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ピンポーン
時計を見れば、朝の10時ちょうどだった。
敦子は、飛び起きて、玄関まで走っていった。
「 寝ちゃったよ~。 」
敦子は、一応インターホンで、来訪者を確認した後、ドアを開けた。
やはり玉山さんが、立っていた。
ラフな白い襟付きシャツと、チノパンを穿いていて、いかにも休日スタイルらしい。
なんでも様になる玉山さんだった。
敦子は、玉山さんに飛んでいるところを、見られてしまった後、少し仮眠でもしようかと思ったのだが、やはりというべきか眠れなかった。
気分も落ち着かなかったので、早い時間に朝食をとり、洗濯も掃除もした。
一応コーヒー、紅茶どちらでも出せるように準備しておく。
それでも待ってる時間は、果てしなくながく感じて、つい横になっていたら、寝てしまったようだ。
着替えようと思っていたのに、時間が無くなってしまった。
ちなみに今着ているのは、よれよれのTシャツに、ひざ下までの綿ズボンだ。
完全に部屋着である。
玉山さんは、あんなものを目撃したのに、すっきりとした様子で、入ってきた。
狭いながらも、二部屋あるので、キッチン兼居間として使っている部屋に案内する。
ローテーブルの前に、座ってもらう。
玉山さんがいると、部屋が狭く感じた。
「 昨日は、ごめんね。びっくりしちゃって、夜遅かったのに、お邪魔しちゃって。 」
「........いえ、びっくりされて当然ですから。お茶入れてきますね。 」
いったん玉山さんの前に座ったが、お茶を入れに席を立とうとした。
「 いや、まずいろいろ説明してほしいな。 」
催促されたので、仕方なく座りなおす。
目の前の玉山さんも正座なので、敦子も正座した。
なんとなく目を合わせずらくて、下を見ていると、強烈な視線を感じた。
顔を上げると、真剣なまなざしで、こちらを見ている玉山さんと目があった。
「 昨日仕事で帰りが遅くなって、お風呂に入った後、なんとなく星が見たくなって、ベランダに出ていたんだ。そうしたら見ちゃったんだけど。 」
なるほど、それであんな時間にベランダに出ていたのかと敦子は、納得した。
敦子は、意を決してネイルを塗った時からの事を、話し始めた。
玉山さんは、敦子の言葉をさえぎることもなく、ただ黙って、聞いてくれていた。
敦子が、すべて話し終わると、玉山さんは、ぽつんと言った。
「 不思議なことってあるもんなんだね。たぶん自分の目で、見てなければ、信じられなかったと思うけど。」
「 そうですよね~。私だって、いまだに信じられないんですから。」
「 そうだ! 今、水を昨日のようにできる? この目で見てみたいんだ。 」
「 できると思いますよ。 」
敦子が、そういうと、あらかじめ桶の中にはってあった水が、次々に球となって浮き上がり、玉山さんのほうへふわふわと近づいてきた。
玉山は、球を凝視していたが、思わずといったように手を差し出した。
ひとつの球が、玉山の手に乗った。
残りの球が、玉山の周りをゆっくりと回っていく。
玉山は、立ち上がって、その様子を見ていた。
しばらくして、その球が、集まりだして、一つの球となって敦子の前に行った。球は、ボードのように、平らになる。
敦子は、その上にのり、少しだけ浮き上がった。
「 すごいね~。」
玉山さんは、ひとしきり感心して、また座った。
敦子も水のボードから降りて、座った。
するとボードは、また球になり、桶の中に戻っていった。
玉山は、これにもひとしきり感心していた。
「 せっかくだから、お茶でもいただこうかな。」
「そうですね。コーヒーと紅茶とお茶、どれがよろしいですか。 」
「 じゃあ、コーヒーをいただこうかな。」
敦子は、キッチンに行き、急いでドリップコーヒーを二つ入れて、持っていきテーブルに置く。
一緒に砂糖とミルクも置いた。
「 ありがとう。ブラックなんだ。 」
玉山はそう言い、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。
玉山は、コーヒーを飲むさまも、絵になるようだった。
そこだけ切り取ると、まるでホテルのラウンジにいるみたいに、思える。
なんだかそこだけが、異空間のような気がした。
敦子も一口飲む。
先ほどの説明で、緊張したせいで、のどが渇いていたので、おいしく感じる。
玉山は、カップを置いて、今度は、少し顔を険しくしていった。
「 滝村さん、あれで何回ぐらい飛んだの? ねえ知ってる? 飛んでる姿、ニュースになったりSNSにアップされているよ。 」
敦子は、飲みかけのコーヒーを、つい吹いてしまった。
目の前の玉山さんに。
清潔そうな白いシャツは、見事に茶色のまだら模様ができてしまった。
顔にもかかったかもしれない。
敦子は、あわてて、そばにあったボックスティッシュをそのまま、玉山さんに渡した。
「 ごめんなさい。すみません。 」
