婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

文字の大きさ
62 / 96

目に見えての

しおりを挟む
領地の皆は無事だと説明してもらって、ほっと張り詰めていた力が抜けた。
同時に、むなしさも襲ってくる。
長椅子に体を重たく預けて、呆然と呟いてしまった。

「そうまでして……わたしを……」

「これは、慰めにもなりませんが」そう前置きした神官様が続ける。

「それだけ、あなたが有能だったということでしょう……」




神官様が、机の上から一つの資料を取り出した。

「あなたが眠っている間、セスティア家について少し調べさせていただきました。
とはいえ公務の傍らで、まだ多くのことはわかっていないのですが……」

それはつまり、内部資料とかそういうものじゃないです……?
そう考えると、目を瞬いてしまう。

「それって結構大事な書類なのでは……」

「透明性が大事ということもあり、いくらかは公表されていますから大丈夫。
もちろん、教会の内部に限った話ではあるのですが……」

なので、こちらは内密に、と神官様が苦笑する。
その辺りはこちらこそでしかないので、わたしも頷いた。
……う、でも現領主……か、その配偶者が犯罪を犯してたかもしれない、ことは……
どうすればいいのかな……

考え込みそうになるけど、神官様の声でまた意識がそっちへと寄せられた。

「確かに、魔石を核とするモンスターの出現情報が多い土地のようです。
ただし、そこまでの収益は上がっていなかった……浄化をするのは大変なことですから。
それが……何年か前からゆっくりと数字が上がってきている」

これは別に魔石に限った話ではないけど、領地で収穫したものや出た利益って言うのは、一定の期間で教会へ報告することになっている。
力の偏りやトラブルを防ぐためとか何とか、修行の傍らで読んだ本に書いてあったような。

「大体、どれぐらい一度に浄化していたんだ」

それまで黙っていたアストが尋ねて来た。
数日前まで……じゃ、なかった。一週間前までは毎日のようにこなしていた儀式。
とは言え、決まったノルマがあったわけじゃなくて、作れるなら作れるだけ……って言われてたものだから、曖昧なもの。

「えーと……一度に倒していたモンスターが確か……
ということは月に渡していた数が、えぇと……」

っていう具合に計算して、大体の数を伝えてみる。
感覚になっちゃうけど……
そうしたら、神官様は大いに驚かれたみたいだった。

「そんなに!?」

「えっと……大体、ですけど」

難しい顔をして、資料と照らし合わせてるみたいだった。
やがて、ぽつりと……わたしに聞かせるためだけでもないように呟く。

「今のお話では、収支報告との間に大きな隔たりが……」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...