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終幕へ
38:古きより来たるは
しおりを挟む魔王の城より無事帰宅するも別の目標が発生した為に周囲が突然忙しなくなり
今までの生活とは少し変わってしまった。
りんごが好む何もないけれど平和な日常が減っていくような気配。
だけど全ては穏やかな時間を得るための仕方ない犠牲だとも分かっている。
「火の矢と風の剣は自由に使えるようになったよ」
「偉いじゃないか。相当訓練したんだろうねりんご」
「訓練というか。サターヌが毎晩来ちゃうから強制的にレベルが上がったというか」
「エノクから貰った新しい武器は凄いよね」
「凄いけど私だっていっぱい努力しているんです」
「そうそう。りんごの努力あってこそだ。お前は良い魔女になるよ」
「うんっ」
今りんごが出来ることは一人前になること。夜母に勝てるほどでなくても
迂闊には手を出せなくなるような魔女になれば彼らの負担は大幅に減る。
本音を言えばそのための力を得たい。1番チート出来るのがキトラ。
なのだけど、エノクの城へは用事がなければ行けなくなってしまった上に
今の家も引っ越す予定。
もっと森の奥地で守りに向いた場所へキトラが土地を探してくれているらしい。
エノクも新戦力を求めて活動していると聞いているが詳しいことは不明。
だから容易には会えず地道に修行中。
魔物の世界で彼らが造る新しい国とはどんなものなのだろう。
夜母の干渉を減らすための仕方のない侵略もまだこれから始まる。
りんごはソレを見て見ぬふりが出来るか。
少し間が空いたある日。
エノクから久しぶりに城へ来ないかと誘われたのでサターヌと向かう。
「久しぶりだねりんご」
「エノクさん。キトラさんも」
皆揃ったのは本当に久しぶり。
「新しい戦力を求めているのは知ってるよね。それで助けてくれそうな奴が見つかったから
君にも紹介したいと思って」
「新しい仲間ですか!どんな人かな。緊張しますね」
とうとう新しい仲間が見つかった。
できれば許容できる範囲の体格で怖くない見た目だと有り難い。ふわふわしていて
可愛かったら最高に嬉しい。
大きくても心は優しい場合はあるだろうけども。
ドキドキしながらもエノクの案内で城内にある個室へ皆で向かう。
「総団長殿!そ、それに総…かかか閣下っ……はわわわっ敬礼!」
ドアを開けたら突然大声で叫ぶから驚いてサターヌに抱きついた。
部屋に居たのはムキムキマッチョなボディで顔は西洋風の兜で隠されて見えない男。
かなり緊張した様子でピンと立ち上がり手を挙げるポーズを決めている。
これが敬礼?か。
何より服を着てはいるが顔だけ兜なのが不思議でならない。
「紹介するよ。彼はカティス。見ての通り…真面目な奴なんだ」
「顔だけ鎧で守ってるのは日光に弱い魔物さん…ということでしょうか?」
「魔物じゃないんだ。カティス。何で隠してるか言える?無理には聞かないけど」
「ッサー!自分は!歩兵であります!歩兵は!ただ直進あるのみの兵です!」
「……な、なるほど。歩兵さんだからかぶってるんですね。直進するから」
「今は進軍中じゃないぞ」
「ずっと敬礼ポーズしてますけど腕痛くないです?」
「楽にして良いんだよカティス。座ってくれ。あと声の大きさを少し下げてくれ」
風貌といい全てが謎めいた男カティス。
彼が何か言う度にボリュームが大きいのでりんごが驚いてビクっとする。
エノクの指示で椅子に座った所でやっと話しが進みそう。
今のところ彼のインパクトだけで何一つ情報が無くて困っているから。
「カティスさんが一緒に国を造る仲間なんですね」
「彼には伝書鳩になってもらって天界で燻っている奴に声をかけてもらおうと思ってる」
「元お仲間さんなんですか!……通りで」
魔物っぽくない雰囲気を持っているわけだ。真面目、というのもわかるかも。
「じじじ自分のような者にお声がけ頂けるとは思わず。か、感涙であります!!!