敦子が、平謝りする。
「 気にしないで。 」
玉山さんは、申し訳程度に拭いたぐらいで、それよりと言って、ポケットからスマホを取り出す。
そして、あるニュース映像を敦子に見せた。
『 今日のニュースです。昨日遅く、視聴者の方が、撮ったと思われる未確認物体が、SNS上を騒がせています。こちらがその映像です。 』
アナウンサーが、ニュースを読んだ後、視聴者がとったものだと思われる映像が流れた。
『 なに~あれ? ねえ見て。』
流れた映像には、視聴者の声に交じって、暗いビルの上を、何やら光るものが映っている。
映像がアップされると、光るものの上に何かのっているのが、かすかに見える。
『 撮影された未確認飛行物体は、いくつかSNS上にあげられており、複数の目撃者がいると思われます。なおこの映像を、専門家に分析していただいたところ、確かなことは言えないが、未知の生物の可能性もあり得るとのことです。 』
そうアナウンサーの言葉で、締めく繰られていた。
「 これって滝村さんだよね。sns上で、すごく騒がれているんだ。みんないろいろなことを、おもしろおかしく言っていてね。 」
そういって、またスマホを見せてくれる。
「 なにこれ? 妖怪皿ばばあ? 血が滴る皿にのった妖怪? 血の池地獄ばばあ妖怪? 」
敦子は、思いっきり大声を出してしまい、玉山さんにびっくりされてしまった。
SNSの記事には、妖怪だの、皿ばばあだの、血の皿だの、いろいろ書かれていた。
記事によると、映像の中に人影らしいものと、長い髪の毛らしいものが、写っていたものもあったらしい。
その映像を、写真のように切り取られているものが、いくつかあった。
よく見ると、確かに人影や髪が見えたり、敦子が金斗雲もどきと呼んだものが、光っているように見えている。
しかも赤く光っているように、見えているものまである。
「 さっきの滝村さんの話では、高層ビルに行ったそうだから、ビルの明かりが水に反射したり、屋上についている赤いライトが、水に反射して見えたんだろうね。
それにしてもずいぶん騒がれているよ。僕も今日、もしかしたらと思って、ネットを見たんだけど、案の定見られていたんだね。顔までは、見えなくてほんとよかったね。 」
玉村さんは、敦子が特定されなかったことに、ほっとしてくれていたようだった。
しかし微妙なお年頃の敦子は、人物特定をされなかった安心ももちろんあるが、ばばあや妖怪呼ばわりされたことにすごく腹が立ったのだった。
時計を見れば、朝の10時ちょうどだった。
敦子は、飛び起きて、玄関まで走っていった。
「 寝ちゃったよ~。 」
敦子は、一応インターホンで、来訪者を確認した後、ドアを開けた。
やはり玉山さんが、立っていた。
ラフな白い襟付きシャツと、チノパンを穿いていて、いかにも休日スタイルらしい。
なんでも様になる玉山さんだった。
敦子は、玉山さんに飛んでいるところを、見られてしまった後、少し仮眠でもしようかと思ったのだが、やはりというべきか眠れなかった。
気分も落ち着かなかったので、早い時間に朝食をとり、洗濯も掃除もした。
一応コーヒー、紅茶どちらでも出せるように準備しておく。
それでも待ってる時間は、果てしなくながく感じて、つい横になっていたら、寝てしまったようだ。
着替えようと思っていたのに、時間が無くなってしまった。
ちなみに今着ているのは、よれよれのTシャツに、ひざ下までの綿ズボンだ。
完全に部屋着である。
玉山さんは、あんなものを目撃したのに、すっきりとした様子で、入ってきた。
狭いながらも、二部屋あるので、キッチン兼居間として使っている部屋に案内する。
ローテーブルの前に、座ってもらう。
玉山さんがいると、部屋が狭く感じた。
「 昨日は、ごめんね。びっくりしちゃって、夜遅かったのに、お邪魔しちゃって。 」
「........いえ、びっくりされて当然ですから。お茶入れてきますね。 」
いったん玉山さんの前に座ったが、お茶を入れに席を立とうとした。
「 いや、まずいろいろ説明してほしいな。 」
催促されたので、仕方なく座りなおす。
目の前の玉山さんも正座なので、敦子も正座した。
なんとなく目を合わせずらくて、下を見ていると、強烈な視線を感じた。
顔を上げると、真剣なまなざしで、こちらを見ている玉山さんと目があった。
「 昨日仕事で帰りが遅くなって、お風呂に入った後、なんとなく星が見たくなって、ベランダに出ていたんだ。そうしたら見ちゃったんだけど。 」
なるほど、それであんな時間にベランダに出ていたのかと敦子は、納得した。
敦子は、意を決してネイルを塗った時からの事を、話し始めた。
玉山さんは、敦子の言葉をさえぎることもなく、ただ黙って、聞いてくれていた。
敦子が、すべて話し終わると、玉山さんは、ぽつんと言った。
「 不思議なことってあるもんなんだね。たぶん自分の目で、見てなければ、信じられなかったと思うけど。」
