婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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「……本当だ。僕が鑑定したときはまだ随分幼かったけど……ローズ様。健やかな成長、何よりです」

どこかに面影を見出したのか、それとも容姿以外のところで判別したのか……
神官様はそう言ってくれた。

「あ、あはは……お久しぶりです……」

実のとこ、健やかに成長したのは数日前のことなんだけど……
乾いた笑みを漏らすしかない、わたし。
神官様は真剣な表情を崩さない。
ここへ来てしまったわたしの状況をおもんばかるように、心配そうな顔をしている。

「それで、大教会ここを訪ねてきてくれたという事は……何かあったんですか」

そう尋ねられて、わたしはごくんと喉を鳴らした。

「実は…………………この度。……領地を追放されまして……」

「「……は?」」

神官様とアストの見事に重なった疑問の声に、思わず下を向きそうになる。
でも、まだ伝えることがある。
ちゃんと言うんだわたし、就職先を紹介してもらうに当たって、隠し事をしちゃいけない……!

「それに伴って、婚約破棄も」

「婚約……」

「……破棄?」

アストの呟きを、神官様が拾う。

「……領主令嬢だよな?あんた」

「アスト」

口調を咎めるように神官様が言うが、慌てて「そのままで」とわたしが伝える。
神官様はわたしに申し訳なさそうに謝ってから、話をつづけた。

「それは、確かな話なのですか?」

「はい。追放と、婚約破棄の証文も確かに見ました……」

魔石を浄化する儀式の最中、元婚約者と妹がやってきて破棄と追放を告げられたこと。
塔が壊れたこと。
幼少の記憶を辿ってここまで来たが、魔力がどうも暴走しがちだということ……

そんな話を聞いてもらう。

「今まで無意識で出来てた事が出来なくなってたり、逆に、意識しないと発動しないような魔法が、口に出しただけで出来てしまったりするんです」

「…………」

そこまで聞いて、神官様は一度黙ってしまわれた。
そんな女の身を寄せる先などないとか言われたらどうしよう。

ひそ、と、アストが神官様の耳に口元を寄せて、何かを囁く。
神官様はアストの方を向いて大きく頷くと、わたしの方へ向き直って言った。

「……ローズ様。もう一度鑑定をさせて頂いても構いませんか?」



□□□



「便宜上鑑定と伝えましたが、これは……魔力を込めてもらうことで、ローズ様の、ここ数日の魔力変化を見るものです」

神官様はそう言って、テーブルの上へ水晶を用意する。
鑑定の間で見たものより一回り小さい気がする。用途の違いなのかな。

「はい。よろしくお願いします」

……ちなみに神官様へは、もうお嬢様ではないのだし、様付けと敬語を辞めてもらうよう頼んでみたんだけど。
その方が話しやすい、癖になっている……と、苦笑して言われてしまった。

アストは、集中しやすいようにと一度外へ出てくれた。
神官様が部屋の大きな窓にカーテンを引いて薄暗い空間にする。
その空間の中で、ソファへ座ったまま……わたしは、水晶へと手をかざした。
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