じて急いで地下から出てくる。そして帰路につこうとしたときだった。
「貴方デスカ?この前オレの後をつけてたのハ。」
「っ!?」
「噂通りのすごい方デスネー!なかなか尻尾掴めませんでしたヨ。」
背後から声が聞こえたかと思えば、そこには監視対象のヤンが立っていた。
「アー!そんなに怖い顔しないでくだサイ!別に何かするわけじゃないのデ!」
ニコニコ嘘っぽい笑顔を貼り付けて私を見下している。一歩でも動けば殺されそうだった。
「……どういうつもりだ。」
「んー、ただのご挨拶ですヨ~!それでハー!」
アハハと笑って急に目の前から姿を消した。まさか殿下の身に何かあったのだろうか。尾行に気がついていたのなら私を自由にするのもおかしな話だし、何故余裕でいられるのか。
「クリス様にも連絡をした方が良さそうだ!」
緊急用の魔法具を使ってクリス様に状況をメモった手紙を送る。これで向こうも助けにきてくれるだろう。
王子らしくないと言ったら無礼だが、もちろん良い意味でらしくない。腹違いの兄といえど地位のない平民に等しい者など普通は処分が妥当だろうに、こうして側においてくださる上、好きにさせてくれている。
だからこそ人の弱みを握るなんて無縁のような方が、険しい顔で仕事を渡してきたからこんな表情もするのだと、そう素直に思った。
もちろん任務は完璧にこなすつもりだ。
一応名のある冒険者として活動しているので、私くらいの力を持つ同族がいても、尾行は特に止められはしない。
ヤンという人物は学園から馬車で帰宅すると、屋敷に帰っていった。次の日はまた馬車に乗り通うのを繰り返している。
見ている限りでは特に怪しい点はないし、屋敷の窓から出入りはしてないか見張りもしてみるが、全くそんな気配はない。
変装して聞き込みをしても「変なやつではあるが気さくさでイイヤツ」とのことで何故殿下が裏を調べる必要があるのかいまいち分からなかった。
初心に返って、私は出入りの許可を得ているので王家が保有する資料館で戸籍を調べてみることに。
隣国からやってきているとのことだが、留学の形となると籍情報は登録しないといけないので、なければおかしい。
殿下から頂いた資料には「ヤン・レオグ」と本名が書いてある。
「過去16年の留学生の来国情報の資料はあるか?」
「少々お待ちください。」
ここを管理している司書に持って来させ、該当する名前を探してみることに………
「………ない?」
「ヤン・レオグ」なんて名前がどこにもないのだ。幅を広げて改名してる可能性も考慮し、探したのだがこれまた見つからない上に、入学記録さえないのだ。………まさか殿下は何かしらの手段でこれに気がついて!?
やはり王の器だと思った。お見通しなのだ。
「…早くお伝えしなければ。」
冷や汗を感じて急いで地下から出てくる。そして帰路につこうとしたときだった。
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「っ!?」
「噂通りのすごい方デスネー!なかなか尻尾掴めませんでしたヨ。」
背後から声が聞こえたかと思えば、そこには監視対象のヤンが立っていた。
「アー!そんなに怖い顔しないでくだサイ!別に何かするわけじゃないのデ!」
ニコニコ嘘っぽい笑顔を貼り付けて私を見下している。一歩でも動けば殺されそうだった。
「……どういうつもりだ。」
「んー、ただのご挨拶ですヨ~!それでハー!」
アハハと笑って急に目の前から姿を消した。まさか殿下の身に何かあったのだろうか。尾行に気がついていたのなら私を自由にするのもおかしな話だし、何故余裕でいられるのか。
「クリス様にも連絡をした方が良さそうだ!」
緊急用の魔法具を使ってクリス様に状況をメモった手紙を送る。これで向こうも助けにきてくれるだろう。
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