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ブランの思惑3
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婚約の締結をしたその日、帰ってきた父親にブランは抗議をした。
「あのような者が相手だとは聞いておりません!あれはっ……あれでは、まるで……生きながら死んでいるようではないですか!」
父は冷たい目でブランを一瞥する。
「セスティア家との縁は絶対だ。お前も承知したはずだろう」
「っしかし……!!」
尚も言い募るブランに、父親はうんざりした顔で手を払った。
「ならば自らの力でどうとでもするがよい。
セスティア家と強固な縁が結べるなら、我が領地としては何でも構わん」
「……分かりました……」
一代限りで終わる縁など意味がない。子々孫々に渡って、産地との繋がりを濃くしていかなければならない。
(強固な縁……だと……そんなもの、婚約以外に何がある……)
ブランは、そう感じながら、差し出せるものの少ない自分の身と領地を思った。
□□□
「…………もう沢山だ」
ローズとの婚約を結んでしばらく経ったころ、ブランは自室のベッドに腰かけて一人呻いた。
項垂れるように顔を抑えてため息をつく主人に、隣へ立っている側近のアルが声を掛ける。
ひょろ、とした体にやや長めの髪を括っていて、それがしっぽのように頭の後ろからぴょんと出ていた。
「またセスティア家に行ってきたのですか?」
「……しかし、会えはしなかった」
「またですかぁ、よっぽど嫌われてるのでは」
「……お前な……」
側近で乳兄弟でもあるこの男は、成長してもどこか気安さが抜けない。
せめてこの部屋の外ではもう少し固く喋れ、と常々ブランは言い聞かせているが、ブランの私室の中では彼も気が抜けるようだった。
ブランにとっても、アルは気を許して話すことが出来る数少ない人物の一人だった。
「だって婚約が決まってから、ずっと会ってないのでしょう?」
「ああ……」
メイドの入れたお茶へ手を付けながら、ブランは頭痛をこらえるように眉を寄せた。
室内には、ブランとアルの二人しかいない。
決まってしまったことは仕方ないと捉えるようにし、せめても親交をと考えセスティア家への訪問を重ねたブランだったが……
ローズとは、一度として顔を合わせる事はなかった。
いつ打診をしてもはぐらかされ、埒が明かないと直接訪ねても「多忙だ」と断られる。
これらも全て、直接ローズから伝えられるのではなく、領主たるローズの父からしかブランには伝えられなった。
(社交界にも顔を出さない年頃の令嬢が、いったい何をそんなにすることがあるんだ?)
早く、会話をして……せめて彼女の人となりを知らないといけない。
ブランはそう考えていた。
そうでないと……ローズの印象が、婚約を結んだあの日のままで固定されてしまいそうで、恐ろしかったのだ。
暗い顔をしてお茶へと口をつけるブランに、アルがぽりぽりと頬をかく。
そして、思いついたように声をかけた。
「解消とか出来ないんですか、その婚約って」
「あのような者が相手だとは聞いておりません!あれはっ……あれでは、まるで……生きながら死んでいるようではないですか!」
父は冷たい目でブランを一瞥する。
「セスティア家との縁は絶対だ。お前も承知したはずだろう」
「っしかし……!!」
尚も言い募るブランに、父親はうんざりした顔で手を払った。
「ならば自らの力でどうとでもするがよい。
セスティア家と強固な縁が結べるなら、我が領地としては何でも構わん」
「……分かりました……」
一代限りで終わる縁など意味がない。子々孫々に渡って、産地との繋がりを濃くしていかなければならない。
(強固な縁……だと……そんなもの、婚約以外に何がある……)
ブランは、そう感じながら、差し出せるものの少ない自分の身と領地を思った。
□□□
「…………もう沢山だ」
ローズとの婚約を結んでしばらく経ったころ、ブランは自室のベッドに腰かけて一人呻いた。
項垂れるように顔を抑えてため息をつく主人に、隣へ立っている側近のアルが声を掛ける。
ひょろ、とした体にやや長めの髪を括っていて、それがしっぽのように頭の後ろからぴょんと出ていた。
「またセスティア家に行ってきたのですか?」
「……しかし、会えはしなかった」
「またですかぁ、よっぽど嫌われてるのでは」
「……お前な……」
側近で乳兄弟でもあるこの男は、成長してもどこか気安さが抜けない。
せめてこの部屋の外ではもう少し固く喋れ、と常々ブランは言い聞かせているが、ブランの私室の中では彼も気が抜けるようだった。
ブランにとっても、アルは気を許して話すことが出来る数少ない人物の一人だった。
「だって婚約が決まってから、ずっと会ってないのでしょう?」
「ああ……」
メイドの入れたお茶へ手を付けながら、ブランは頭痛をこらえるように眉を寄せた。
室内には、ブランとアルの二人しかいない。
決まってしまったことは仕方ないと捉えるようにし、せめても親交をと考えセスティア家への訪問を重ねたブランだったが……
ローズとは、一度として顔を合わせる事はなかった。
いつ打診をしてもはぐらかされ、埒が明かないと直接訪ねても「多忙だ」と断られる。
これらも全て、直接ローズから伝えられるのではなく、領主たるローズの父からしかブランには伝えられなった。
(社交界にも顔を出さない年頃の令嬢が、いったい何をそんなにすることがあるんだ?)
早く、会話をして……せめて彼女の人となりを知らないといけない。
ブランはそう考えていた。
そうでないと……ローズの印象が、婚約を結んだあの日のままで固定されてしまいそうで、恐ろしかったのだ。
暗い顔をしてお茶へと口をつけるブランに、アルがぽりぽりと頬をかく。
そして、思いついたように声をかけた。
「解消とか出来ないんですか、その婚約って」
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