その上あ、あ、あこがれの閣下もいらっしゃってっぅっあ…ぁっ…ひぃいいっ」
表情は分からないけれど何だかエクスタシーを感じてそうな声で悶えるカティス。
「もしかして昔……えっちなことしたんですかこの人と」
もしかしてそういうツテ?
「君じゃなかったら八つ裂きにするレベルの愚問だよりんご」
「で、ですよね」
「俺に同じこと言ってたら確実に引き裂いてるよりんごちゃん」
「ですよねぇえ」
天界の人ってもしかして皆こんな感じなんだろうか。
いや、カティスが特殊?終始兜から空気が盛れる音がしているが
顔が見えないため分からない。
ただなんとなくエノクとキトラに対して熱い視線と鼻息を感じた。
今回は顔合わせだからといって軽い質疑応答のみでカティスは天へ帰っていく。
堕落していなくてもここへ来る事はできるらしい。
「あれは大丈夫なの?私が言うのもなんだけどアレはヤバいぞエノク」
「もちろん手数には入れてない。でも伝達係りとしては有能なんだ。アレでも。
それにりんごに興奮しない面でも面倒がなくて良いだろ」
「お前とキトラ兄には興奮しまくってたけど?なんなら軽い勃起してたが」
「寒気がしてきた。もし俺に触ったらアイツを殺すからな」
「少しだけ我慢してくれ。話しができそうなやつが来たら殺していいから」
結局最後は殺しちゃうの?とりんごは心のなかで思いながら場所を庭のベンチに移し
お茶を淹れてもらってお菓子も貰った。失礼かと思って何も言わなかったけれど、
やっぱり彼らも同じ気持ちだったらしい。
「よほど好きなんですね。カティスさんキトラさんを舐め回すように見てた…」
「殺そう」
「この前は命を尊べとか言った癖に。あの変態はエノクとキトラ兄にまかせておけばいいとして。
問題はアイツが広めてくれて誰が来るかだなぁ……まあ、来ないかもしれないけど」
「その時はその時さ」
「カティスさん悪い人じゃ無さそうですよね。全然私なんて見てなかったけど。仲良く出来るかな」
「無理に仲良くしなくていいんだよりんご。あいつは俺が殺すから」
「キトラさん目が獣になってる」
りんごはエノクが天界の元仲間を引き込もうとしていることを今知った。
でも、彼らによって半分も破壊された世界から来てくれるのだろうか?
カティスはエノクとキトラの為なら戦ってくれそうだけど。多分戦士としては採用されない。
あくまで天界へのメッセンジャーとして利用されているだけで。
久しぶりに4人集まってワイワイとおしゃべりしながらお茶をいただく。
夜母に怯えて会えないなんて嘘みたいに。
「ご機嫌如何ですか総帥。総団長殿も大隊長殿も相変わらず仲が宜しいようで」
りんごがお菓子を伸ばした先にいつの間にか立っていた褐色肌で長身の男。
「……」
「お久しぶりですね妹君。相変わらず無垢な瞳が可愛らしい」
目が合うとニッコリと笑って言われる。
怖いわけじゃない。夜母のようなゾットする感じもない、けどなぜか安心しないこの胸騒ぎ。
「ザガリア。上級幹部殿がこんな所までわざわざ来るとは思わなかった」
「皆様にお会いするには私が適任かと思いまして。力が必要なのでしょう?」
「そうだけど別に誘惑はしてない。希望者を募っただけで」
「ご冗談を。我らの組織において総帥と貴方の存在がどれほどの甘い誘惑かご存知ないとでも?」
「元、だろ。今はこの通り汚れた魔物じゃないか。僕らを見てまともな奴なら禁忌する」
「非常に残念な事ですが……、貴方の話は天界に広まり賛同者は増えつつある」
「おやそれは大問題だ。新しい団長は何をしているのかなぁ?」
「女性になろうとも子どもじみて意地が悪い所は相変わらずですな大隊長殿」
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