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くもり
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しおりを挟む「なー!見てた?!」
多田はテンション高く戻ってくると、
「ホモ?って聞いたら顔真っ赤だったんだけど(笑)」と、ニヤニヤしながら綾野統万の机に腰掛ける。
『みてたよー!まじウケる!』
『直接聞くとか強すぎだろ(笑)』
『あれは完全にホモだねw』
多田や周囲が悪い方向に盛りあがっているのを、綾野は「うんうん」とニコニコ相槌を打つだけで、特に何も言わずに聞くに徹していた。
あくまで統万はイジメの切っ掛けを与えるだけ。
(じゃないと、虐められてる智くん助けた時に周りから反感くらっちゃうからね~。友人も愛する人も同時に取れる俺、超クレバー!)
統万が不敵に笑みを浮かべていると、饒舌になった多田が更に悪い顔をして話し出した。
「あ~~~、何か中学の頃思い出すなぁ~。いじめじゃないけど、パシリ的な?居たんだよねー。いやー、何かあの時の悪ガキの血?が騒いじゃうなぁ(笑)」
『いやそれ絶対いじめてたろ(笑)』すかさず周囲がツッコミを入れる。
「でさぁ、おもろいのがさ、その時のパシられてたヤツも本田とめっちゃ仲良かったんだよね。」
『えー!まじか。てか本田と同中だったんだw』
『本田いじめられっ子メーカー説(笑)』
『本田も一緒にぱしり君にしちゃえばいいじゃん!』
「えー、ちょっと待って?」
それまで殆ど黙って聞いていた綾野が口を開いた。
青木には孤立してもらわないといけない。本田も虐められちゃ、お互いで傷を舐め合い更に仲良くなってしまうだろう事は容易に想像できた。
「俺本田"は"結構すきだよ。ホモっぽいやつと仲良くできるし、良い奴じゃん?」
本田の良い所を言ってみろ。
と言われたら全然思いつかないくらい関わった事は無いが、てきとうに口からでまかせを言いつつ、青木のことを下げるのも忘れない。
「あー、大丈夫大丈夫!アイツお友達置いてすぐ逃げるから(笑)」
中学の時もそうだった!と多田はあっけらかんと言い放つ。
『まぁ本田はいいとして、青木は私らの王子にホモッてるから懲らしめないとね(笑)』
統万の焦りとは裏腹に、上手いことターゲットを青木に絞って話が進んでいく。
存外、女子もイジメに乗り気だ。
話が纏った頃を見計らって統万は口を開く。
「でもさー、いじめるのはちょっと可哀想じゃない?」
自分はいじめに乗り気じゃないと匂わせる為の発言だ。
「大丈夫だってぇ!イジメじゃないから!ちょっと、わ・か・ら・せ・るだけ☆」
多田はと周囲がゲラゲラと話していると始業前の鐘がなり、各々わざとらしく視線を青木に向けながら自席に戻っていた。
統万が授業準備をしながらチラリと青木に目をやると、異様な空気に気づいてるのか居ないのか、小さく背を丸めて俯いているのが見えた。
(智くん…可哀想…。
あ~~~♡早く智くんの王子様になってあげたいなぁ~♡)
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