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2.冒険者になったよ。
魚15:王様激おこぷんぷん丸。
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わたしは、とある国の呪術者長だ。
特徴は耳の丸い人間よりも長寿で幽霊が見えること。
「なんたる、なんたる屈辱…!!!」
ボッツボット帝国、王城、王の寝室。
ベッドの上でぶるぶると震える男は、枕をザクザクと刺し続けている。
何人もの犠牲を出した召喚魔法の儀式を、もう一度行えと厳命され、おびえる術者たちにひっそりと「聖女様の御慈悲だ、儀式は絶対失敗するのが分かっている」そう伝え、実行させた。
そして案の定失敗した。誰の命も奪われていない。
だが、それっぽっちのことで"彼ら"がうかばれることはない。
いまも枕をずたずたに引き裂く男の周りで黒い涙を流しながら浮かんでいるのが見える。
今日犠牲になった彼らだけじゃない、この男が生まれて自我を持った日から犠牲になってきた者たちがたくさんたくさんいる。
「ええい、まだ見つからんのか、あのクズ聖女は!」
「申し訳ございません…」
本当にわかっていないのかこいつ。今すぐ捕まえに行ったら絶対抵抗されるに決まっているでしょうが。
それで自害なんてされてしまったら元も子もないぞ。
勇者を探すほうがよっぽど建設的だ。
おそらく、勇者と聖女は絶対に出会うだろうから、泳がせておいたほうが捕まえやすいはず。
「あんなクズでもいないよりは役に立つ!聖女なんだからな!さっさと探せ!」
「はっ」
両方捕らえたかったが仕方ないな、聖女を捕まえにいかせるか…
のろのろと足取り重く、研究室へ戻る。
「聖女もさすがに休んでいるだろうかね。」
「はい、30分ほど前に行動が止まりました。」
「明日何人か向かわせてくれ、陛下が高血圧でぶっ倒れかねない。勇者を釣り上げる餌になると思ったんだがなぁ。【釣りの聖女】なわけだし。」
「はい。」
「ところでどこだって?」
「深々の森、最浅部ですね。さすがに夜、行動するのが危ないことくらいはわかるようですね。」
「一番理性的な人間だったからな、壊さなければあれはあれで使い物になるだろう。しかし、深々の森か…ああそうか、瑞々しい森に入っては、釣りをしに行ったことがすぐにばれるからあえてそちらを選んだか。」
「深々の森にも水辺はありましたよね?」
「いや、あそこには水蛇が多い。釣りには向くまい。聖女の能力が本物ならば普通は向かう意味がない、聖女たちは必ず自分の能力を使わずにはいられないんだ。そういう性質になっている。」
「なるほど、つまり聖女様は、この国から急いで離れる選択をしている、と?」
「そうなるな。捨ててこいだなんて失礼にもほどがある、見限られて当然だ。」
だが。
三日たっても聖女は見つからず、それどころか追跡魔法がぷつりと途絶え。
瑞々しい森のほうも捜索させたが発見に至らない。
見つかったのは、食いちぎられた女性の、手首だった。
特徴は耳の丸い人間よりも長寿で幽霊が見えること。
「なんたる、なんたる屈辱…!!!」
ボッツボット帝国、王城、王の寝室。
ベッドの上でぶるぶると震える男は、枕をザクザクと刺し続けている。
何人もの犠牲を出した召喚魔法の儀式を、もう一度行えと厳命され、おびえる術者たちにひっそりと「聖女様の御慈悲だ、儀式は絶対失敗するのが分かっている」そう伝え、実行させた。
そして案の定失敗した。誰の命も奪われていない。
だが、それっぽっちのことで"彼ら"がうかばれることはない。
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「ええい、まだ見つからんのか、あのクズ聖女は!」
「申し訳ございません…」
本当にわかっていないのかこいつ。今すぐ捕まえに行ったら絶対抵抗されるに決まっているでしょうが。
それで自害なんてされてしまったら元も子もないぞ。
勇者を探すほうがよっぽど建設的だ。
おそらく、勇者と聖女は絶対に出会うだろうから、泳がせておいたほうが捕まえやすいはず。
「あんなクズでもいないよりは役に立つ!聖女なんだからな!さっさと探せ!」
「はっ」
両方捕らえたかったが仕方ないな、聖女を捕まえにいかせるか…
のろのろと足取り重く、研究室へ戻る。
「聖女もさすがに休んでいるだろうかね。」
「はい、30分ほど前に行動が止まりました。」
「明日何人か向かわせてくれ、陛下が高血圧でぶっ倒れかねない。勇者を釣り上げる餌になると思ったんだがなぁ。【釣りの聖女】なわけだし。」
「はい。」
「ところでどこだって?」
「深々の森、最浅部ですね。さすがに夜、行動するのが危ないことくらいはわかるようですね。」
「一番理性的な人間だったからな、壊さなければあれはあれで使い物になるだろう。しかし、深々の森か…ああそうか、瑞々しい森に入っては、釣りをしに行ったことがすぐにばれるからあえてそちらを選んだか。」
「深々の森にも水辺はありましたよね?」
「いや、あそこには水蛇が多い。釣りには向くまい。聖女の能力が本物ならば普通は向かう意味がない、聖女たちは必ず自分の能力を使わずにはいられないんだ。そういう性質になっている。」
「なるほど、つまり聖女様は、この国から急いで離れる選択をしている、と?」
「そうなるな。捨ててこいだなんて失礼にもほどがある、見限られて当然だ。」
だが。
三日たっても聖女は見つからず、それどころか追跡魔法がぷつりと途絶え。
瑞々しい森のほうも捜索させたが発見に至らない。
見つかったのは、食いちぎられた女性の、手首だった。
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