「 そうですよね~。私だって、いまだに信じられないんですから。」
「 そうだ! 今、水を昨日のようにできる? この目で見てみたいんだ。 」
「 できると思いますよ。 」
敦子が、そういうと、あらかじめ桶の中にはってあった水が、次々に球となって浮き上がり、玉山さんのほうへふわふわと近づいてきた。
玉山は、球を凝視していたが、思わずといったように手を差し出した。
ひとつの球が、玉山の手に乗った。
残りの球が、玉山の周りをゆっくりと回っていく。
玉山は、立ち上がって、その様子を見ていた。
しばらくして、その球が、集まりだして、一つの球となって敦子の前に行った。球は、ボードのように、平らになる。
敦子は、その上にのり、少しだけ浮き上がった。
「 すごいね~。」
玉山さんは、ひとしきり感心して、また座った。
敦子も水のボードから降りて、座った。
するとボードは、また球になり、桶の中に戻っていった。
玉山は、これにもひとしきり感心していた。
「 せっかくだから、お茶でもいただこうかな。」
「そうですね。コーヒーと紅茶とお茶、どれがよろしいですか。 」
「 じゃあ、コーヒーをいただこうかな。」
敦子は、キッチンに行き、急いでドリップコーヒーを二つ入れて、持っていきテーブルに置く。
一緒に砂糖とミルクも置いた。
「 ありがとう。ブラックなんだ。 」
玉山はそう言い、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。
玉山は、コーヒーを飲むさまも、絵になるようだった。
そこだけ切り取ると、まるでホテルのラウンジにいるみたいに、思える。
なんだかそこだけが、異空間のような気がした。
敦子も一口飲む。
先ほどの説明で、緊張したせいで、のどが渇いていたので、おいしく感じる。
玉山は、カップを置いて、今度は、少し顔を険しくしていった。
「 滝村さん、あれで何回ぐらい飛んだの? ねえ知ってる? 飛んでる姿、ニュースになったりSNSにアップされているよ。 」
敦子は、飲みかけのコーヒーを、つい吹いてしまった。
目の前の玉山さんに。
清潔そうな白いシャツは、見事に茶色のまだら模様ができてしまった。
顔にもかかったかもしれない。
敦子は、あわてて、そばにあったボックスティッシュをそのまま、玉山さんに渡した。
「 ごめんなさい。すみません。 」
敦子が、平謝りする。
「 気にしないで。 」
玉山さんは、申し訳程度に拭いたぐらいで、それよりと言って、ポケットからスマホを取り出す。
そして、あるニュース映像を敦子に見せた。
『 今日のニュースです。昨日遅く、視聴者の方が、撮ったと思われる未確認物体が、SNS上を騒がせています。こちらがその映像です。 』
アナウンサーが、ニュースを読んだ後、視聴者がとったものだと思われる映像が流れた。
『 なに~あれ? ねえ見て。』
流れた映像には、視聴者の声に交じって、暗いビルの上を、何やら光るものが映っている。
映像がアップされると、光るものの上に何かのっているのが、かすかに見える。
『 撮影された未確認飛行物体は、いくつかSNS上にあげられており、複数の目撃者がいると思われます。なおこの映像を、専門家に分析していただいたところ、確かなことは言えないが、未知の生物の可能性もあり得るとのことです。 』
そうアナウンサーの言葉で、締めく繰られていた。
「 これって滝村さんだよね。sns上で、すごく騒がれているんだ。みんないろいろなことを、おもしろおかしく言っていてね。 」
そういって、またスマホを見せてくれる。
「 なにこれ? 妖怪皿ばばあ? 血が滴る皿にのった妖怪? 血の池地獄ばばあ妖怪? 」
敦子は、思いっきり大声を出してしまい、玉山さんにびっくりされてしまった。
SNSの記事には、妖怪だの、皿ばばあだの、血の皿だの、いろいろ書かれていた。
記事によると、映像の中に人影らしいものと、長い髪の毛らしいものが、写っていたものもあったらしい。
その映像を、写真のように切り取られているものが、いくつかあった。
よく見ると、確かに人影や髪が見えたり、敦子が金斗雲もどきと呼んだものが、光っているように見えている。
しかも赤く光っているように、見えているものまである。
「 さっきの滝村さんの話では、高層ビルに行ったそうだから、ビルの明かりが水に反射したり、屋上についている赤いライトが、水に反射して見えたんだろうね。
それにしてもずいぶん騒がれているよ。僕も今日、もしかしたらと思って、ネットを見たんだけど、案の定見られていたんだね。顔までは、見えなくてほんとよかったね。 」
玉村さんは、敦子が特定されなかったことに、ほっとしてくれていたようだった。
しかし微妙なお年頃の敦子は、人物特定をされなかった安心ももちろんあるが、ばばあや妖怪呼ばわりされたことにすごく腹が立ったのだった。
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