お隣さんはヤのつくご職業

古亜

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貴公子の微笑み3

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「今日はありがとう。いきなりだったのに付き合ってくれて」

カフェを出た帰り道、私は佐々木さんと駅近くの繁華街を歩いていた。
人通りはまばらで、買い物帰りの人や塾帰りっぽい高校生が歩いている。

「いえ、こちらこそ美味しかったです」

……そうは言ったものの、緊張やらで場違い感やらで細かい味はあんまり覚えてない。プリンの味がした!クリーム過多!ってことはさすがに覚えてるけど。
会話の続きをどうしようか考えていたら、反対方向から歩いてきた人影が目に入る。
あれ……?あそこにいるのって吉崎さん?横にいるの知らない人だけど、見た目からしていかにもって感じだ。
もちろん吉崎さんも、こうして見ると威圧感のありすぎる風貌してる。
気難しそうな表情に服の下に感じる筋肉の存在。普通に町で会ったら逃げてるかも。
そんな人が、料理をするときは花柄エプロンで片手にフライ返し、もう片方の手でフライパン持ってたりするんだよね……改めてギャップがすごい。そして料理は美味しい。
誕生日とか知らないけど、お洒落な可愛い感じのエプロンを今度お礼にプレゼントしようかな。今日見た店員さんみたいな、カフェの給仕風の……ふふっ、多分吉崎さんなら着こなせる。たぶん。
そんなことを考えていたら、吉崎さんの横を歩いてたチンピラさんと目が合ってしまった。

「おい、何笑ってんだ」

……ふえ?

「さっきから頭の顔見てニヤニヤしやがって」

凄まれつつそう言われ、表情筋を確認してみる。
し、しまった表情に出てたっ!
というかいつのまにこんな近くに。カフェの店員さん風エプロンの吉崎さん想像してたからか気付かなかった。

「た、ただの通りすがりです!そこの方のことなんてこれっぽっちも知らないデスよ!」

声が裏返った。でもさすがにこんなところで知り合いとバレるのはまずい。

「き、気のせいですよ」
「は?さっきからこっちガン見してたろ」

う、それについては確かにそうですけど……佐々木さんもいるのに、珍しい人を見つけてしまったからつい目で追ってしまった。
じっと見られて居心地が悪い。実際目で追ってたし……あー、目が泳ぎすぎてバタフライしてるのが自分でもわかる……

「亀田、カタギの嬢ちゃんに迷惑かけんな」
「でも頭、こいつ明かに頭の顔見て笑ってたんですよ」
「人の顔を見て笑うなんて、おかしな顔だなんて思ってませんよ」
「ああ?」

し、失言っ!
いや、顔がおかしかったなんてそんなわけないじゃないですか!おかしいというよりは怖いなのに……だめだこの亀田さんとかいうチンピラさんと喋ってると墓穴しか掘れない……ん?亀田ってどこかで……

「今ガン付けてるのはテメェだろ」
「でも頭……」
「また吹っ飛ばされてぇか?」

……また?
吹っ飛ばす。吹っ飛ぶ。自宅の壁とチャラチャラしたファンキーな人。

「あっ」

そこで記憶が繋がって思わず声を出してしまう。
吉崎さんの方を見ていた亀田さんがすごい勢いでこっちを見た。

「何思い出したんだ?やっぱりどっかの組の女か?」

し、しまった……
亀田さんの後ろにいる吉崎さんは完全に呆れた顔をしている。わざわざ助けてようとしてくださったのにすみません……目が、お前は口を開くなと言っている。
そうですね、さっきから口を開けば墓穴しか掘ってません。

「ちょっと急用が……明日のお弁当の材料買わないと」
「明日は日曜なのに弁当か?」
「会社がブラックなので日曜も仕事です!」

これは事実。けど自宅でやるからお弁当関係なかった。
亀田さんの目がいよいよ不審者を見る目に……懐に手が伸びてるっ!私が吉崎さんに危害を加えるなんてそんな馬鹿な!美味しいごはん!

「お前はなんなんだ?」

しまった、佐々木さんに迷惑が!佐々木さんは一切合切関係ないです!というかこの場は私が引き受けるので佐々木さんは逃げてくださいっ!

「こいつの男か?彼氏なら色々と知って……ぐふっ」

鈍い音と蛙が呻いたような声。
吉崎さんが亀田さんの腹部に見事な拳を叩き込んでいた。

「か、頭……?」
「だからカタギをビビらせんな。だいたいこんな単純すぎるわかりやすいいかにも能天気でアホっぽい女に俺をどうこうできるわけねぇだろ」
「演技って可能性も」
「こんなアホの演技する意味があるか?名女優でもここまで真性のアホの演技は難しいぞ」

あの、吉崎さん?庇ってくださってるんですよね?
ディスってるの間違いじゃないですよね?
アホって、3回も言う必要ありました

「……確かに」

納得された!安心だけど、なんだか腹が立つ!

「アホな嬢ちゃんはほっといて行くぞ。」

4回目!ちょっと悲しくなってきた。
けどその言葉通り、すっかり私をアホの子と思ったらしい亀田さんは吉崎さんの後ろに大人しく付いていって、角を曲がって姿を消した。

「佐伯さん、大丈夫?」

アホと言われすぎて軽くショックを受けていたら、心配そうに佐々木さんが私の顔を覗き込む。

「も、問題ありません!それよりも私のせいですみません……」

吉崎さんのおかげで助かっだけど、あのままだったら佐々木さんが目を付けられていた。屋外の吉崎さんが珍しかったとはいえ、あれはまずかった。
でも、見てみたいもんカフェ風の吉崎さん。

「まあつい見ちゃう気持ちはわかるけどね。不安だろうし送っていこうか?」
「い、いえ。大丈夫です」

巻き込みかけてさらに送ってもらうなんて、申し訳なさで針先くらいまで縮こまりたくなってしまう。

「じゃあ僕は少し買い物して帰るから、また会社で」
「はい。今日はありがとうございました」

はぁ……まさか最後にこんなことになるなんて。
やってしまった。これはたぶんというか確実に後で何か言われる。5度目のアホの称号を獲得するかもしれない。
とりあえずエプロンを買って帰ろうかな。怒られるにしてもそれを着た吉崎さんに怒られるなら面白い気がする。反省?あまりできていないですね。
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