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明かされていく

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「アスト、もう入ってきていいよ。……あれ?」

水晶へと魔力を込める作業を終え、神官様がドアを開けてアストを招こうとする。
でも、アストはドアの前から居なくなってたみたいだった。外を覗いた後で、扉を閉じる。

「居ませんか?」

「うん。彼にも見てもらおうと思ったんだけど……でも、その内に戻ってくるでしょう」

そう言って、改めてわたしの対面へ座る神官様。
二人の前にあるテーブルの上には、魔力を込めた水晶がある。

神官様は目を伏せて、わたしがそうしたように水晶へと手をかざす。
そうすることで、何かを読み取ろうとしているみたい。

「これは……この数日で、ずいぶんと目まぐるしい変化が……」

薄暗い部屋の中で、水晶はゆらゆらと神秘的に光っている。
ほのかに照らされている神官様を前にして、口を出してはいけない雰囲気を感じた。
こくん。
わたしは返事をしないで、頷くだけにしておく。

変化の前後を探っていたらしい神官様が、痛ましいものを見るように、眉をひそめた。

「……この姿は……あまりにも……」

「……ぁ……」

栄養が足りてないガリガリのわたしを知られたんだろうか。
責められてるわけじゃないんだけど、どうしても体を小さくしちゃう。
骨と皮だけの姿を知られて、この優しい神官様が心配をしないわけがない……気がする。

「……大きな破壊に行き会った……?……塔が、壊れたと言ってましたね」

ふいに、顔をあげてわたしへと質問する神官様。

「あ……はい。儀式を行っていた間は、その時の爆発で崩れたと思います」

わたしが頷くと、納得したように頷き返して、また水晶へと視線を落とす。

「その塔……もしくは塔の間に、何らかの仕掛けがあったように思います。……妙な、残滓ざんしが……」

塔へ、仕掛け……?
そういえば、アストも何かがわたしに残ってるって言ってた。
しかも、いくつかって言ってたような……

「追手……の痕跡もありますね」

追手。
アストの言う妙な感じとは、それのことだったんだろうか。
やっぱり追放っていうのは、イコール領内でのお尋ね者になる、みたいな……

「しかしこれは……セスティア家の領地の人間とは、また、別の……」

「えっ……?」

口を挟んで邪魔をしてはいけない、と思いながら、つい声に出てしまった。
領地以外の……?そんな、どこかから追われる心当たり、一個もない。

「……どうにも、小さ過ぎて掴みどころが……
ああ、しかし……今は途切れているようだ……途中で、振り切ったのでしょう……」

よ、よかった……
きっと、あの馬車に乗った時だと思う。すごい速さだったもの。

神官様の額へ汗が滲む。
そのまましばらく水晶を睨んでいたが、ふっと神官様は息を抜いた。
水晶が放っていた光も、後を追うように消えていく。


そのタイミングを見計らったように、部屋のドアをノックする音が響いた。

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