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2話 時の魔女
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「気持ちは有難いが、少しやりたいことができたからな。そう気にしないでくれ。」
「ほうほうそうなのか!」
適当に言葉を並べるがそれとなく辻褄が合ってしまう己の舌がある意味憎くて笑ってしまう。
魔王の討伐の前に色々な工芸品を見てきただの、剣を鍛造してみたいなどとデマカセがぽんぽんと飛び上がってくる。
これを都会の者たちが見たら、「アルノア様じゃない!」と解釈不一致を起こして失神してしまうだろうか。ロノが語る心優しくて、紳士な勇者は演じられただろうか。
こうまでにいなくなった者への執着は放置したガムのようにしつこくまとわりついている。
「……そんなにやりたいことがあるなら、ワシが止めることはない。生きてさえくれれば」
「はっはっ。死んでたまるかよ。大英雄様だからな?」
「大きく出るようになったもんだ。」
僕は嘘をつくこと自体悪いと思ったことはない。嘘で笑いが起こる方が絶対に幸せなはずだ。人を騙すような悪用はそれは名の通り悪いだろうが。
「そういや知ってるか?最近妙な噂が回ってるんだ。」
「妙な噂?」
豪快に笑っていたのも束の間。声量を落としてまるで内緒話をするかのように身を屈めてくる。
「この辺に時を操る魔女がいるそうなんだ。」
「…は?」
「いやいやいや?ワシは全く信じとらんし、村の誰も会ったこともない、試したこともない。ただ何故かその噂が絶えないんだ。用心することに越したことはないだろ?」
火のないところに煙はたたないと言うが、この様子だとそんなにも「時を操る魔女」とやらの噂があり続けるんだろう。
「わかった気に留めておくよ。」
「次はいつ帰ってくるか分からないからな。これだけ言わせてくれ。お前の旅路に幸あらんことをーーー。」
普段神を信じないものが手を合わせ祈る姿に、やっぱり死ぬのはよくないんじゃないかと一瞬心が揺らいだ。
なら、時の魔女とやらを確認してからこの先のことを考えてやろうじゃないか。
多すぎる荷物をおじさんに持たされ(僕はその代わり大量の金貨を倉庫に入れておいた。)愛用している白馬に乗ると周辺の探索し始める。
魔女……あまりにも情報が少なすぎる。魔女なんて御伽話の世界だ。探す方が馬鹿らしいかもしれない。しかし僕が去る前に不安要素は取り除いておきたい。
絶対に立ち入るなとよく言われている森に来てみた。魔女と言ったらやっぱりこういうとこだろう。
『うわさのまびょのいえ、!』
「……え、ここ?」
明らかに幼い子が書いたような筆跡でため息をつく。まさか子供の戯言に騙されるなんて僕もどうかしているようだ。
「……しかしこの森に子供とは……些か危険すぎないか?」
メルヘンチックな小さい家を軽くノックしてみる。人の気配はするので誰かいるようだ。
「合言葉を」
「そんなもん知るか。」
「え?」
明らか声が大人の男だったので容赦なく扉を蹴破ると、そこには腰を抜かした人物がガクガクと震えていた。
「ああ…なんだお前か。」
「ほうほうそうなのか!」
適当に言葉を並べるがそれとなく辻褄が合ってしまう己の舌がある意味憎くて笑ってしまう。
魔王の討伐の前に色々な工芸品を見てきただの、剣を鍛造してみたいなどとデマカセがぽんぽんと飛び上がってくる。
これを都会の者たちが見たら、「アルノア様じゃない!」と解釈不一致を起こして失神してしまうだろうか。ロノが語る心優しくて、紳士な勇者は演じられただろうか。
こうまでにいなくなった者への執着は放置したガムのようにしつこくまとわりついている。
「……そんなにやりたいことがあるなら、ワシが止めることはない。生きてさえくれれば」
「はっはっ。死んでたまるかよ。大英雄様だからな?」
「大きく出るようになったもんだ。」
僕は嘘をつくこと自体悪いと思ったことはない。嘘で笑いが起こる方が絶対に幸せなはずだ。人を騙すような悪用はそれは名の通り悪いだろうが。
「そういや知ってるか?最近妙な噂が回ってるんだ。」
「妙な噂?」
豪快に笑っていたのも束の間。声量を落としてまるで内緒話をするかのように身を屈めてくる。
「この辺に時を操る魔女がいるそうなんだ。」
「…は?」
「いやいやいや?ワシは全く信じとらんし、村の誰も会ったこともない、試したこともない。ただ何故かその噂が絶えないんだ。用心することに越したことはないだろ?」
火のないところに煙はたたないと言うが、この様子だとそんなにも「時を操る魔女」とやらの噂があり続けるんだろう。
「わかった気に留めておくよ。」
「次はいつ帰ってくるか分からないからな。これだけ言わせてくれ。お前の旅路に幸あらんことをーーー。」
普段神を信じないものが手を合わせ祈る姿に、やっぱり死ぬのはよくないんじゃないかと一瞬心が揺らいだ。
なら、時の魔女とやらを確認してからこの先のことを考えてやろうじゃないか。
多すぎる荷物をおじさんに持たされ(僕はその代わり大量の金貨を倉庫に入れておいた。)愛用している白馬に乗ると周辺の探索し始める。
魔女……あまりにも情報が少なすぎる。魔女なんて御伽話の世界だ。探す方が馬鹿らしいかもしれない。しかし僕が去る前に不安要素は取り除いておきたい。
絶対に立ち入るなとよく言われている森に来てみた。魔女と言ったらやっぱりこういうとこだろう。
『うわさのまびょのいえ、!』
「……え、ここ?」
明らかに幼い子が書いたような筆跡でため息をつく。まさか子供の戯言に騙されるなんて僕もどうかしているようだ。
「……しかしこの森に子供とは……些か危険すぎないか?」
メルヘンチックな小さい家を軽くノックしてみる。人の気配はするので誰かいるようだ。
「合言葉を」
「そんなもん知るか。」
「え?」
明らか声が大人の男だったので容赦なく扉を蹴破ると、そこには腰を抜かした人物がガクガクと震えていた。
「ああ…なんだお前か。」
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