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メルディがやってきた。
待ちに待った服の出来上がりだ。

ふんふ、ふーん♪

「こちらが、お嬢様がご希望になった平民っぽい服装です。3パターン用意しました。」

なんだか不服そうなメルディ。

周りを見渡せば、エルミナ、リリアーヌまで不服そうだ。
にこやかに微笑んでるのは、お母様だけだ。

「どう?」

私は1パターン目を試着して、回ってみた。

「平民にしか見えません。」

リリアーヌが言った。

うん、いい出来だ。
というか着心地が半端ない。
なんだこれ、普段私が着ているものよりいい気がする。

「これ、めっちゃ着心地がいいんだけど?」

「はい、最高級の素材を使用しております。」

さ、最高級・・・。

「私の顧客は平民とはいえ富裕層です。その私が平民っぽいデザインをするのは、血の涙を流すくらいの屈辱なので、裏生地に、120%の力を込めました。」

うわあ・・、屈辱だったのね。
って、見えない所に、どんだけ力入れてるのよ。

お母様は気になったのか、他のパターンの裏生地を触っていた。

「とてもいい生地ね。私も一着作ってもらおうかしら。」

「奥様、いけません。」

エルミナが止める。

「裏生地はこれで、もちろん貴族が普段着るデザインにしてもらうわ。」

「畏まりました。」

メルディが恭しく礼をする。

私は平民っぽいデザインに大満足したので3着とも購入した。
しかし、これ幾らするんだろう・・・。
怖いので聞けない。

「メルディ、出来れば、アウエリアのお披露目のドレスを注文したいのだけど。」

「お披露目はいつでしょうか?」

「2年後よ。」

「畏まりました。アクセサリーに合わせたデザインが宜しいでしょうか?」

「そうね、そうしましょう。」

「お嬢様も成長なさるでしょうし、サイズ合わせは当分先で宜しいでしょうか?」

「ええ、あなたに任せるわ。」

「ありがとうございます。」

大きな仕事を受け喜んでいるように見えるメルディと違い、妹のエルミナの方は不服そうだった。

メルディが帰った後、お母様がエルミナに問いかけた。

「メルディに頼むのが嫌なのかしら?」

「姉は、貴族の常識に疎いので、いつ失態を犯すかと思うと。」

「大丈夫よ。メルディだって、ある程度の常識はあるはずよ。アウエリアに比べればね。」

私が比較対象ですか・・・。

「それは、そうですが・・・。」

えっ、それはそうなの?
まるで私が非常識みたいじゃない?

話はそれで終了した。
って終わんなっ!


嫌なことはサクッと終わらせるに限る。
という事で、剣術の授業をサクッと終わらせた私は、乗馬の日に備えた。

勝手に出歩いているクロヒメに、よくよく遭遇する為、暫くぶりの授業という気がしない。
教える役目は、ピザート家の兵士が行うが、そもそもクロヒメに近づけないので、役には立っていない。
基本は、他の馬に乗って習っているので、後は実践あるのみ。

いざ、クロヒメに乗馬っ!
リリアーヌに手伝ってもらい乗馬する。
今日のクロヒメは、大人しい。

と思っていたが、そうでも無かった。
ゆっくりと歩きだしたと思えば、いきなり加速。
最近、思いっきり走ってなかったのか、鬱憤を晴らすような速さだ。

私は、馬具屋の姉ちゃんの様に、背筋を伸ばし華麗な姿勢を保ちたかったが、それどころじゃない。
落ちないようにするのが精一杯だった。

ある程度、距離を走った事で、満足したのか、クロヒメはゆっくりとリリアーヌの待つ元へと向かった。

「クロヒメ、ゆっくりと。ゆっくりと歩きなさい。」

リリアーヌの指示に素直に従うクロヒメ。

「動かないように。」

静止したクロヒメから私を丁寧に降ろすリリアーヌ。

「お嬢様、大丈夫でしたか?」

「何とかね。落ちない様にするのに精一杯だったわ。」

「クロヒメ、少しはスピードを落として走りなさい。」

リリアーヌがクロヒメに言った。

「まあ、仕方ないわよ。私か馬具屋のお姉さんしか乗れないのだし。」

「毎回、馬具屋の方に来て頂くわけにはまいりませんし、わかりました。私が暇を見て乗りましょう。」

「乗れるの?」

「普通の馬には乗れます。」

何その、出来る女的なのは・・・。

まあでも、リリアーヌの指示にはクロヒメも従うようだし。

「私が乗れない時は、頼むわ。」

「畏まりました。」

無事、乗馬の時間も終わりと思っていたが。

「アウエリア。」

「お、お母様?」

まさかのお母様の登場で、その場は緊迫した空気に包まれた。

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